Windows PCからMacBook Airへの移行で懸念材料となっていたメール環境について報告していく。Windows PCからMac OS X上のメールクライアントへどのように移行すればよいのか、さまざまな移行方法を試してみた。
メール環境の移行の前に日本語エディター環境などについて少し補足しておく。メール環境の移行については、いろいろな組み合わせがあるため、前編と後編の2回に分けて解説していくことにする。
前回紹介したようにメールクライアント以外のアプリケーション環境の構築はほぼ終了したのだが、Officeスイーツについては少々失敗をしてしまったことを追記しておきたい。2014年11月15日までは、OS X(以下、分かりにくいのでMac OS Xと記す)のバージョンを最新の「Yosemite(ヨセミテ)」にした上で「Up-To-Dateプログラム」へ申し込むと、Pages/Numbers/Keynoteが無料で入手できたのだが、バージョンアップを行わなかったために権利を失ってしまった。ちなみに、これからMacBook Airを購入する人は無料でMac App StoreからダウンロードしてPages/Numbers/Keynoteが利用できる。
そこで、Officeスイーツについては、フリーソフトウエアの「LibreOffice」を使ってみることにした。少し触ってみたところ、フォントが異なるため表示結果(レイアウト)が若干異なることがあるなどの問題はあったが、校正機能などの互換性は高そうだ。筆者のOfficeスイーツの使い方(文書を入力したり、編集したり、校正機能で査読したりする)ならば、LibreOfficeでも困ることはないだろうという印象を持った。そこで当面、Microsoft Officeの代わりとして、LibreOfficeを使ってみることにする。必ずしも全て無料のアプリケーションで何とかしようとは思わないが(必要なアプリケーションは購入するつもり)、一方でWindows PCからMacへの移行に伴い、どこまで無料でできるのかも試してみたいと思う。
エディターは、CotEditorとmiエディターをインストールしてしばらく使った結果、miエディターの方が自分の使い方に合っているようだ。自動的にインデントする設定がしばらく分からなかったのだが、[モード設定ウィンドウ]の[キーバインド]タブでリターンキー(return)の設定を「改行(現在行と新規行でインデント)」から「改行(インデント無し)」に変更することで自動的にインデントされることがなくなった。
また日本語入力システムは、Mac OS X標準の「ことえり」を使っていたのだが、キーアサインの変更ができず、長年使い慣れたVJEのキーアサインに近いものにできなかった。そこでGoogle日本語入力システムをインストールし、キーアサインをカスタマイズしてVJEに近いものに変更してみた。この状態でしばらく使い始めてみることにする。
さて、今回の本題であるメール環境の移行について説明したいと思う。Windows PCからMacBook Airへの環境移行において、意外と手間がかかるのがメールクライアントだ。どのようなメールクライアントを使っているのか、サーバー側との接続がPOPなのかIMAPなのかなどによって、手順が異なってくる。
そもそもIMAP対応のメールサーバーを使っていたり、GmailやOutlook.comなどのクラウド上のメールサービスに事前に移行していたりすれば、移行自体が不要である(これらの環境ではサーバー側でメールを管理しているので、Mac OS X上でクライアントの設定をするだけでよい)。
だが、POP対応のメールサーバーを使っている場合は大変だ。POP対応のメールクライアントはローカルでメールデータ(以下、ローカルのメールデータを「メールボックス」と記す)を管理しているので、クライアント本体のみならずメールボックスやアドレス帳、振り分けルールなどの移行も必要になってくる。手順を間違えると、これらの情報が消えてしまう可能性もあるので、慎重に作業を行う必要がある。
そこで、ここでは手順が面倒な、Windows PCで使用していたPOP方式のメールクライアントからMac OS Xのメールクライアントに移行する(メールボックスをコピーする)ことを前提に、その方法をいくつか検討してみた。移行先としては以下のような選択肢がありそうだ。
移行元には、Windows Liveメール(Windowsメール)や(Office製品に含まれる)Outlook、Thunderbirdなどさまざまなメールクライアントが考えられる上、上述の通りさまざまな移行先がある。このうち以下のパターンを実際に試してみた。これら以外の組み合わせであっても、今回紹介する移行方法が参考になるだろう。
転送元(Windows OS) | 転送先(Mac OS X) |
---|---|
Outlook | Outlook |
Windows Liveメール | Mail.app |
Thunderbird | Thunderbird |
秀丸メール | Mail.app |
秀丸メール | Thunderbird |
移行元と移行先のメールクライアントの組み合わせ 秀丸メールを取り上げたのは、筆者が主に使っているメールクライアントのため。Windows OS上のさまざまなメールクライアントを移行する際の参考になるだろう。 |
