コンサルタント時代は給与が良かった。しかし、池田さんの中には徐々に疑問がふくらんでいった。
「現場で実際に動くのは、プログラマーが書いたコードそのものです。ExcelやWordでは1ミリも動きません」
プロジェクトによっては、スケジュールが遅延してトラブルになる事態も目にした。「ちゃんとソフトウェアを作る側に行って、問題を直接解決した方が早い」と思った。
3年間コンサルタントとして働いた後、プログラマーに転身した。転職先はERP製品を作っているパッケージソフトウェア企業だ。「プログラマーが主人公になる、自分たちで製品を作って売っている会社というと、当時は選択肢が少なかったんです」と池田さんは説明する。
こうして池田さんは、職業プログラマーとして再出発する。ちなみに給与水準は「そんなに悪くなく、下がったりはしなかった」とのことだ。
当時、「せっかくコンサルタントになったのに、プログラマーになるの? バカなんじゃないの?」などと言われたこともあったという。しかし「ソフトウェア開発では、動くか動かないか、コードで全てが決まる。それ以外の部分に時間をかけてもしょうがない。若いうちにキャリアを変えた方がいい」──当時の思いを池田さんはそのように振り返る。
「顧客の問題を解決することと、自分たちの製品を作る側になることとはマインドが違います。全く異なる業態なのでギャップを感じることがありましたが、それもまた楽しかったです」と池田さんは当時を振り返る。
そんな池田さんに、また転機が訪れる。
池田さんは、2005年から2010年までそのパッケージソフトウェア企業で勤務した。開発ターゲットは、主にWindowsベースのデスクトップアプリケーションだ。そして2007年、Salesforceが本格的に日本上陸した。
「クラウドで業務システムが作れることを彼らが示し始めました。一方、当時私が開発していた製品は完全にオンプレミス。これはまずいと思いました」
同じころ、GoogleがPaaS(Platform as a Service)の先駆けとなるApp Engineを出した。自動的にスケールアウトし、サーバリソースをいくらでも借りて能力を拡大できる。
「そんなことができることを見せつけられたのは衝撃でした」
書籍『Googleを支える技術』(西田圭介著、技術評論社)も、このころの出版だ。クラウドの時代が到来したことを思い知らされた。
当時所属していたパッケージソフトウェア企業でも「インターネット対応をそろそろ本格化させないとまずい」という話をしていた。しかし池田さんはそれを待たずに、転職する。「Webやクラウドの時代が来る」という衝撃を感じてから2年ほど後のことだ。
世の中のゲームチェンジに気付き、自分の居場所を移動しないと何ができているかを感じ取れない、仕事を変えないと自分を変えられない、と感じたからだという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.