運用自動化ツールまとめ 2014年版――国内/外資ベンダー7社の製品・サービスを一挙解説特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(4)(1/7 ページ)

第3回までオープンソースソフトウェアに焦点を当てて、「サーバー監視」など個々の作業の運用自動化を解説してきた本特集。今回は商用ツールが得意とする「個々の作業を連携させた一連のプロセスの自動化」にフォーカス。国内外の統合運用管理ツールベンダー主要7社の製品・サービスを一挙に紹介する。

» 2014年12月11日 19時00分 公開

マルチクラウド、OpenStack、SDx、DevOps――各種トレンドのキーワードとなる運用自動化

 ビジネスにアジリティが求められ、それを支える手段として仮想化、クラウドが広く浸透している今、運用自動化はビジネス要請に迅速に応える上で大きな鍵を握っている。というのも、オンプレミスで物理/仮想のサーバー数が数十台、数百台の規模ともなれば、全て手作業でスピーディにビジネス要請に応えることは難しい。加えて、単一あるいは複数のパブリッククラウドを使っていれば、社内外のリソースを統合管理する必要にも迫られる。複雑化したインフラをスピーディに取り回す上では、もはや人海戦術での運用は限界に達しているのだ。

 こうした中、国内外の統合運用管理ツールベンダーも自動化に力を入れている。特集「運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル」、第3回までは「サーバー監視」「ネットワーク監視」など個々の作業を自動化するオープンソースソフトウェアに注目し、さまざまなツールを俯瞰してきたが、今回は商用ツールにフォーカス。第2回「徹底比較! 運用監視を自動化するオープンソースソフトウェア10製品の特徴、メリット・デメリットをひとまとめ」第3回「徹底比較! 運用自動化OSSと商用ツール、両者の違いと使い分け、見極めのポイント」でも紹介した商用ツールの「連携」というアドバンテージ――例えば「仮想サーバーのプロビジョニング」など、「個々の作業を連携させて一連のプロセスを実行する」といった機能に注目しながら、国内外の主要ベンダー7社の運用自動化製品・サービスを紹介する。

 なお、本記事は@ITで2013年1月に公開した「運用自動化ツールまとめ 国内ベンダー編」「運用自動化ツールまとめ 外資ベンダー編」を適宜アップデートした2014年版という位置付け(※)。各社製品の特徴を把握しやすいよう、あえて要点だけをシンプルにまとめている。

※取材を基に構成した2013年版をベースに、各社のニュースリリース、製品ホームページ、問い合わせなどを基に記事内容を更新したものとなります。

 マルチクラウド時代に向かっている今、「運用管理」というものを各社がどう見ているのか、どのような課題解決を支援しようとしているのか、ここから読み取ることで、運用自動化の意義をあらためてくみ取ることができるのではないだろうか。

 特に興味深いのは、OpenStack、SDx(Software-Defined x)、DevOpsといった近年のトレンドが、運用自動化というテーマにつながっていることも見えてくる点だ。ぜひ本記事を通じて、なぜ運用自動化が必要なのか、自社ではどう取り組むべきなのか、“IT活用の今後”を考える一つの参考にしてはいかがだろう。では早速、本論に入ろう。

マルチクラウド管理のサービスポータルも提供――日立製作所「JP1」

 日立製作所は2012年10月にJP1 Version 10を発表し、運用自動化製品「JP1/Automatic Operation」をラインアップに加えた。2013年9月にリリースした10.1では自動化機能を強化し、2014年9月30日から提供する最新版の10.5で、マルチクラウド対応を強化した。

 JP1/Automatic Operationは、オペレーターが運用手順書を見ながら行っていた作業を自動化できる製品だ。仮想サーバーのプロビジョニングの場合、仮想サーバーのメモリ、コア数の設定やストレージのプロビジョニング、仮想サーバーの作成、OSの初期設定といった一連の手順があるが、こうした作業は複数のソフトウェアを使って行う必要がある他、複数の手順書を参照しなければならないことも多い。そうした煩雑な手順をJP1/Automatic Operationに入力、設定すると、「使用するコア数」など人の判断が必要なステップでは自動的に判断を促すなどしながら、一連のプロセスを全て自動化できる。

ALT JP1/Automatic Operationの機能概要

 特徴は大きく2つ。一つは統合運用管理分野における日立のノウハウを基に、典型的な運用作業パターンをテンプレート化していること。これをGUIを使って必要に応じてカスタマイズすることで、自社に即した運用手順を短時間で設定、自動化できる。二つ目はテンプレートの粒度だ。「仮想サーバーの追加・削除」「運用ユーザー追加・変更・削除」など、扱いやすい粒度とすることで導入のしやすさに配慮している。

ALT 自社の運用手順に合わせてGUIでテンプレートをカスタマイズすることも可能

参考リンク:統合システム運用管理「JP1」 IT運用自動化(日立製作所)

 Version 10.5では、JP1/Automatic Operationで新たにREST APIに対応した。既存システムとの連携や運用スクリプト、ユーザー企業独自のGUI画面からのサービスの実行、情報取得、操作などを容易に行えるようになった。

 また、OpenStackやVMwareのクラウド基盤を活用したプライベートクラウド運用の自動化機能も強化された。OpenStack環境向けに、サービスポータル「JP1/Service Portal for OpenStack」の提供を開始。サービスポータルでは、ITリソース割当機能に加え、仮想マシンの承認処理プロセス管理や、リソースに対する操作状況の把握、履歴の保存、参照などの機能を備える。

 VMware環境向けには「VMware vCenter Operations Manager」と連携する機能を追加。vCenter Operations Managerが取得した監視状況を「JP1」に転送・集約可能としている。

 よく行われる作業の自動化テンプレートをあらかじめ用意する、自動化テンプレートの粒度を大きめにすることで導入・適用のハードルを下げるなど、運用現場の“現実”を見据えている点が日立の一つの特徴といえる。一方でVMware環境、OpenStackに対応し、“ITをサービスとして自動提供する”機能も用意するなど、運用自動化が、サーバー仮想化環境からプライベートクラウド実現に至るカギとなることを、あらためて理解できるのではないだろうか。

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