「ばかもの!!! ベンダーに契約を期待させて、作業だけやらせて契約をしないのは、『ユーザー企業の信義則違反』だ。損害賠償を命じた判決もあるんだぞ!」
「信義則違反?」
生駒は血の気が引くのを感じた。
(損害賠償? 契約もないのになぜ?)
「法律がどうこう言う前に、こういう不誠実な仕事の仕方は、社長の最も嫌うところだ。これを許してしまったら、今後『こんなことをする会社とは取引できない』と考えるお客さまも出てくるだろう」
生駒はアルプスソフトウェアの丹波の言葉を思い出した。
「御社とのおつきあいは、今後控えさせてください」
「君のやったことは、わが社を詐欺企業におとしめる重大なコンプライアンス違反だ!!!」
「そんな……」
「社長はマッキンリーと新たに契約を交わして、作業分の費用におわびの金額を追加して支払うそうだ。おわびの分は、君がわが社にもたらした『損害』だ。君には、もう二度と予算の心配をすることのないポジションに移ってもらう!」
そこまで聞いて生駒は初めて、自分のやったことに気付いた。
「降格……ですか」
「クビにならないだけマシだと思いたまえ!」
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