なぜ「また、最初からやり直し」になってしまったのでしょうか。「新潟編:最大200万円の住宅取得補助も――妙高市役所の木浦笙子さんに聞く、U&Iターンへの行政支援」でも触れたように、行政には移住者に対する支援があるはずです。
しかし中條さんが移住した20年前は、「子どもは家庭でお母さんが育てるものだ」という考えが主流で、予防接種や検診の案内などはあっても、「ここに行けば子育ての情報や、子育て中のお母さんに出会える場」はなかったのです。
では、現在の状況はどうなのでしょうか。そこで、「子どもがいる女性が移住を考えたら、まず何を調べたらいいか」を尋ねました。
「2008年、子育て中の親子の交流や育児相談、情報提供などをする『地域子育て支援拠点』の充実が児童福祉法で位置付けられました。現在、この動きは全国に広がっています。移住にすることになったら、まずは『地域子育て支援拠点』を探してみるといいと思います」
とはいえ、地方によって支援の品質に差があるかもしれません。実際、「女性の活躍」が叫ばれるようになってから、多くの自治体が「子育てを応援しています」「子育て世代に優しいです」というスローガンを掲げています。そこで、チェックすべきポイントを尋ねました。
すると、中條さんが4つのポイントを挙げてくれました。これらは、行政のWebサイトで調べられるそうです。
「これらの制度をうまく使えば、全然知り合いがいないところでも女性が働くのは難しくなくなってきています。上越市は子育て支援がバッチリです」
子どもがいれば、いろいろな支援策があるし、保育園や幼稚園、学校との関わりを通じて人間関係を作っていけます。けれども、子どもがいない夫婦が移住することもありますし、うまく移住先になじめないこともあります。そして不安や孤独感を誰にも相談できず、引きこもってしまうこともあるかもしれません。そんなとき、「マイナス感情は持っちゃいけない、言っちゃいけない」とフタをして頑張る人が多いと、中條さんは言います。
「女性は頑張り屋さんが多いから、『夫と一緒に新しい生活を始めようと決意して移住したのに、こんなひ弱な私ではいけない。子どもにとってもよくない』と自分を責めてしまうんです。まずは、マイナス感情を抱いている自分に『これでいいんだよ。こういう気持ちを持ってもいいんだよ』とOKを出すことが大切だと思います」
また、中條さんによると「男性も弱音を正しく吐くことが大切」なのだそうです。
自分が移住を言いだし家族を連れてきた場合、責任を感じて、問題や悩みごとにも「1人で何とかしよう」と頑張ることが多いかもしれません。けれども、中條さんの経験では、「男性はギリギリまで抱えて、不機嫌になる方が多い」そうです。筆者も男性なので、その感じ、何となく分かります(苦笑)。
「移住には、良いことも確かにあるけれど、リスクもあります。そういうことを互いに語り合える関係は、とても大事です。ネガティブなことを語るのは、すごい抵抗がありますが、『嫌なんだよね』『困っているんだよね』と、お互いに言える関係性を築いてから移住するのがいいと思います」
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