正式リリースのMicrosoft 365 Copilot、過大な期待は禁物な理由日本でも正式提供開始

2023年11月1日に一般提供開始(GA)となったMicrosoft 365 Copilot。自然言語でMicrosoft 365を利用し、日常業務を効率化できるという点で、期待は大きい。だが、利用できるユーザー組織がかなり限られ、使える機能にも制限があることには注意が必要だ。

» 2023年11月02日 09時10分 公開
[三木泉@IT]

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 Microsoftは2023年11月1日(米国時間)、Microsoft 365のAIアシスト機能である「Microsoft 365 Copilot」を正式リリースした。今回の正式リリースはあくまでも法人向けであり、消費者向けではない。

 現時点で対応言語は英語、スペイン語、日本語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、イタリア語、中国語(簡体字)。つまり日本語にも既に対応している。日本マイクロソフトも、日本でのMicrosoft 365 Copilotの提供を確認している。

 ただし、現時点ではさまざまな制限や限定があり、注意が必要だ。

Microsoft 365 CopilotではMicrosoft 365 Chatが活躍する

 Microsoft 365 Copilotは、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、TeamsなどのMicrosoft 365アプリに生成AIを適用する機能。具体的に何ができるのかについては、ぜひ下の記事をご覧いただきたい。2023年3月の記事だが、この時点から大まかには変化がない。

参考記事:
新発表のMicrosoft 365 CopilotはChatGPTを付けただけじゃない、パワポ自動作成などの活用例をMicrosoftが紹介

 この記事で紹介できていなかったのは、独立したチャットウィンドウの「Microsoft 365 Chat」。Microsoft 365のアプリケーション、データをあやつる司令塔としての機能を果たすChatGPTライクなインタフェースだ。上の参考記事で紹介したのは、主にアプリケーションに対して自然言語で命令し、結果を得るパターンだが、Microsoft 365 Chatを使えばまさにChatGPTのように、ユーザーがやりたいことをチャットインタフェースにプロンプトとして入力すれば、適切なアプリケーションとの連携で結果が出力される(はず)。

 日本マイクロソフトは、下の図のように機能を紹介している。

Microsoft 365 Chatの機能の一部(提供:日本マイクロソフト)

 また、Microsoft 365 Chatではプラグインを通じて、外部サービスと直接連携できる。MicrosoftはChatGPTのプラグイン仕様を採用しているため、基本的にはChatGPT向けのプラグインがそのまま使えることになる。

 即座に試したくなるMicrosoft 365 Copilotだが、現時点では幾つかの限定や制限があり、注意が必要だ。

E3、E5ライセンス導入企業で300シート以上でないと導入できない

 Microsoft 365 Copilotを利用できるユーザー組織は現時点ではかなり限定されてしまう。

 まず、1ユーザー/月30ドルという強気の価格設定が話題となっている。社内の全Microsoft 365ユーザーのためにこれだけの金額を払うのは大きな負担だ。

 それ以前に、大企業向けの機能を備えた「E3」あるいは「E5」ライセンスを導入している組織のみが購入できると、Microsoftは明言している。ちなみに、日本におけるE3の料金はユーザー/月4500円、E5は同7130円だ(いずれも2023年11月1日時点の税抜価格)。

 Microsoftが公表しているMicrosoft 365 Copilot利用のライセンス要件は上記のみ。だが、Microsoftの運営するフォーラムでは、さらに「E3あるいはE5ライセンスを300シート(ユーザーライセンス)以上導入していること」、および「Microsoft 365 Copilotライセンスを300シート以上購入すること」という条件があるとし、中堅中小企業の切り捨てだと抗議する書き込みが見られる。

 Microsoftの対応者はこうしたコメントを否定せず、「中堅中小企業については早期アクセスプログラムも始めているので、小規模企業を切り捨てているわけではない」と説明した。

 この対応者が引用したMicrosoftのブログポストでは、「(小規模企業もMicrosoft 365 Copilotに向け、)「Microsoft 365 Business Standard」「Microsoft 365 Business Premium」で準備してください」といった表現をしている。だが、対応がいつになるのかは公表していない。

 教育機関や政府機関も、現在のところMicrosoft 365 Copilotを購入することができない。

Excelは英語のみ、SharePointには未対応

 Microsoft 365 Copilotは、現時点で全てのMicrosoft 365アプリに対応しているわけではない。

 英語版のドキュメントによると、現時点で対応しているのはWord、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams、Loop、Whiteboard、OneNote。

 Excelについては、現状では英語のみの対応だと日本マイクロソフトは説明している。これでは、多くの国内ユーザーがExcelの作業でAIを日常的に活用するのは難しい。

 では、SharePointやOneDriveはどうか。この2つの名は、上記のドキュメントにはない。Microsoft 365ロードマップのページを検索すると、SharePointについては「2023年11月よりプレビューで、ロールアウトは2024年3月に開始」と表示される。

 こうした点をどう捉えるかによって、潤沢にIT投資ができる大企業であっても、今の時点でMicrosoft 365 Copilotを導入すべきかどうかの判断は変わってくるはずだ。

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