Windows Liveメール(Windowsメール)やOutlookの場合は、Mac OS Xに付属する「移行アシスタント」を利用すれば、Windows PC上の「ドキュメント」「ミュージック」「ビデオ」「ピクチャ」「デスクトップ」などにあるファイルとともに、Mac OS Xの標準メールクライアントに簡単に移行できる。
移行元となるWindows PC上で、Windows移行アシスタントをダウンロードし、インストールしておく。Windows移行アシスタント(Windows OSのスタートメニュー上での表示は「Windows Migration Assistant」)を実行しておき、Mac OS X上で[Launchpad]−[その他]から移行アシスタントをクリックし、指示に従って「Windows PCから」を選択し、ウィザードを進めればよい。この際、Windows PCとMac OS Xは同じネットワークに接続しておく必要がある。
ただ、転送したいファイルやフォルダーの指定ができず、すでにアカウントが設定済みのMac OS Xでは新たにアカウントが作成されるなど、使い勝手があまりよくない。メールクライアントだけを移行するのであれば、手動による設定やメールボックスなどのコピーを勧めたい。
以下では、手動でWindows OSからMac OS Xへメールボックスを移行する手順を紹介する。なお、メールサーバーとの接続設定は別途、Mac OS X側で行う必要がある。とはいってもWindows OSの場合とほとんど変わらず、設定内容はむしろ接続先のメールサーバーに依存するので、その手順は割愛させていただく。詳細はメールサーバーを運営しているプロバイダー(ISP)などのサポートページを参照していただきたい。
Windows PC上でOutlookを利用しているのであれば、MacBook Air上でもMicrosoft Officeを導入してOutlookをメールクライアントとするのが容易だろう。
手順は、Windows PCから別のWindows PCに移行するのと同様、Windows PC上のOutlookで[ファイル]−[オプション]を選択し、[Outlookのオプション]ダイアログを開き、[詳細設定]の[エクスポート]ボタンを押す。[インポート/エクスポート]ウィザードが起動するので、「ファイルにエクスポート」、「Outlookデータファイル(pst)」を選び、エクスポートするフォルダーを選択すると、Outlook内のメールデータなどを保存できる。
このファイルをUSBメモリなどにコピーしてMacBook Airに渡し、Mac OS X上でOutlookを起動して、[ファイル]−[インポート]で読み込めばよい。
「<ファイル名>.PST」という受信フォルダーが作成されるので、作成したアカウント上に必要な受信済みメールなどをコピーすればよい。
なおWindows OS上のOutlookでエクスポートするフォルダーとして、アカウント名を指定すれば、その中に連絡先も含まれているため、メールボックスとともにMac OS XのOutlookに移行できる。[連絡先]を選択すれば、「連絡先候補−<ファイル名>.PST」という名前でWindows OSのOutlookでエクスポートされた連絡先がインポートされるので、真ん中のペインで名前を選択して、ドラッグ&ドロップでアドレス帳に移動すればよい。
Windows 7以降、Windows OSには汎用的なメールクライアントが付属せず(Windows 8/8.1のメールアプリは特定のメールサーバーしか接続できない)、Windows Essentialsに含まれているWindows Liveメールがその代わりとなっている。そのためWindows Liveメールを利用している人も多いようだ。
Windows Liveメールの場合、前述の通り、Windows移行アシスタントを利用すれば、Mail.appに移行できるのだが、メールボックスだけを移行させることはできない。さらに困ったことに、Windows LiveメールからMail.appに直接移行できるエクスポートツール/インポートツールなども提供されていない。そこでいくつか方法があるが、IMAPに対応したOutlook.comやGmailなどのクラウドメールサービスを経由してメールボックスをコピーするのが手っ取り早そうだ。以下、Gmailを利用する方法を例に手順を紹介する。
3. Windows Liveメールで、Gmailの新しいアカウントを送受信できるように[ファイル]−[オプション]−[アカウント]を選択し、[アカウント]ダイアログを開く。
4. [アカウント]ウィザードで[追加]ボタンをクリックし、[アカウントの追加]ウィザードに従ってメールアカウントの追加を行う。Gmailの場合はアカウントとパスワードを設定するだけで自動的にメールサーバーなどの情報が設定される(IMAPが有効な場合は、IMAPで接続するように自動的に設定される)。
5. Windows Liveメールに作成されたGmailアカウントの下にフォルダーを作成し、Windows Liveメールに保存されているメールボックスと同じフォルダー構成とする。
