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Visual Studio Code(以下、VS Code)にPython拡張機能をインストールすると、同時にJupyter拡張機能もインストールされます。Jupyterは、Pythonなどのプログラミング言語で記述された実行可能なコードと、Markdownで記述されたコードに関連するドキュメントとを「ノートブック」と呼ばれる単一のファイルにまとめることが可能な環境を構築しようというオープンソースで開発が進められているプロジェクト(Project Jupyter)です。
このプロジェクトの代表的な成果物が、今述べたようなノートブックをWebブラウザ上で実現するWebアプリ「Jupyter Notebook」や、その進化形である「JupyterLab」です。VS CodeとPython拡張機能(Jupyter拡張機能)を組み合わせると、このノートブック環境をVS Code内で実現できます。今回はその基本を見ていくことにしましょう。
VS Codeと拡張機能だけで、ノートブック環境を実現できるかというとそうでもありません。公式のドキュメントによれば、ノートブックを実行する環境にjupyterパッケージをインストールする必要があります(jupyterパッケージをインストールしていない状態で、ノートブックに記述したPythonコードを筆者が実行しようとしたときには、ipykernelパッケージをインストールするようにダイアログが表示されたので、こちらでも構わないと思われます。ただし、両者ではインストールされるパッケージに差があります)。
ここでは、VS Codeで「vscodepy_11」という名前のフォルダをオープンして、そのフォルダの下にPython 3.9.6の仮想環境を作成し、これをJupyterの実行環境として使用することにします。
仮想環境は、VS Codeの統合ターミナルなどから、「python3 -m venv .venv」「py -m venv .venv」などとして作成すればよいでしょう。仮想環境の作成に使ったターミナルは終了します。その後、コマンドパレットの[Python: インタープリターを選択]コマンドを実行して、作成した仮想環境にあるPython処理系を選択してから、同じくコマンドパレットの[Python: Create Terminal]コマンドを実行して、仮想環境が有効化されているターミナルをオープンします。
この仮想環境にはまだjupyterパッケージがインストールされていないので、今オープンしたターミナルで「pip install jupyter」コマンドを実行します。
これで準備は完了です。
今回はVS Code内でJupyter Notebookの動作環境(カーネル)を実行して、VS Codeでその動作を完結させます。以下ではその手順を見ていきましょう。
といっても、最初にやることはノートブックの内容を保存するファイル(.ipynbファイル)を作成することです。これには、[エクスプローラー]ビューでフォルダ名の隣に表示される[新しいファイル]ボタンをクリックしたり、コマンドパレットから[Jupyter: Create New Blank Notebook]コマンドを実行したりするだけです。
ノートブックの新規作成
[Jupyter: Create New Blank Notebook]コマンドを実行した場合は、エディタ領域にタブは作成されますが、ファイルを保存するまでは[エクスプローラー]ビューにはそれが表示されません([開いているエディタ]セクションには表示されます)。コードを少し動かしてみたいだけで、ファイルを保存する必要はないというのなら、こちらの方法でノートブックを作成して、タブを削除する際にファイルを保存しないようにするのがよいかもしれません。
いずれにせよ、空のノートブックが作成されたら、次に行うのはカーネルの選択です。先ほどはPythonインタプリターを選択して、仮想環境を作成して、仮想環境にjupyterパッケージをインストールして……という作業をしましたが、これはあくまで仮想環境にノートブックの実行環境を作成するのに必要な作業です。ノートブックを実行する環境は、現在選択しているインタプリターとは独立に選択できます。これを行うが、作成したタブの右端にある[カーネルの選択]ボタン(カーネルピッカー)です。あるいは、既に[Python 3.X.X……]のようにカーネルが選択されているかもしれません。
このボタンをクリックすると、現在選択可能なカーネルがコマンドパレット部に表示されます。
ここでカーネルを選択すると、[カーネルの選択]が[Python 3.X.X……]などの記述に変わります。
カーネルを選択したら、これでコードを実行できるようになったので、試しにノートブックの先頭にある「セル」にコードを書いて、実行してみましょう(セルとはコードやMarkdownを入力する領域のことです)。ここでは「print('hello jupyter')」と入力しました。
この状態で、セルの左にある[セルの実行]ボタンをクリックします。すると、以下のようにコードが実行されて、セルの下部に実行結果が表示されます。
Windowsでは以下のようなダイアログが表示されるかもしれません。そのときには、通信を許可する範囲を制限した上でアクセスを許可するようにしてください。
キーボードからセルを実行するには[Ctrl]+[Enter]キーか、[Shift]+[Enter]キーを押しても構いません。後者はセルを実行した後に、次(下)のセルにフォーカスが移動します(セルがなければ新規に作成されるので、動作を一つ一つ確認しながらコードを書いているときには、こちらを使うとセルをわざわざ新規作成する手間が省けます)。
といったところが、VS CodeでJupyter Notebookを使う上での基本の基本です。次ページでは、ノートブックのタブに表示されている各種パーツについて見ていきましょう。
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