なぜ今、機械学習に投資すべきなのか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
保険会社が、保険料率と保険料をより精密かつ効率的に予測し、収益率を高められるツールを持っていたらどうなるだろうか。あるいは、天然ガス事業者がガス漏れやインバランス(パイプラインシステムからの引出量とパイプラインシステムへの投入量の差)を予測し、的確に対応するツールを活用して、安全性や効率性、顧客満足度を向上できたらどうだろうか。
これらはいずれも機械学習の活用例だ。機械学習技術の導入が活発化している。モノのインターネット(IoT)、ソーシャルメディア、モバイルデバイスなど、至るところで大量のデータが生成される一方、クラウドの処理能力が無限ともいえるスケーラビリティで提供されるようになったことが背景にある。
また、アルゴリズムの理解と高度化が進み、複雑な数学的計算をデータに適用し高速処理が可能になっていることも、機械学習を活用したビジネスでにおける競争優位の獲得への関心の高まりに拍車を掛けている。
機械学習はデータ分析技術の一種であり、明示的なプログラミングなしで、知識を抽出できる。機械学習システムに幅広いソース(アプリケーション、センサー、ネットワーク、デバイス、家電など)からデータが供給され、機械学習システムはそのデータにアルゴリズムを適用し、独自のロジックを構築して、問題解決や洞察の導出、あるいは予測を行う。
「どのような企業でも、データから行動につながる洞察を引き出す力が、競争優位の鍵を握る」と、Gartnerのリサーチディレクターを務めるカールトン・サップ氏は指摘する。
「明示的なプログラミングなしで、新しいデータの追加に応じて自律的に学習し進化できることは、ビジネスインテリジェンス(BI)の究極の目標でもある」(サップ氏)
機械学習のビジネス利用は拡大している。この技術が広い範囲で使えるようになり、その利用によるビジネスメリットの理解も進んできたからだ。豊富なデータ資産を基盤としたデジタル企業が伸びていることや、他のビッグデータソースおよびトレンドも、機械学習のビジネス利用を大きく後押ししている。
例えば、これまでになく多くのソースから情報が生成、収集されるようになっている。こうしたソースとしては、IoTシステムのエッジに配置されたセンサーやソーシャルメディア、モバイルデバイス、Web、従来のビジネスデータストレージなどがある。多くの企業は、これらから得られる情報の山からビジネス価値を最大限引き出すためのリソースを持っていない。
機械学習では大掛かりなプログラミングを行わなくても、データを分析し、独自の予測や推論を導き出せる。機械学習は、ビジネスデータの潜在的価値を活用して競争優位を得る新たな機会を提供する。
「特に、機械学習はデジタルビジネスの競争優位獲得に役立つ。スピード、パワー、効率、インテリジェンスといったメリットを、アプリケーションにこうした特性を明示的にプログラミングせずとも学習によって提供してくれるからだ。言い換えれば、私たちは機械学習のおかげで意思決定をプログラミングすることなく、私たちがどのように意思決定を行うかをプログラムに教育できる」(サップ氏)
機械学習は開発者やデータサイエンスチームに、製品、顧客関係、マーケティングや広告、プロセス管理などを向上させる機会を豊富に提供する。
例えば、エネルギー会社は機械学習を利用してフィールド担当者の管理や生産性を最適化できる。これにより、担当者がどこで最も必要とされるかを予測できる。また、ヘッジファンドは機械学習を利用して、高い利回りが求められる市場で金融ポートフォリオの価格を設定すれば大きなメリットが得られる。データからポートフォリオの潜在的な特徴を見いだすことで、ヘッジファンドは価格を調整し、利益の最大化や売上高の拡大を図れる。
「機械学習は、デジタルビジネスのアーキテクトのためにある次世代のアナリティクスだ。こうしたアーキテクトはビジネスチャンスを理解し、データの取得や処理、モデリング方法、および機械学習機能のデプロイ方法を踏まえ、機械学習環境を構築していくだろう。先を見越して、今から機械学習のためのIT環境を計画、準備しているIT部門は、将来、機械学習のメリットをうまく享受できるだろう」(サップ氏)
出典:Let Machine Learning Boost Your Business Intelligence(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.