仕事のトラブルに見舞われたときに、自責感が強いと、「私ってだめだな」「最後までやり遂げなきゃ」と自分を責めたり、追い込んだりしてしまいがちです。もちろん、仕事をする上で自責感は大切ですし、つらい体験は、乗り越えればいい経験になる場合もあるでしょう。
けれども、「死にたい」と思うほどつらいなら、会社を辞めてもいいし、逃げたっていいんです。自分を犠牲にしてまで、会社や上司、顧客のために頑張る必要はありません。
ちなみに、私が精神的につらかったとき、「独立する」という名目で会社を辞めました。すぐには食えなかったので、契約形態を会社員から個人事業主に変えて、しばらく同じ仕事を続けましたが、それでも、会社を辞めたことによって「よし、この状況から早く抜け出すぞ!」という気持ちが芽生えて、かなり楽になりました。
また、私が会社を辞められたのは、「そんなにつらいなら、会社、辞めてもいいよ」と言ってくれた奥さんの影響も大きかったです。追い込まれていると「辞める」ということまで頭が回らないことがあります。実際に辞めるかはさておき、「辞める」という選択肢があることが分かるだけでも楽になれます。
周りの一言が背中を押すきっかけになってくれることがあります。覚えておきましょう。
「死にたい」と思うほどつらいなら、とにかく周りの誰かに話してみてください。自責的な人の中には、「そんなの、周りの人に申し訳なくてできません」という人もいますが、私の経験では、「大切なことの相談相手に選んでくれてありがとう」と言われたことの方が多いです。
もし、周りの人に話がしづらかったら、人事や労務の担当者、直属ではない上司などに話を聞いてもらうのもよいでしょう。それでも話しづらかったら、厚生労働省や地方自治体が開設している「専門相談機関・相談窓口」なども利用できます。
私が精神的につらかったときは、仕事に直接関わりのない上司に話を聞いてもらいました。愚痴もずいぶん言いましたが、自分の状況を分かってくれる人がいるだけで、少し楽になれました。
自責感の強い人は、「人には言えません」と、弱みを見せたがらないことがままあります。けれども、いっぱいいっぱいでつらいなら、周りの人に頼んで協力をあおいでみませんか。
実は、私も人に頼んで協力を仰ぐのが苦手です。「迷惑なんじゃないか」「嫌われるんじゃないか」と思ってしまうのですよね。これは、私自身の課題でもあります。
「限度を超えているな」と思ったら、断る勇気を持つことも必要でしょう。
自責感が強いと、「みんな引き受けなきゃ」と思うし、特に若いうちは、「上司に頼まれたことは断っちゃいけない」と思うかもしれません。また、相手が威圧的なタイプなら、断りにくい場合もあります。
けれども、本当に大変なときは、断らないと自身を犠牲にしてしまいます。もし、直接言いづらければ、周りの人に助けを求めてみましょう。
私の経験を踏まえてまとめてみましたが、何となく、当たり前のことばかりになってしまったような気もします。「それができないから困っているんじゃないか」と思われるかもしれません。
でも、苦しかった当時の自分にアドバイスするなら、やっぱりこういった話をすると思いますし、まずは、話を聞いてあげたいと思うのです。また、「1人でそんなに背負うことないよ。身体を壊すほど悩んでいるのなら、もう、会社辞めなよ」と言ってあげたいとも思います。
困難を乗り越える力は、とても大切ですし、責任感が強いのは悪いことではありません。この連載も、どちらかといえば「乗り越える力」をテーマにすることが多かったです。
けれども、「死にたい」と思うほど苦しいときは、相手のことよりも、まずはあなた自身のことを大切にしてください。苦しい感情をシャットダウンせずに、逃げる、断る勇気を出してください。理不尽な会社や人のせいで、あなたが犠牲になる必要はありません。
最後に……人が死にたいと思うのは、「死んだ方が楽だ」という考えがどこかしらにあるからなのかもしれません。私はあの世に行ったことがないので分かりませんが、本当に楽になれるのかなぁ。
でも、あなたが死んだら、あなたの大切な人が、それを背負って生きなきゃいけなくなるのだけは事実です。それは、本当に苦しいことです。ですから……
生きてください。
大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
「死にたい」と思うほど悩んでいたら、取りあえず話せそうな人を1人、選びましょう。話す人がいなければ、専門の窓口でもいいです
「逃げる」「断る」など、悩みの原因となる環境から離れられないか検討してみましょう
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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