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Lesson 1 AI・機械学習・ディープラーニングがしたい! そもそも何ができるの?機械学習&ディープラーニング入門(概要編)(1/2 ページ)

機械学習専門家の藍博士と素人のマナブが会話形式で、AI・機械学習・ディープラーニングの基礎の基礎を分かりやすく紹介するシリーズがスタート。まずはAIとは何か、機械学習との違い、ディープラーニングで実現できることを知ろう。

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連載目次

ご注意:本記事は、@IT/Deep Insider編集部(デジタルアドバンテージ社)が「deepinsider.jp」というサイトから、内容を改変することなく、そのまま「@IT」へと転載したものです。このため用字用語の統一ルールなどは@ITのそれとは一致しません。あらかじめご了承ください。

(インタビュー取材協力:DATUM STUDIO 安部 晃生)

登場人物紹介

深井藍(ふかい・あい) 博士

深井藍(ふかい・あい) 博士

最新の人工知能技術を応用して、次世代の人型ロボット(アンドロイド)を開発するのが仕事。試行錯誤の末にやっと開発できたのがマナブ(01号)である。
責任感が強く頑固で読書家だが、ドラマ好きで、超天然な一面もあるアラサー リケ女。
ちなみに藍が使っているタブレットには、マナブの学習状況をチェックできる機能だけでなく、万が一の安全対策としてマナブの暴走を制御するための「秘密機能」が搭載されているという。

マナブ(01号)

マナブ(01号)

現実社会の学習を進めるため、藍博士と24時間生活を共にしている次世代アンドロイド、0歳。
見るもの聞くものすべてに興味津々。藍が好きなテレビドラマとお笑い番組からも学習しているため、うわすべりな知識から勘違いな行動を取ったり、大阪風のボケをかましたりすることもある。
この物語の主人公。エンジニアスキルはあるけど機械学習やディープラーニングについてまだ何も知らない。


2018年、春のある日

 現実社会の学習をもっと深めようと、毎日、マナブをいろんなところに連れて行く藍。今日は、世界中の食べ物についてもっと学習させるため、横浜ワールドポーターズにやってきて、お店巡りをしていたときのこと。


マナブ、人工知能に興味を持ち始める😋

図1 マラサダ
図1 マラサダ
藍:優しく教える

ジャーン! これ知ってる? ハワイのドーナツ、マラサダだよ。このお店のは、ふわふわモチモチで美味しいのよ。


マナブ:目がハート

うわぁ〜食べたい。見た目は、和風のあんドーナツだね。ミスドのドーナツにも似ているし、一緒に並べると見分けられないかも。藍は見分けられるの?


藍:厳しく教える

(ふむふむ、ドーナツに対する学習は進んでいないと……)形が似ていると見分けるのは大変だよね。でも、私が仕事でやっているAI(人工知能)はそういう見た目判定は得意で、場合によっては人間よりも優れてるんだよ。


マナブ:びっくり

そうなんだ。そういえば、昨日観たテレビで、将来、AIで仕事が無くなるって言ってたなぁ。自分が大人になったときに、そんなんなってたらかなわんわー。だから逆に、こっちからAIを作る側に回るんだ!


藍:あせる

(ヤバい! ヤバい! ヤバい! これはまさかシンギュラリティ*1の始まり!!?)

*1【解説しよう】シンギュラリティ

 シンギュラリティSingularity*2技術的特異点)とは、人工知能が、さらに優れた人工知能を再帰的に創造していくことで、人間を完全に超える圧倒的に高度な知性が生み出されるとする仮説のこと。ここでは詳しくは紹介しないが、この仮説に対しては、各方面からさまざまな賛否両論の主張がある。シンギュラリティを人類の危機と考える人もあり、例えば映画『マトリックス』や『ターミネーター』のスカイネットも、シンギュラリティにより生まれた危機的な人類を想像して描かれたフィクションだと言えるだろう。より詳しくはキーワード解説を参照してほしい。

