アナリティクスのプロセスに機械学習/AIを活用する「拡張アナリティクス」は、ユーザーのデータ活用、意思決定、洞察に基づく行動の在り方を変え得る力を秘めている。ただし、利用の仕方には考慮が必要だ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
データのパターンを手動で発見するのは、干し草の山から針を見つけるようなものだ。大抵はデータがあまりに多いか、あまりに複雑なため、人間の手には負えない。「拡張アナリティクス(Augmented Analytics)※」は、機械学習や人工知能(AI)技術を利用して、行動につながる洞察を自動的に発見する。
※編集部注:拡張アナリティクスに関するガートナーの定義は次の通り。「拡張アナリティクスとは、データ準備、洞察の獲得、洞察に関する説明を助けるために機械学習やAIなどの技術を用い、アナリティクス/BI基盤における人々のデータに関する探索や分析を補完・拡張すること。また、データサイエンス、機械学習、AIのモデル開発、管理、適用に関する多くの側面を自動化し、専門家や市民データサイエンティストの仕事を補完する」
またこの技術は、データとアナリティクスのリーダーが損益に大きく影響する事項について、時間のかかる手動の分析を行うことに伴う問題に対処するのに役立つ。手動分析の結果として、偏った仮説を立てたり、重要な見落としをしたり、不正確な、または不完全な結論を出したりする恐れがある。
Gartner Data and Analytics Summit 2019で行われた調査では、回答者の60%以上が「拡張アナリティクスは、社内でアナリティクスの価値を高める力に、大きな、または変革的な影響を与える」と考えていると答えた。
例えば、あるファストフードレストランチェーンは、ボトルドリンクと比べて利益率の高いソフトドリンクバーの場所をよく考えていなかった。ある店舗のリモデル時にソフトドリンクバーの場所を変更し、拡張アナリティクスシステムを導入したところ、ソフトドリンクバーの売上高と店舗の利益が20%伸び、その後の店舗設計計画が変わるきっかけとなった。
ほとんどのビジネスリーダーやITリーダーは、拡張アナリティクスの可能性を理解している。だが、拡張アナリティクスを導入する取り組みは抵抗にあいそうだ。不信の一因は、拡張アナリティクスの分析アプローチでは、分析の根拠がブラックボックスになりがちなことにある。拡張アナリティクスにより、例えば何らかの推奨が行われた場合、その具体的な理由が分からないとユーザーはその洞察を信頼することをためらう。分析の透明性の向上と、説明可能なAIを推進する取り組みが、こうした姿勢を転換させるだろう。
拡張アナリティクスの導入に当たっては、現在のデータとアナリティクスの取り組みが有意義でタイムリーな結果をもたらしていないビジネス分野や、アナリストが根本原因分析に多くの時間を費やしているビジネス分野に目を向けるとよい。
従来の分析プロセスのギャップやエラー、時間のかかるステップを特定することで、データとアナリティクスのリーダーは、自動化を推進する新しい分析アプローチの導入の道筋をつけられる。
出典:Scale the Value of Analytics(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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