大学で学ぶ最大のメリットは、あらゆる分野に触手を伸ばす機会を得られることだ。
まず、エンジニアとして、工学系、理学系の知識を究められる。VR/MR、ロボティクス、IoT、ディープラーニング、BMI(ブレインマシンインタフェース)など、いずれの技術においても、ハードウェアとソフトウェア、両方を理解している方が良い。
できれば、医学にも近づきたい。画像解析、遠隔診断、予兆診断と予防医学、動作や思考による術中操作など、ITは診断と手技の技術支援に関わる。
医療情報学にも触れておきたい。基礎だけでも知っておけば、その知識は、ヘルスデータへの理解はもちろんのこと、ヒトがデバイス化する近未来には、個体の識別情報の定義を考えるきっかけとなるはずだ。
次世代育成のためには教育学、特に発達心理学に触れておきたい。トロッコ問題やAIが生む作品の著作権問題などの課題には、法の知識も必要だ。
観光学でも、自動翻訳や行動パターン予測、自律制御のロボットガイドなど、ITの出番は多い。そして、前述の通り、ビジネス化には経済や経営の知識が必要だ。
書籍「データ匿名化手法 ―ヘルスデータ事例に学ぶ個人情報保護」オライリージャパン 木村映善(愛媛大学大学院医学系研究科博士課程医学専攻社会・健康領域医療情報学講座准教授、兼愛媛大学部附属病院医療情報部副部長)監修
大学に足を運べば、アカデミズムは、現場の開発者に気付きと学びの機会を与えてくれる。
筆者は以前、愛媛大学の研究者との協業で、自閉症児の生活支援ツールのプロトタイプ開発に携わったことがある。それまで発達障害という言葉すら知らず、ITが役立つなどとは考えてもみなかったが、「CSUN 2005」に出展するまでのプロジェクトになり、大きな学びを得た。
逆に、現場の知識を学生に伝えることもできる。筆者は、何度かXMLの無償セミナーを担当したことがある。
移住したなら、研究者から専門知識を学び、逆に、現場の情報を学生に伝えよう。知識は実践力を強化し、実践は知識の理解を助ける。知識と実践は学びの両輪だ。
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