*2 ディープラーニングや機械学習を実践していくには、APIリファレンスなどが英語になるので、「英語の文章を読むことは避けられない」と考えた方がよい。そこで本シリーズでは、英語のドキュメントを読むためのヒントになるよう、大切なキーワードについては、英単語をカッコ書きで記載する。



―― パニックになった藍は、気づいたらマナブの分のマラサダまで食べてしまっていた ――


マナブ:目が点

あ! 僕のマラサダまで……!!(泣)


藍:あせる

(しまった……。突然だったのでビックリしちゃったけど、考えすぎかな……)ごめん、ごめん。マラサダはもう1個買うね。


マナブ:爆笑

もう、藍先生ったら食いしん坊なんだから! まぁ許すけど。お詫びに、AIの作り方を教えてよ。いつも仕事でやってんだよね?


藍:にっこり

(マナブにAI・機械学習・ディープラーニングを教えるの、研究材料としてむしろ面白いかも)はいはい、分かりました。でも、やる気があるのはいいことだけど、AIで何でも実現できるというわけでもないのよ。マナブはAIで何ができると思っているの?


マナブ:理解不納

テレビで言ってたのは、タクシー/トラックの運転手、スーパーのレジ係、レストランの案内係、オフィスビルの警備員、銀行員の仕事なんかができるってことだったかな。こういう人たちの作業は、AIで全部実現できちゃうってことなのかな。


藍:あやしむ

うーん。それらの作業は、AIとさまざまな技術が組み合わさってできているから、一概に「AIでできる」とは言いにくいのよね。まずは「AIとは何か」についてきちんとした理解が必要だね。


マナブ:にっこり

はい、先生!(キリッ)

AIとは?


藍:優しく教える

AIArtificial Intelligence人工知能)とは、人間が行う「知的活動」をコンピュータープログラムとして実現することだよ。


マナブ:理解不納

知的活動?


藍:厳しく教える

知的活動とは、頭(厳密には脳)で考えて実行する活動全般のことだね。例えばさっきの「ドーナツを見分ける」とか、「絵を描く」「言葉を認識する」「ゲームをする」などなど、あらゆる人間の行動がこれに当てはまるんだよ。

図2 人間の知的活動
図2 人間の知的活動


マナブ:にんまり

ゲームといえば、囲碁でAIが人間のトップ棋士に5番勝負で勝利したという話をテレビで見たよ。


藍:優しく教える

2016年のAlphaGoだね*3

*3 ちなみに、囲碁でAIがハンデ無しでプロ棋士に初めて1勝したのは、これより前の2008年のこと。



マナブ:質問

ところで「囲碁」ってどういうゲーム? どこが知的活動なの?


藍:厳しく教える

囲碁は、黒石と白石に分かれて盤面の陣地を取り合うゲームだけど、「どこに石を打てばよいのか」という課題に対する解答を考えながら勝負するの。最終的に陣地が広い方が勝ち。つまり囲碁におけるAIとは、「最大の陣地を得るためにどこに石を打つべきか」という課題に対して解答する知的活動をコンピュータープログラムとして実現すること、ということになるね。


マナブ:理解不納

うーん。何となく分かったけど、それっぽっちなの? テレビで観てきた限りでは、「AI」といえば「まるで人間のように自分で考えて行動するもの」だとばっかり思ってた。ドラえもんみたいにね。そうじゃないの?


藍:優しく教える

広い意味ではそれもAIで、狭い意味と区別するために強いAIStrong AI、もしくは汎用的なAIAGIArtificial General Intelligence)と呼ばれているの。強いAIは、まさに人間が行う知的活動を完全に模倣できるようなAI。だから「ドラえもんを作る」っていうのは「強いAIを作る」ってことになるわね。ドラえもんができたら素敵だけど、残念ながら現在の技術は、まだそれを実現できるレベルまでには進んでいないのよ。(……と言いつつ実はマナブが強いAIなんだけどね)


マナブ:にっこり

じゃあ、藍先生が教えてくれるのは、狭い意味のAIになるの?