6. 各フォルダーでメッセージを全て選択し、選択したメッセージを[Ctrl]キーを押しながら、Gmailアカウントのフォルダーにドラッグ&ドロップする。同じ操作を全てのフォルダーに対して行う。これで、ローカルのメールボックスを全てGmail上に移行できる。
7. Mac OS XのMail.appで、[メール]−[アカウントを追加]を選択し、移行先となるメールアカウントとGmail(Windows Liveメールでメールボックスを移行したもの)のアカウントをそれぞれ作成する。
8. Mail.appで[メールボックス]−[新規メールボックス]を選択し、「このMAC内」にフォルダーを作成する。
9. Gmailのアカウント側のメッセージを全て選択し、このMAC内のフォルダーに[Command]キーを押しながらドラッグ&ドロップしてコピーする。こちら側もフォルダーごとにメッセージを選択してコピーしていく必要がある。
10. 不要になったGmailのアカウントは、[メール]−[アカウント]を選択し、[インターネットアカウント]ダイアログを表示し、クラウドメールサービスのアカウントを選択して[−]ボタンをクリックすると削除できる。
これでメールボックスの移行が完了する。IMAPに対応したメールクライアントをWindows OS上で利用している場合は、同様の手順でメールボックスの移行が可能だ。また今回はWindows LiveメールからMac OS XのMail.appへの移行を例としたが、Windows OS上のメールクライアント間でも、同様の手順でメールボックスの移行ができるだろう。なおクラウドメールサービスによっては、保存できるメール容量や、一度に送受信できるメール数、添付ファイルのサイズなどに制限があるので、移行したいメールボックスの状態によっては数日にわたってメールボックスのコピーを行ったり、添付ファイルを別途コピーしたりしなければならないこともあるので注意したい。
移行したいメールボックスの容量やセキュリティなどの理由からクラウドメールのIMAPサーバーを経由する方法が利用できない場合、一度、Mac OS X上のThunderbirdに移行してから、Mail.appで受信済みメールなどを読み込ませると文字化けなどのトラブルが少ないようだ。手順は以下の通りとなる。
2. Windows LiveメールでエクスポートしたフォルダーをUSBメモリなどでMac OS Xのデスクトップなどにコピーする。
3. Mac OS Xに以下のURLのWebページからThunderbirdのインストーラーをダウンロード後、インストールする。すぐに起動して[ツール]−[アドオン]を選択し、[アドオンマネージャ]タブを開き、[アドオン入手]で「ImportExportTools」をダウンロードする。[アドオンツール]−[ファイルからアドオンをインストール]を選択し、ダウンロードしたImportExportToolsをインストールして、Thunderbirdを再起動する。
4. Thunderbirdの「ローカルフォルダ」に適当な名前のフォルダーを作成した後、[ツール]メニューから[ImportExportTools]−[フォルダからemlファイルをインポート]−[サブフォルダも含む]を選択し、Windows Liveメールからエクスポートした際に作成された<アカウント名>フォルダーを指定する。Thunderbirdの作成したフォルダー名の下にWindows Liveメールからエクスポートした受信済みメールなどが読み込まれる。
5. [ツール]メニューから[ImportExportTools]−[プロファイルのエクスポート(保存)]を選択して、デスクトップなどを選択すると、受信済みメールなどが含まれたプロファイルが<ID>.default-<日付など>フォルダーとして出力される。
6. Mail.appを起動し、[ファイル]−[メールボックスを読み込む]を選択する。[読み込み]ウィザードが起動するので、「Thunderbird」を選択して、<ID>.default-<日付など>フォルダーを指定してメールボックスを読み込む。
7. [読み込み]ウィザードの[読み込む項目]の選択画面で、Mail.appにインポートする項目を選択する。
8. Mail.appの「このMAC内」の「読み込み」フォルダーなどに読み込まれるので、アカウントを作成後、メッセージを選択してメールボックスの受信フォルダーに移動すればよい。
今回は前編として、OutlookとWindows Liveメールからの移行について解説した。移行アシスタントが利用できれば、比較的簡単にメールボックスの移行も可能なのだが、メールボックスだけを移行できないことや、すでにMac OS Xのアカウントが作成済みの場合は、別のアカウントが作成されてしまうなど、ツールの使い勝手があまりよくない。移行アシスタントを使って、Windows OS上のデータをコピーするのであれば、Mac OS Xの初期設定時に行うのがよいだろう。
次回は、メール移行の続きとしてThunderbirdと秀丸メールから移行する方法を紹介する。
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