Windowsのバージョンのアップグレードは、アップグレード対象のWindowsを実行中の状態からセットアップ(Setup.exe)を開始する必要があります。インストールメディア(USBやDVD)から起動したセットアップからは新規インストールしかできません。それなのに後者に「アップグレード」オプションが存在するのはなぜなのでしょうか。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Windowsのバージョンのアップグレード(「インプレースアップグレード」とも呼ばれます)は、アップグレード対象のWindowsが実行中の状態から開始する必要があります。新規インストールやアップグレードインストール作業を何度か経験しているITプロフェッショナルの方なら、これは常識的なことでしょう。
新規インストールは、Windowsが実行中の状態から開始する方法と、インストールメディア(USBメモリやDVDメディア)からPCを起動し、セットアップを開始する方法のいずれかを選択できます。現在のディスク内容をクリアしてしまっても構わない、あるいは意図的にまっさらな状態にクリアしたいという場合は、インストールメディアからセットアップを開始します。
Windows 10からは「Windows Update」や「Windows Server Update Services(WSUS)」から配布される「機能更新プログラム」によるアップグレードも可能になりました。また、「PCのリセット(このPCを初期状態に戻す、新たに開始)」というWindows 10の機能では、インストールメディアを使用せずに、いつでも簡単に新規インストール相当のことを実施できます。しかし、今回はインストールメディアを使用したアップグレードの話です。
前述したように、インストールメディアからPCを起動すると開始する「Windowsセットアップ」では、新規インストールしか選択できません。しかしながら、インストールの種類として「アップグレード」オプションも提示され、既定で選択された状態になります。新規インストールを開始するには、マウスやキーボード操作で「カスタム」を明示的に選択する必要があります。「アップグレード」を選択しても、ただ単にWindowsを通常起動してから行う必要がある旨があらためて案内されるだけです(画面1)。
筆者自身、これまで深く考えたことはありませんでしたが、“できないこと”を繰り返し説明するために「アップグレード」オプションが用意されていることに違和感はないでしょうか。インストールの種類は新規インストールしかできないので、「カスタム」を明示的に選択するという行為は余計な手間にも感じます。
なぜ無用な「アップグレード」オプションが存在するのか――Windows XPのWindowsセットアップまでさかのぼってみると、少し納得がいきます。一方で、インストールメディアからPCを起動して開始するWindowsセットアップは、Windows 7以降、大きな改良は行われていないようです。例えば、既定では現在の推奨のパーティション構成ではなく、過去の推奨パーティション構成でセットアップされます。
そのため、次のバージョンへのアップグレードの際、OSディスクの最後尾に「回復(OEM)パーティション」が追加されるという経験をすることになります(UEFI<Unified Extensible Firmware Interface>の場合は、先頭に無駄なOEMパーティションが残ります)。Windowsの新バージョンが出るたびに、従来の方法で新規インストールを行うという人は、もはや絶滅危惧種なのかもしれません。
Windows XPの場合、アップグレード対象のWindowsが実行中の状態でインストールメディアからセットアップ(Setup.exe)を開始すると、新規インストールとアップグレードを選択できます(画面2)。
インストールメディア(CD-ROM)または起動用フロッピーディスク(6枚、CD-ROMからの起動に対応していないPC用)からPCを起動した場合は、テキストベースのWindows XPセットアップ(これはWindows PE 1.0上で動作しています)が開始しますが、これにはインストールの種類の選択オプションはありません。
できることは新規インストールや現在のインストールの修復のみです。新規インストールを選択すると、パーティションの作成やフォーマット、ファイルのコピーまで行われ、再起動後にGUIのセットアップ(Setup.exe、これはローカルにコピーされたWindows XP上で動作しています)に進みます(画面3)。
Windowsセットアップは、Windows Vistaで大きく刷新されました。その技術は、最新のWindows 10に搭載されたセットアップのベースにもなっています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.