人口の減少や少子高齢化、地方の衰退など、日本の社会にはさまざまな問題があります。そこで政府は「女性活躍社会」「一億総活躍社会」「地方創生」などのスローガンを掲げ、子育て環境の充実や、地方でも活躍できる場を作ろうとしています。
これらを網羅的に解決する手段として、家族でのU&Iターンは1つの選択肢だと思いますし、PC1台あれば仕事ができるエンジニアなら、今の会社に属したまま地方でテレワークできる可能性も増えてきました。また、近年では長時間労働が問題視されていますが、地方に移住することでワークライフバランスがとれるかもしれません。
そこで、子育てや女性の視点から、U&Iターンや地方で生活すること、働くことについての意見を伺いました。
中條さんは、子どもも含めた地方の人口減少に大きな危機感を持っていました。なぜなら、このまま放っておけば地域の力がどんどん落ちて行ってしまうからです。けれども、問題の解決は「それほど難しいことじゃない」と中條さんは言います。
「マミーズ・ネットは設立当初から男女共同参画を訴えてきました。地方が生き残る秘訣(ひけつ)は、『パパが早く帰る』ことかなと思うんですよ」
中條さんのところには、「実は、家のことをしたい」という男性の声がよく寄せられているそうで、「もし、パパが早く帰れれば、男性も子育てができますし、男女にとって生きやすい世の中になるんじゃないか」と思っているそうです。
また、首都圏では、通勤に1時間以上かかる人も少なくありません。忙しいエンジニアの仕事に加え、会社と家の往復で、家族との時間や自分の時間が持てないという話もよく聞きます。一方、地方は首都圏に比べて通勤時間が短いし、時間的な余裕もあります。
「パパが早く帰るって、地方だとそんなに難しくないじゃないですか。人生を考えたときに、お金だけ、仕事だけではなく、家庭の中でも自分の時間が持てる、いろいろな意味で『ゆとり』ある生活が地方の良さだと思いますし、地方はそういう場所であってほしい。子どもにとっても、幸せな時間を与えられるんじゃないでしょうか」
筆者は今、生まれた土地で、3世代で住んでいますが、結婚した当初は縁もゆかりもない土地(といっても、同じ新潟県内でしたが)で、アパートを借りて住み始めました。結婚してすぐにソフトウエア開発会社に転職したので、「新しい土地、新しい職場」という意味では、移住に近い体験だったかもしれません。
人間関係はほとんどありませんでした。というよりも、3年間、関わりのある人は大家さんだけでした。それでも、私は会社で人間関係ができました。けれども奥さんは、縁もゆかりもない土地で、さぞかし孤独だっただろうなぁと思います。それだけに、「ダンナについていった奥さんの孤独感」の話は、身につまされるような気持ちになりました(実際、そういう話はよく聞きました)。
新しい生活は夢も希望もあって、理想を描きたくなるものです。「移住すれば、自然の中で仕事ができるぞ!」そんな妄想もしますよね。それ自体は悪いことではないし、特にITエンジニアなら、それができる環境は既にあります。
けれども、その夢についてくるパートナーも同じとは限りません。家族での移住を成功させるためには、家族へのサポートも忘れてはいけないのだと思います。そして、感謝の気持ちも。
……100パーセントの自戒を込めて。
全国各地のU&Iターンエンジニアたちが、地方での生活の実情や所感などをセキララに伝えます。Uターン、Iターン、Jターンに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
現在、または元ITエンジニアかIT企業社員、かつ現在住んでいる地域へUターン/Iターン/Jターンし、記事執筆に興味のある方は、下記まで連絡ください。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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