2025年10月14日にWindows 10のサポートが終了する。調査会社のレポートによれば、日本国内において半数以上がいまだにWindows 10だという。Windows 10のサポート終了まで残り時間が少なくなっている。そろそろWindows 10からWindows 11に移行可能かどうかの確認をしてみるとよい。本稿では、Windows 11との互換性をチェックする方法と、TPM 2.0の要件を満たさなかった場合にUEFI(BIOS)を確認、変更する方法を紹介する。
「Windows 10」のサポート終了日(2025年10月14日)が近づいてきている。Webブラウザの利用状況から市場調査を行っている「Statcounter Global Stats」によれば、日本のWindows OSのシェアはWindows 10が55.96%、Windows 11が41.44%ということだ(Statcounter Global Statsの「Desktop Windows Version Market Share Japan」ページ参照のこと)。いまだにWindows 10のシェアが高いことが分かる。
こうしたWindows 10は、近いうちにWindows 11に移行する必要が生じる。もちろん、ハードウェアごと交換するケースも多いと思うが、いまのWindows 10を無償アップグレードでWindows 11にするつもりのところもあるだろう。
そのような場合、そろそろWindows 11との互換性をチェックし、無償アップグレード可能かどうかを確認しておくとよいだろう。
Windows 11を実行するためのハードウェア要件は、Windows 10と比べて厳しくなっている。下表が、Windows 10とWindows 11のハードウェア要件を比較したものだが、実際には古いプロセッサがサポート対象外になっているなど、簡単ではない。
項目 | Windows 10 | Windows 11 |
---|---|---|
プロセッサ | 1GHz以上のプロセッサ/SoC | 1GHz以上で2コア以上の64bit互換プロセッサ/SoC |
メモリ | 1GB(32bit版)/2GB(64bit版)以上 | 4GB以上 |
ストレージ | 16GB(32bit版)/32GB(64bit版)以上 | 64GB以上 |
ファームウェア | − | UEFI、セキュアブート対応 |
TPM | − | TPMバージョン2.0 |
グラフィックス | DirectX 9 以上(WDDM 1.0ドライバ)対応 | DirectX 12以上(WDDM 2.0ドライバ)対応 |
ディスプレイ | 800×600ドット | 対角サイズ9インチ以上で8bitカラーの高解像度(720p) |
Windows 10とWindows 11の最低ハードウェア要件 |
以下のMicrosoftのWebページに、Windows 11 2022 Update(バージョン22H2)/2023 Update(バージョン23H2)でサポートされているIntelとAMDのプロセッサのリストがある。
これらを見ると、ざっくりと2018年以降に提供されたプロセッサであればWindows 11との互換性がありそうだ。とはいえ、2018年に購入したPCであっても、それ以前のプロセッサを搭載している場合もあるので、単純には判断できない。
また、問題なのは暗号化キーを安全に作成して保存するための「TPM(トラステッドプラットフォームモジュール) 2.0」の搭載が必須となっている点だ。比較的新しいPCであっても、TPM 2.0をサポートしていないものがあった(筆者が購入した小型のノートPCは、2020年発売の比較的新しいプロセッサ「Core i3-1110G4」を搭載するものの、TPM 2.0はサポートされていなかった)。
残念ながら、前述の通り、現在のWindows 10をそのままWindows 11に移行できるかどうかは、メモリ容量やディスク容量だけでは判断できない。また、プロセッサやTPM 2.0の対応を調べるのも大変だ。
そのため、Windows 11との互換性をチェックするツールがMicrosoftより提供されている。Windows 11にアップグレードする際にも、このツールによる互換性チェックが求められるので、このツールをダウンロードして確認すると面倒がないだろう。
互換性チェックツールは、Microsoftの「PC正常性チェックアプリの使用方法」ページの中ほどにある「https://aka.ms/GetPCHealthCheckApp」リンクをクリックして、PC正常性チェックアプリのインストーラー「WindowsPCHealthCheckSetup.msi」をダウンロード、実行してインストールする。
インストールしたアプリを起動すると、「PC正常性を一目で確認」画面が表示されるので、ここの「Windows 11のご紹介」欄にある[今すぐチェック]ボタンをクリックする。Windows 11の実行が可能な場合は、「このPCはWindows 11の要件を満たしています」と表示される。
一方、要件を満たしていない場合は、「このPCは現在、Windows 11システム要件を満たしていません」と表示される。
