エンジニアが28歳までにキャリアプランを立てるべき理由:経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(6)(2/2 ページ)
エンジニアとしてのピークは案外早く訪れる。後になって後悔しないように、早いうちから準備をしよう。
職業能力のピークは何歳か
「30代前半が能力のピークだ」という考えに異論のある読者もいるかもしれない。もちろん、職種や個人によって差があるし、30代後半以降でも努力によって能力を向上させ、第三者から見た人材価値評価が向上する可能性が全くないわけではない。
筆者がある程度知っているケースで言うと、営業、事務などに従事する文系学部出身のビジネスパーソンの場合、30代前半は、仕事を一通り覚えていて、体力があり、フレッシュな感覚もまだ残っている、総合的には「一番働ける時期」であることが多い。会社の側も、そこをよく分かっているので、この年代は多忙に使われる。
エンジニアの場合はどうなのかを考えるために、別の例を挙げてみよう。
筆者は、大学は経済学部の卒業だが、経済学者の場合、理論や数理に近い専門分野の経済学者の場合、20代後半から、せいぜい30代前半に、代表的な業績(評価される論文)を上げているケースが多い。理論経済学や、ゲーム理論のような分野で、30代後半以降に画期的な業績を上げている例は少ない。一方、実証分析や経済史のような、経験の生きる分野では、もう少し後の年代に大きな業績を上げる場合がある。
技術の先端で勝負するようなエンジニアの場合、数理的な経済学を研究する経済学者に近いケースが多いのではないか。
また、エンジニアの場合、身に付けた技術が、技術自体の変化によって陳腐化することがある。多分、多くの技術分野の変化は、経済学よりも早いだろうし、新旧の技術の優劣も経済学の場合よりもはっきりしているだろう。
システム開発に関わるエンジニアのような、技術を「使う力」に関してはどうだろうか。
例えば、将棋のプロ棋士は、平均的に、おおむね25歳前後で能力のピークに達して、40歳前後から明白に衰え始める場合が多い。40代になってからも、まだトップ戦線で活躍できるのは、ほんの数人の天才・強豪だけだ。彼らは、読みの能力の衰えを、経験から得た知識や判断を読みに組み合わせることでカバーする。
エンジニアの場合も、30代前半ぐらいに能力のピークであり、かつ会社から見て使いやすい時期があって、おおむねこの時期に人材価値の評価が確定すると考えていいのではないだろうか。
その後は、30代半ばまでに培った人材価値に対する評価をいわば「持ち点」として、自分自身の能力の他に、チームで働く他人を使うリーダーシップなどを加味しつつ評価されるようになる。
時間の有限性を知ろう
結論として、エンジニアの場合も、遅くとも「28歳」くらいまでには自分の進路を決めておきたいし、「35歳」くらいまでには、人材価値をおおよそ固めておきたい、というキャリアプランニングの定石は変わらないと考える。
技術の知識・スキルの習得に時間がかかることを思うと、「28歳」は、もう少し前倒しで考える必要がある場合が多いかもしれないが、基本的な考え方は同じだろう。
人生を考えるに当たって、自分が持っている時間や可能性に限りがあることを認識することは、愉快なことではない。しかし、限られた資源(もっぱら「時間」だ)を有効に使うためには、プランが必要だ。
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筆者プロフィール
山崎 元
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。
2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。
※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。
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