前回の「ポジティブシンキングはもう古い。感情を抑えつけずにコントロールする5ステップ」で指摘したように、これまでの感情コントロールは、「グッとこらえる」「気合いで乗り切る」のような「精神論」や、「イライラしないようにする」「怒らないようにする」「不安にならないようにする」ような、感情を「出さない」ようにするものが一般的でした。
「出さない」が習慣化すると、どうなるのでしょう?
「ITエンジニアにも重要な心の健康 第6回 失感情症の傾向はありますか?」によると、「本当はストレスでいっぱいなのに、それを十分に感じられない」、あるいは「感じているのにうまく言葉にできなくなる」ような症状を「失感情症」というそうです。
失感情症の傾向がある場合は、次のようにすると良いそうです。
まずは「自分の中に、これまで不快な感情がなかったか」「そして、それらの感情を知らず知らずのうちに、心の奥の方にしまい込んだりしていなかったか」「周囲の期待に応えるために無理や我慢をしていなかったか」について、丁寧に自分の内側に意識を向けてみましょう。
言い換えると、感情を心の奥にしまい込んだり、周囲の期待に応えるために無理や我慢をしたりしていると、失感情症になりやすいということですよね。
「出さない」が習慣化すると、自身の感情に「鈍感」になって、感情に気付きにくくなったり、過度なストレスを抱えてしまったり、急に自分でもコントロールできないぐらいにキレてしまったりする危険があります。
感情コントロールは「出さない」ようにするよりも、むしろ、早く「気付いて」「対処する」ことが大切です。
あなたは「昨日、感情的になったシーンがどれだけあったか」思い出せますか?
「上司にこっぴどく叱られた」「部下の非常識なふるまいに超キレた」「大きなミスをして、激しく落ち込んだ」など、感情の振れ幅が大きな経験なら、容易に思い出せるでしょう。しかし、「電車内で他の乗客と肩が当たってイラっとした」「SNSのリア充投稿に『めんどくせーなー』と思った」など、ささいな出来事はあまり覚えていないのではないでしょうか。
叱られてイラっとしたり、ミスをして落ち込んだりするように、感情は常に発生しています。感情をコントロールし、心穏やかに働くためには、「今、感情的になり始めているな」と、自身の感情に気付くことが大切です。そのためには、「自身の感情に敏感になり、客観的に観察できる力」があると便利でしょう。
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