要件を満たしていない場合は、[すべての結果を表示]ボタンをクリックして、満たしてない項目を確認するとよい。
PC正常性チェックアプリで「TPM 2.0」の項目のみ要件を満たしていなかった場合は、まだ諦めない方がいいかもしれない。Windows 10では、TPM 2.0が必須ではなかったため、UEFI(BIOS)で有効化されていないだけの可能性があるからだ。
実際、一部のWindows 10搭載のデスクトップPCでは、デフォルトのUEFIの設定でTPM 2.0が無効化されているため、PC正常性チェックアプリの互換性チェックで「このPCは現在、Windows 11システム要件を満たしていません」と表示されることがある。そのまま気付かないと、互換性がないと判断してしまい、Windows 11に移行できるはずのPCを廃棄しかねない。
TPM 2.0に対応しているかどうかは、メーカーのサポートページで確認するとよい。また、少し面倒だが、UEFI(BIOS)画面を開き、[Advanced]画面や[Security]画面で「TPM」に関する項目を探し、これが[Disable]になっていないかどうか確認しよう。ただ、UEFI(BIOS)によっては「TPM」という項目名ではなく、「Trusted Computing」や「Intel Platform Trust Technology」などの異なる名称になっている可能性もあるので、[Advanced]画面や[Security]画面で設定が[Disable]になっている項目を特に注意して確認するとよい。
UEFI(BIOS)を開くには、[オプションの選択(回復オプション)]画面からたどるのが確実だ。[スタート]画面の[電源]メニューにある[再起動]を[Shift]キーを押した状態で選択すればよい。しばらく[Shift]キーを押したままにしておくと確実だ。再起動が実行され、青い[オプションの選択]画面が開くはずだ。
ここで、[トラブルシューティング]−[詳細オプション]−[UEFIファームウェアの設定]の順番にクリックして行く(機種によって、表示が英語であったり、画面構成も異なったりする場合がある)。[UEFIファームウェアの設定]をクリックすると、「再起動してUEFIファームウェアの設定を変えます」という画面に切り替わるので、ここで[再起動]ボタンをクリックすれば、再起動後にUEFI画面が開く。
UEFI画面の設定を誤ると、PCが起動しなくなってしまうこともあるので、分からない項目は絶対に触らないようにする。また、心配であればPCに詳しい人に手伝ってもらうようにすること。
前述の通り、TPMに関する項目は、[Advanced]画面や[Security]画面に配置されていることが多い。[Advanced]画面や[Security]画面を開き、該当する項目を見つけ、[Disable]になっていたら、その項目を選択し、[Enable]に変更し、UEFIの設定を保存後、再起動する。[Advanced]画面や[Security]画面の項目を選択後にTPMに関する項目が配置されている場合があるので、順番に該当する項目がないかどうかを慎重に確認しよう。
ちなみにAMD Ryzenを搭載するPC(American Megatrends製UEFI搭載)の場合は、[Advanced]タブの[Trusted Computing]の下にTPM 2.0に関する設定があった。このように機種によって設定項目の位置や名称が異なるので、メーカーのサポートページなどを参照して、設定項目を確認するとよい。
PC正常性チェックアプリで「このPCは現在、Windows 11システム要件を満たしていません」と表示された場合、Windows Updateを使ってWindows 11にアップグレードすることはできない。
ただ自己責任とはなるが、Tech TIPS「システム要件を満たさないPCをWindows 11 2023 Update(23H2)にアップデートする方法」で紹介している方法(裏技)を使って、Windows 10からWindows 11 2023 Update(バージョン23H2)にアップグレードすることは可能だ。
試しにWindows 11システム要件を満たしていないMicrosoft Surface Pro 4(Core i5-6300U)をこの方法でWindows 11にアップグレードしたところ、Microsoft Copilot for Windowsも問題なく動作し、Windows 10と比べてパフォーマンスが大幅に落ちた感じもしなかった。
当然ながらサポート対象外であり、不具合が発生する可能性も否定できない。また、Windows Updateで機能更新プログラムの適用ができない点にも注意が必要だ。突然、更新プログラムの適用ができなくなる、といった可能性もある。
現在のWindows 10上で実行しているアプリケーションやデバイスと、Windows 11の互換性を確認する、といった目的でWindows 11にアップグレードしてみるとよい。もちろん、アップグレードを実行する前に、現在のWindows 10環境をフルバックアップしておくことを忘れないようにしよう。
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