2011年の東日本大震災直後は、仙台に拠点を構えていながら撤退を決めた企業がありました。しかし震災から7年が経過した今、フットワークの軽いIT企業が仙台に立地し、復興をバックアップしています。
ワイヤードビーンズのオフィス。1000平方メートル超の広々としたフロアには、グラスやカップなどの自社製品が並ぶショールームや製品を使ったカフェ&バルスペース、自社の照明や椅子の並ぶ打ち合わせスペースがあり、バルの向こう側ではIT部門のスタッフが働く姿、手前ではレーザー加工や最終出荷の工程を見られる「ワイヤードビーンズ」は、Salesforce.comの公式パートナーとしてSalesforce Commerce Cloud事業で国内1位の実績を持つIT企業です。さらに、職人手作りのヒット商品を次々と生み出すものづくりメーカーでもあります。本社は仙台です。
仙台出身の三輪寛社長が東京から仙台に戻ってきたのは1998年、30歳のころでした。
転職先を探す中で、30代の人がキャリアを生かせる勤め先があまりに少ないことを実感し、若手の雇用の受け皿となり、東北のIT業界の明るい光となる会社を作ろうと、2009年に同社を創業しました。
IT分野では、当時のeコマースのビジネスがいずれ行き詰まることを見抜き、2015年に日本に進出したCommerce Cloud(当時はDemandware社)と提携。わずか3年でAPAC(アジア太平洋)マーケットのシェア3位になりました。
さらに、百貨店のビジネスモデルがインターネットの普及によって崩壊する様子を見て、「新しい流通網の活用が職人の復興につながる」と考え、創業と同時にものづくり分野にも参入。ITと日本の職人の技術を活用して、現代の住環境に合ったデザインの商品を開発しました。「生涯を添い遂げるグラス」を代表とする商品が続々とグッドデザイン賞に選ばれ、生産が追い付かない状況が続いています。
これらの実績や事業の可能性、特有のポジションが東北6県の銀行や宮城県、仙台市などにも評価され、2017年12月には経済産業省から地域未来牽引企業の選定も受けています。「同業が何千社とある東京ではなく、仙台で光る会社を作れば、確実に支援者が増えると見込んでいました」と三輪社長は、仙台創業のもう1つの理由を明かします。
「サービスや製品(モノ)」「銀行の支援(カネ)」がそろった今、今後の発展に欠かせないのが「優秀な人材(ヒト)」です。同社は今後、UIJターンを考えているエンジニアやディレクター、プロジェクトマネジャーを100人規模で採用を進行しており、将来的には、東北の優秀な新卒者の雇用も考えています。
IT×ものづくりで仙台に雇用を生む同社の挑戦、新オフィスの窓から差し込む日差しよりもまばゆい光が、そこにはありました。
データ連携コンポーネントベンダー「CData Software Inc.」は、企業で利用するシステムやサービスの利用者がストレスフリーなシステム間データ連携を実現するソフトウェアプロダクトを開発し、全世界で販売しています。
グローバル本社は米国ノースカロライナ州のリサーチトライアングルにあり、欧州と中国にも開発オフィスがあります。同社の日本法人が、仙台に拠点がある「CData Software Japan」です。仙台に日本支社を設立した理由は、「住みよい環境、おいしいご飯が人をよりクリエイティブに、幸せにしてくれると信じたから」とのこと。
CData Software Japanは、製品のローカライズや日本国内の顧客への販売、サポートだけでなく、日本発のクラウドサービスやシステムとデータ連携できる製品の開発ディレクションも行います。商圏は首都圏を中心とした日本全国はもちろん、中国を除くアジアを視野に入れています。
CData Software Japanは、「在宅でもどこでも、長期的に高いパフォーマンスを出し続けられる環境が一番」と考えているため、場所にこだわらない働き方を実践しています。
例えば、宮城県出身で2年前に仙台にUターンした桑島さんは、状況に応じて在宅勤務を行っています、
通常は、お子さんの登校と一緒に家を出て早めに出社、退社も夕食時間に間に合うようにして、家族との会話の時間を持てるように心掛けているそうです。
「首都圏より安い家賃で広い部屋に住めるようになって仕事部屋ができたので、仕事量が多いときや海外メンバーと夜にコミュニケーションが必要なときは、家でリモートワークをします。家族との時間でリフレッシュした後に集中して働けるので、パフォーマンスを出せるようになりました」と、にこやかに話してくれました。
マクロ編:ITエンジニアにおすすめの移住先を探せ!
マクロ編:IT先進エリア「北九州」が取り組む、IT誘致とラブターン
石川編:勉強会天国「金沢」のエンジニア交流事情を紹介しよう
福井編:東京生まれ東京育ちのめがね男子、鯖江でアジャイル開発しつつ都会と地方のいいとこどりを目指す
大分編:蛇口をひねれば温泉が!――別府で働くゲームプログラマーのリアルなエンジニアライフ
北海道編:ハドソンを覚えていますか?――年収、家賃、IT企業
愛媛編:リケジョもいるよ――「新居浜高専」でロボコン出場を目指そう
鳥取編:ITの仕事って、ホントに田舎でもできるんですよね?
秋田編:ノマド制度を利用して地元に拠点を開設――人口減少の最先端で“余白”に挑め
宮古島編:青い空! 白い砂!――首都圏の仕事をビーチでリモートワークするという、うっとりするような選択肢
大阪編:U&Iターンを超えた「フラットな世界」へ――楽天大阪支社のグローバルプロジェクト
子育て中のエンジニアが、移住先選びでチェックすべき4つのポイント
長野編:仕事の「数」はある、しかし……既婚エンジニアの移住と長野のIT求人事情
島根編:就業も支援! コミュニティーも支援! 呑み会も支援! ――八面六臂の“おせっかい”ぶりを発揮する、松江のスーパー公務員トリオ座談会
沖縄編:ヤギはめったに食べないよ!――沖縄の歴史、言葉、通勤着
岡山編:立ち乗客3人で「すげー満員じゃあ」――岡山の交通、住宅、生活事情
高知編:はちきん娘がプライベートを大公開――高知の家賃、生活費
エンジニアは、もっと自由に働ける――U&IターンのススメCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.