藍:にっこり

そうね。ちなみに狭い意味のAIは弱いAIWeak AI、もしくはNarrow AI)と呼ばれていて、AlphaGoが囲碁に特化しているように、特定の処理のみを実現するAIのことよ。


マナブ:理解不納

ふーん。でもAlphaGoでは「ディープラーニング」というのが話題になってるから、これがAIの中身なんだよね?

AI/機械学習/ディープラーニングはここが違う


藍:優しく教える

確かにAlphaGoもディープラーニングの技術が利用されているのよね。しかも「人間のトップ棋士をAIが打ち破った」というニュースがあまりにセンセーショナルだったので、一般の人には「AlphaGo = AI = ディープラーニング」というふうに固定的に認識されている部分があると思う。


マナブ:質問

ディープラーニング以外にも「AI」と呼べるものがあるということ?


藍:にっこり

そう。まずAIは、さっき説明したように「人間が行う知的活動をコンピュータープログラムとして実現すること」なんだけど、「どのくらい知的であれば“AI”と呼べるか」については厳密な定義があるわけではないの。


マナブ:理解不納

ほんなら、「AI」と呼べるポイントは何なん?


藍:優しく教える

例えばAlphaGoが登場する前から、囲碁のゲームはあったよね。そういったゲームは、例えば「こういう配置であれば、こういう手を打つ」のように人が作ったルールのロジック(論理)に基づいて動作しているのだけど、そういうロジックによるプログラムも、マスメディアや一般の人などから「AI」と呼ばれる時代があったの。こういうのは最近では「AI」と呼ばれなくなっているのよね。


マナブ:質問

AIは、その時代時代の技術によって解釈が違うということなの?


藍:厳しく教える

そう。あるAI技術が浸透して、人々にとって当たり前の存在になると、自然と「AI」と呼ばれなくなり注目されなくなることを時代は繰り返してきているわね。今は、ディープラーニングや機械学習を使ったものが、一般社会の人に「AI」と呼ばれて注目される時代だと思う。もちろん今でも、商品の営業戦略上、人が作ったロジックで動作が自動化されているものを「AI」と呼称しているケースもあるから、「本当に、私たちが想定している“機械学習を使ったAI”なのか」は怪しいものも多いのよね。


マナブ:びっくり

そっか。それなら今、最新のAI技術をを知りたければ、「機械学習とディープラーニングを学べばよい」ということだね。ところで、「機械学習」ってのは急に出てきたけど何なの?


藍:優しく教える

機械学習Machine LearningML)は、さっきのAIの説明に似ているけど、人間が行う「学習」をコンピュータープログラムによって実現することだよ。


マナブ:理解不納

学習?


藍:厳しく教える

学習は、人間が人間らしく知的活動を行うための一つの要素だと言えるの。人間は、体験や知識から学ぶことで、新しい行動ができるようになるよね。例えば自転車に乗るのに何度もチャレンジしたら乗れるようになったり、英単語を何度も覚えることで英語の試験で良い点が取れるようになったり。この学ぶ活動を、AI技術では学習learningラーニング)と呼んでいるの。


マナブ:にんまり

あっ、ディープラーニングにも「ラーニング(学習)」って付いてる!


藍:優しく教える

そうだね。ディープラーニングDeep Learning深層学習)は、機械学習の手法(アプローチ、技法)の一つというわけ。

図3 AI・機械学習・ディープラーニングの包括関係
図3 AI・機械学習・ディープラーニングの包括関係


マナブ:質問

AlphaGoも学習してるの?


藍:にっこり

AlphaGoはたくさんの囲碁の対局結果から学習して、「この盤面ではこの手が最適」という判断できるようになったのね。このときに採用した機械学習の手法が「ディープラーニング」ということなの。


マナブ:にっこり

「機械学習 ⊃ ディープラーニング」という包括関係にあるんだね。そのディープラーニングでは具体的に何ができるの?

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