Gartnerの2023年取締役向け調査から見える、企業のリスク選好と成長戦略、デジタル化の加速Gartner Insights Pickup(295)

経営リーダーは、取締役会が考える優先事項を理解すれば、活動と投資を自社の戦略的方向に合わせられる。

» 2023年03月17日 05時00分 公開
[Lori Perri, Gartner]

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 企業が経済の不確実性に直面し続ける中、経営リーダーは、環境の急速な変化に対応したビジネス戦略の策定と実行に注力している。Gartnerは、さまざまな業種、地域の企業の取締役と取締役会メンバーを対象に「Gartner 2023 Board of Directors Survey」(Gartner 2023年取締役向け調査)を実施し、281人から回答を得た。この調査は、デジタル化の加速とサステナビリティ(持続可能性)、DEI(多様性、公平性、包摂性)への投資の焦点がどこにあるのかを、取締役の視点から把握することを目的としている。

 「経営リーダーは、取締役会が現在の厳しい環境下で考える優先事項を理解する必要がある。活動や投資を、自社の戦略の方向性に合わせるためだ。通常、戦略の方向性は取締役会が設定する」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのパーサ・イエンガー氏は語る。

 「環境や社会、ガバナンス(ESG)、DEIに関する社会的圧力は、企業や取締役会の優先事項にますます影響を及ぼしている」(イエンガー氏)

 イエンガー氏は、 Gartner IT Symposium/Xpo 2022カンファレンスでのプレゼンテーションで、Gartner 2023年取締役向け調査の主な結果を次のように紹介した。

(出所:Gartner)

リスク選好と成長戦略

 急速に変化するビジネス環境の中で成長を推進するには、取締役会は斬新なアプローチを取り入れる必要がある。取締役会は商品ラインの拡大や働き方の変革、新市場への参入において、より大きなリスクを受け入れようとしている。成長に対する外部からの主な脅威や制約としては、迫り来る景気後退と経済の不確実性、インフレ圧力の3つが挙げられる。

主な調査結果

  • 取締役の64%が、2023〜2024年にリスク選好を高める見通し
  • 取締役会は商品ラインの拡大、働き方の変革、新市場への参入において、より大きなリスクを受け入れようとしている
  • デジタル技術への取り組みと人材の問題(定着、トレーニング、採用など)が、取締役にとって2023〜2024年に最優先すべき戦略的ビジネス課題となっている
  • 取締役の89%が、私たちは“ポストデジタル”の世界にいると考えている。これは、取締役の成長戦略において、デジタルがもはや絶対的な役割を果たしていないということだ
  • 2024年末まで、デジタル最適化とデジタル顧客体験が“ポストデジタル”のビジネス成長への取り組みの最たるものとなる

デジタル化の加速

 取締役は、ビジネスの最適化よりも変革を重視する新しい経済アーキテクチャを構築することで、デジタル化を加速する取り組みをより活発に推進する可能性が高い。現在、取締役の60%が、デジタルビジネスの最適化目標を達成したと回答しており、19%がデジタルトランスフォーメーションに向けて前進していると回答している。

主な調査結果

  • 企業は、デジタルビジネスの取り組みに、平均6年間投資している
  • 企業の60%が、デジタルビジネスの最適化目標の達成に向けて順調に進んでいるか、この目標を達成している
  • デジタル先進企業はデジタル後進企業と比べて、デジタルトランスフォーメーションの目標達成に比較的近づいている
  • 企業の71%が、デジタル経済アーキテクチャに優先的に取り組んでいる
  • CEOは、デジタルビジネスの取り組みの推進に責任を負う主要なリーダーである
  • 取締役の53%が、主要なデジタルリーダーは取締役会のエグゼクティブメンバーであり、デジタルビジネスの議論をけん引すると回答している
  • 主要なデジタルリーダーは、デジタル最適化と顧客中心を推進する役割をよりよく果たし、デジタルビジネスをより成功させられる
  • AI/機械学習、ソフトウェア強化、データとアナリティクスが、デジタルビジネスの成功の鍵を握る優れた技術と考えられている

サステナビリティとDEI

 取締役は今後数年間、サステナビリティとDEIへの投資と取り組みが増えると予想している。これらは主に、運用経費(OPEX:Operating Expense)予算の増額で賄われる。2024年まで、大部分の企業ではステークホルダーへの配慮が進み、サステナビリティとDEIへの投資促進につながっていく。

主な調査結果

  • サステナビリティ投資は、主に運用経費と設備投資(CAPEX:Capital Expenditure)の予算増額で賄われる。DEI投資は、主に運用経費予算の増額で賄われる
  • 取締役の80%以上が、ステークホルダーは自社を評価する際や自社と関わる際に、サステナビリティやDEIを考慮すると回答している
  • 従業員や投資家、社会への配慮が進むのに伴い、サステナビリティ投資の増加に拍車が掛かっている
  • ステークホルダーの関心がDEI投資の増加に影響を及ぼしている

要約

  • 急速に変化するビジネス環境の中で、経営幹部そのチームが成長を推進するには、新しいアプローチが必要になる
  • そのために、企業はビジネスの変革と新しい経済アーキテクチャの構築に重点を移す
  • 企業はサステナビリティとDEIにスポットを当て、これらへの投資を拡大する

出典:See the Key Findings From the Gartner 2023 Board of Directors Survey(Smarter with Gartner)

筆者 Lori Perri

Content Marketing Manager


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