教えて! キラキラお兄さん「どうしたらシリコンバレーでエンジニアとして働けますか?」プロエンジニアインタビュー(5)(4/5 ページ)

» 2017年06月19日 05時00分 公開
[齋藤公二@IT]

海外経験なしの英語オンチ 海外出張で火がついた

 シリコンバレーにすっかり溶け込んで仕事と生活を送っているエル氏だが、実は大学の卒業旅行まで海外の経験すらなく、片言の英語を話すのも怪しい英語オンチだったという。

 コンピュータに目覚めたのは小学生のときで、初めて触れたコンピュータはシャープ「MZ-80B」。BASICから始め、その面白さに引き込まれマシン語のプログラミングまでできるようになった。パソコン(当時はマイコンと呼んでいた)第一世代に当たるが、当時でも、マシン語まで理解できる猛者は少なかった。

 マシン語の腕を買われて就職した大手機器メーカーでは、組み込みシステムの開発を担当した。海外に目覚めたのは、ドイツで開催されたある展示会に、説明員として海外出張で参加したときだ。

 「展示会にブースを出展し、そこに集まったさまざな人や技術を見ているうちに火がついたんですね。『こんな雰囲気の中でいつも働けたら面白いに違いない』と思いました」

 そしてその後、通信機器を開発していた米国系企業の研究開発部門の日本支社に転職した。

 「楽しみは海外出張でした。米国の本社に行くときは、子どものようにワクワクしていました。そうして働いているうちに、たまたまですが、本社でエンジニアを増やす機会があって米国本社に転籍したのです」

 しかしそれから米国本社は紆余(うよ)曲折あり、エル氏の部門も整理対象となる。それから、米国で転職を重ね、15年にわたって米国在住のエンジニアとしてキャリアを積んできたというわけだ。

どうすれば米国で働ける?

 エル氏は、日本のエンジニアに「どうしたら米国で働けますか?」と聞かれることが多いそうだ。

 「いちばんの近道で王道は、米国の学生ビザを取得して大学や大学院で学びながら、就労可能なビザを取得して、米国でインターンとして働くことです。米国の電話番号と住所を持ち、『じゃあ面接に来てください』と言われたらすぐ訪問できる。このメリットは非常に大きい。逆に、どんなにコーディングのスキルがあり、英語でコミュニケーションをとる力があっても、日本に住んでいてはまず相手にされません。企業として素性のよく分からない国外の人を雇うより、米国に住んでいて、すぐにコンタクトが取れる人材の方が雇いやすいのは当然のことです。まずは学生としてでも米国に住まいを構えることが重要です」

 その他にも、エル氏のように転籍を狙う方法、米国で起業する方法、結婚、さらには抽選でグリーンカードを取得する方法などがあるが、どれもほとんど運任せだ。その点、米国の大学に入学してインターンシップを活用するのは、最も確実に米国で働く方法だ、と言う。

 「米国では、ごく一部の名門大学を除けば、出身大学の名前は就職や転職にほとんど影響しません。まして日本の大学の名前など誰も知りません。大学名よりも大事なのは、どの学部で何を専攻したか、そしてそれがちゃんと身に付いているかどうかです。無名の大学であっても、コンピュータや情報科学などをしっかりと修めていれば、採用の応募条件はクリアできます。今シリコンバレーで働いている外国人のほとんどは、留学生として米国の大学を卒業した人たちです」

 移民や学生などさまざまな人種が集まる米国だが、シリコンバレーに限ってみると、人種や国籍の構成は大きく異なっている。日本人が米国に抱くイメージは、白人が最も多く、次いで黒人、そしてヒスパニックといったものだろう。だが、シリコンバレーは全く違う。

 「ソフトウェアエンジニアの数で見れば、インド系が半分くらい、そして中国系、韓国系、米国系ですね。ヨーロッパ系や日本人は本当に少数派です。外国からの移民は大概、米国の大学を卒業して、米国で就職しています。ちなみに男女比は『7:3』くらいです」

 ソフトウェアエンジニアの他にも、企業規模が大きくなるに従って、法務(リーガル)、財務経理(ファイナンス)、人事(HR)といった間接部門が必要となり、そこで働く人材も増えてくる。ここで求められるのも、それぞれの専門分野を大学で学んだ、もしくは実務経験のある人材だ。

 「個人的には、日本人がこうした間接部門の専門職としてシリコンバレーでキャリアを積むのは、よほど英語ができない限り難しいと思います。一方、エンジニアは、きちんとコードが書ければ仕事をゲットできます。米国で日本人が就職できる1番簡単な職種がエンジニアなんです」

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