愛媛編:中予においでんか、南予にきさいや――地方との相性問題を考えるITエンジニア U&Iターンの理想と現実(29)(4/4 ページ)

» 2017年09月22日 05時00分 公開
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南予地方、鬼北町の「暮らし」〜安全で健康的なスローライフ〜

 東京から鬼北町へは、松山市まで空の便で1時間半。JR松山駅からJR宇和島駅を経由して鬼北町近永駅まで2時間強。道中にはトンネルが多い。JR宇和島駅から近永駅までは、1日に7便、謎の新幹線が走っている。

 車で行くなら、松山から一部高速利用で3時間半だ。鬼北町内での移動手段は、自家用車がデフォルトだ。

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謎の新幹線

 田舎といえば、気になるのは医療、買い物、ネット接続環境だろう。筆者の経験からいえば、どれも何の問題もない。

 医療機関は「鬼北町立北宇和病院」があり、高度救急医療は周辺医院と連携している。医師募集記事によれば、遠隔画像診断などにより、「田舎にいてもプロフェッショナルとしての自己研鑚継続が可能」とのことである。ITで地理的ハンディを超える試みは加速している。その意味でもエンジニアの移住先として考えられるだろう。

 買い物は複数のスーパーがあり、前述の道の駅でも地元の旬の食材がそろう。

 ネット接続環境は、鬼北町役場のWebサイトによれば、ブロードバンド環境が整備されているという。定住するなら、宅地分譲があり住宅建設の助成制度もある

 特筆すべきは、治安の良さだ。犯罪件数は極めて少なく、交通事故のリスクもほぼない。飛び出し注意の看板が目につくが、飛び出すのは人ではなく小動物だ。

 鬼北町では、安心、安全は、無料なのである。

 そのため住民は、治安の良さをデフォルトだと思っている。しかしながら、ITエンジニアが、「安全は水のように当たり前にあるもの」という考えに染まってはならない。この問題は、次回以降で取り上げる。

関連リンク

鬼北町立北宇和病院


パーソナリティーの地方差とマッチング

共通化する「衣食住」と「言語」

 愛媛県各地方の風土と産業と暮らしを紹介してきた。では「言語」や「衣食住」はどうだろうか。

 「言語」は共通化しつつある。

 家庭にテレビが普及して半世紀。山奥でも、アナウンサーの共通語が耳に飛び込んでくる。地方にもインバウンドが増え、外国語が飛び交う。職場には、地方外出身者や帰国子女や海外からの研修生がいる。地方特有の方言を使う時間は減っている。

 「食」は全国的に共通化しつつある。

 ファストフードやコンビニにより、どの地方でも同じ中食を調達できる。郷土料理は、ハレの日に作られる程度だ。

 「住」はといえば、高地の気候の厳しさは、冷暖房設備や住居の断熱化により、和らぎつつある。

 共通化の最たるものは「衣料品」だ。ファストファッションの台頭により、皮膚のセンサーが感じ取る情報に、地方による差異はなくなっている。

パーソナリティーは「地方差」よりも「個体差」

 「住民のパーソナリティー」に地方による違いはあるのだろうか?

 筆者の経験からいえば、大まかには「東予:淡々と物事に取り組む、生真面目な職人肌のタイプ」「中予:美術、音楽、演劇、文学、舞踊に造詣の深い、文化人タイプ」「南予:おおらかでフレンドリーで愉快なタイプ」といったところだ。

 しかしこの差異は、若年層では薄まりつつある。前述の衣食住や言語といった要素が共通化しつつあるからかもしれない。地方別に語られるパーソナリティーは、壮年以上の人に該当するものとして捉えておく程度でいいだろう。

 移住先の町が気に入っても、苦手なタイプの人に出会うかもしれない。逆に苦手な人が1人2人いても、その町と合わないわけではない。どこで暮らそうと、これは同じだ。

 これからは、地方差よりも個体差の方が際立つようになる。

 繰り返す。愛媛は多様だ。マッチングする場所が必ず見つかる。本稿を読み終えた後、「今からちょっと愛媛行ってくる」とつぶやく人が1人でも増えることを願って、次回以降もリアルな情報をお届けする。

 「U&Iターンの理想と現実:愛媛編」、次回(10月公開)は、愛媛の人材育成事情をお伝えします。お楽しみに。

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筆者プロフィール

薬師寺聖

個人事業所セイザインデザイン自営。

1980年代より、勤務先業務の一環として、地域高度情報化推進、産学共同開発、技術イベントや地域ポータルの企画など、地域活性化活動に従事。1998年、XML1.0勧告翌月に退職し、愛媛県鬼北町に移住して開業。東京案件にテレワークで応える。XMLマスター資格試験の初発本など、著書、連載、多数(おもにPROJECT KySS名義)。Microsoft MVPを12年間受賞(Oct 2003- Sep 2015)。

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