「地方創生」というキーワードが話題ですが、実際には「地元に残る」人の割合がまだまだ少なく、地方では人口流出が続いています。
「地域経済分析システムRESAS」を使って、新卒者がどのぐらい地元で就職しているか」を、人口の総流入(流入−流出)数で調べてみました。
東京と京都は増加していますが、その他のエリアは軒並みマイナスです。
「個人」の視点で考えると、地元に希望するレベルの学校がなかったり、なりたい職業の選択肢が少なかったりする人は、人口の多いエリアの方がいろいろな経験ができて、出会いもチャンスもあると考え、都市での生活に憧れるものです(個人的な感想です)。
しかし、東京に住み、働き、ある程度の年数がたってくると、「本当にこのまま一生をここで過ごすのか。せわしなく過ぎていく毎日を、10年後も20年後も同じように暮らすのか」と、疑問を持つようになるのではないでしょうか(これも個人的な感想です)。
そんな私たちの肌感覚を、数値で実証する調査結果があります。進学や就職で地方の人口が減っている一方で、東京である程度キャリアを積んだ人たちの地方への移動が増え始めているのです。
地方暮らしを希望する方と全国の自治体をマッチングする「NPO法人ふるさと回帰支援センター」が2017年に行ったアンケート結果を見ると、地方移住に関する相談件数が年々上昇しているのが分かります。
年代は20〜30代の割合が徐々に増えており、「リタイア後の第2の人生」というよりも、「場所にこだわらずにキャリア形成をする場」として地方を選ぶ若者が増えていることが見て取れます。
私が地方移住エージェントとして接するITエンジニアの多く「20代」「シングル」で、「東京である必要はない」「仕事に余計なストレスが掛からない環境がいい」と考え、自分の地元とは別の環境での就業を希望する方が増えています。
30代、40代と年代が進むと、結婚や出産、育児に介護など、家庭環境の変化が生じます。それに合わせ、より過ごしやすいエリアへの住み替えを希望し、地元へのUターンが増えてくるのがこの層です。
UIターン者を受け入れる側の地方都市も、IT産業の誘致に積極的です。
そもそもの始まりは「神山バレー」かもしれません。2012年、名刺管理ソフトの「Sansan」が徳島県神山町に開発ラボを作りました。
田舎暮らしを楽しみながら最先端のシステムを開発する様子が、多くのメディアで取り上げられました。のどかな山の中で、ハンモックに揺られながら開発をする。その自由さに憧れた方は多かったのではないでしょうか。そして、みんな気が付いたのです。
ITエンジニアは、どんなエリアでも東京と同じレベルで仕事ができるんじゃないか。
そして2018年、エンジニアはもちろん、自治体もそこに目を付け、より多くのIT企業を受け入れられるよう、さまざまな特徴を出しながらIT産業の誘致をしているのです。
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