移住先の候補が決まったら、現地に足を運ぶことをオススメします。
人によって許容できるものや範囲は異なります。それらを確認するために、さまざまなポイントを移住前にチェックする工程は重要です。「実際に移動にかかる距離や時間」や「暮らしの雰囲気」を体感したり、移住者の先輩に暮らしぶりを聞いてみたり、移住した暁にやってみたいことをぶつけて実現可能性を確認してみたり――。
2〜3日は滞在して、「朝夕の冷え込み」や「地元の人が集まる店の賑わい」まで肌で触れて体感すると、より具体的に移住後のイメージが湧くでしょう。現地でのイベントに足を運べば、いろいろな出会いがあるかもしれません。
しかし、唐突にその土地を訪れても、良い滞在になるとは限りません。現地訪問前に、大都市で開催される移住者募集のイベントに出向いて、地域の関係者や行政などの窓口の人とつながりを作っておくのは、滞在期間を有意義に過ごすための有効な手段です。
事前に知り合っておくと、地元住民イチ押しの観光地を紹介してもらったり、土地のキーマンに会わせてもらったり、そこでの暮らしの実際のところの「踏み込んだ話」を聞けたり、一度の滞在をより密度濃く過ごせるはずです。
関係者とのつながりがあると、移住後に土地に馴染むのもスムーズになります。
縁もゆかりもない地域へ移住するのであれば、なおさらです。「日本海側の冬は晴れる日が少ないため、太平洋側での生活に慣れている移住者の中には気分がユウウツになりがちな人もいる」などの多少ネガティブな話も、先輩移住者から聞き出せます。
移住後の希望をあらかじめ伝えておくことも大事です。
「すぐには無理かもしれないが、おいおいは半農半ITの暮らしをしたい」「エンジニアとしてこういう仕事を田舎でしてみたい」などの希望を伝えると、現地の人が何らかの反応をしてくれるはずです。その反応は、移住を決める判断材料の1つになると思います。ちなみに私の場合は、「BABAME BASEに念願のIT企業が来る!」と喜ばれ、実際、移住後はスムーズに仕事をすることができ、IT活用に関する相談を受けることもあります。
移住者を多数受け入れている地域であっても、事前に互いのニーズを擦り合わせて相性を確かめることはとても大切です。
現地に赴き、現地の人とやりとりする重要性を強調するのは、何だかんだで移住を決めるときには「縁」や「巡り合わせ」が少なくない割合で関わってくるからです。
実際、五城目の移住者の多くが、五城目を選んだ理由として「たまたま○○さんと出会って」「たまたま○○さんに声を掛けられて」と語っています(複数人が○○さんの名を挙げるのもまた興味深いところです)。
ここまで書いてみて、あることに思い至りました。移住って転職のプロセスに似ているな、と。
田舎への移住の場合、大手転職サイトやエージェントを活用するというよりは、知人の紹介を頼って転職するイメージでしょうか。どの地域にも必ず定型的なフローがあるわけではないので、より「人」や「縁」の要素が強い、手触り感のあるプロセスになるようです。
連載第2回「人口減少は単なる事実、課題は別にある」でお伝えしたクリエイティブな働き方も、実現するためには人のつながりが大切です。
そうしたつながりは、地域内にとどまらず、近隣地域や全く距離の離れた別の地域にまで広がります。また、田舎が持つテーマ性、課題の先進性を際立たせることで首都圏や海外とつながった事例もあります。
一方、度々言及したように、田舎にはそれぞれ何らかの指向性があります。それらを見極め、人との出会いの中で擦り合わせをしていくことで、希望に合った移住先が見つけられるのだと思います。
読者の皆さんが希望とマッチする移住先を見つけられることを願い、秋田編を終了します。ありがとうございました。
全国各地のU&Iターンエンジニアたちが、地方での生活の実情や所感などをセキララに伝えます。Uターン、Iターン、Jターンに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
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ウェブインパクト五城目コアリーダー 秋元悠史
秋田県大仙市出身。新卒でIT企業に入社するも、1年半後には縁もゆかりもない島根県海士町に移住。離島で約5年半教育の仕事に携わる。
2016年4月にこれまた地縁も血縁もない秋田県五城目町に移住。「地元を捨てたのか」といじられながら、ウェブインパクトにジョインしながら、個人としても教育事業に携わり、2足の草鞋を履く日々。
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