がん細胞を死滅させる「腫瘍治療電場(TTF)」の可能性太田智美のビビビ「TEDTalks」ピックアップ!

「TEDTalks」の中から、編集部の太田が「ビビビ」と感じた動画をピックアップし、定期的に紹介する新企画。今回取り上げる動画は、「Treating cancer with electric fields」だ。

» 2013年02月15日 14時27分 公開
[太田智美,@IT]

本連載では、TED(「Technology Entertainment Design」の略)が主催するカンファレンスの講演動画「TEDTalks」の中から、編集部の太田が「ビビビ」と感じた動画をピックアップし、紹介していきます。


「Treating cancer with electric fields」

 ビル・ドイル(Bill Doyle)氏は、イスラエル工科大学名誉教授 ヨーラム・パルティ博士によって発明された新しいがんの治療法「腫瘍治療電場(以下、TTF)」を紹介した。

 TTFとは、低強度の「電場(電界)」を使用した治療法である。電場は、電気が帯びている周りに必ず生じている「力」であり、「電荷(個々の物体や粒子などがもつ電気)」を持つものを引き寄せて作用する。現在、がんの治療では「手術」「放射線療法」「化学療法」の3つの治療法が主に用いられているが、ここに「TTF」治療が加わるかもしれないとビル氏は言う。

 TTF治療では、電場発生装置に接続されたトランスデューサーを体外に装着し、人工的な電場を作り出すことでがん細胞の分裂を防ぎ死滅させる。このような治療が可能である理由は、がん細胞が人体の中で最も強い電荷を持つ物質の1つだからだ。研究所では、20種類以上のがん細胞を対象にTTFを適用したが、そのすべてで効果があったという。さらに、正常な細胞には何の影響も与えることなく治療ができたという研究結果も報告されている。

 パルティ博士は約10年前ほど前、この発見を実用的な治療に発展させるため、Novocureという企業を設立。Novocureでは、これまでに膠芽腫(こうがしゅ)と肺がんの臨床試験を行い、成功させている。臨床試験では、化学療法に見られるような痛み、感染症、吐き気、下痢、便秘、疲労といった副作用もなかったという。

 現在では、化学療法や放射線治療とTTFを組み合わせることで、大きな相乗効果があることが分かっているが、今もなおハーバード大学医学部でこの効果を最大限に高める最適な組み合わせを見つける研究が進められている。テクノロジーを使った新しい治療法「TTF」が、がんと闘う新しい武器となることに期待したい。


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