2020年の“デジタル化”、転機を勝機に変える企業はどこが違うのかGartner Insights Pickup(153)

「デジタルに取り組んでいる」というだけでは足りない。このままでは転機を乗り越えられない。企業が不確実性を乗り越えて成功を収めるための10の重要な能力とは何か。

» 2020年04月10日 05時00分 公開
[Kasey Panetta,Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 企業はここ数年、「成功への道はデジタルしかない」といわれてきた。

 だが、今では企業の40%が、デジタルへの取り組みを大規模に進めていると報告している。リーダーは新しい言葉に注目するときだ。それは「不確実性」だ。

 転機やディスラプション(創造的破壊)にどのように対処するか、あるいは対処する準備をどのように整えているかが、企業の将来の成功を左右する。こうした転機は、買収やコスト圧力、消費者需要の変化といった課題の形を取る。準備が整っていない企業は、長期的なダメージを受ける。

 報告されているデジタルへの取り組みは、既存ビジネスモデルの最適化がほとんどで、デジタルトランスフォーメーションは実現に至っていない。そのため、現状ではデジタル企業ですら転機に弱い。

 「転機にはディスラプションが起こる。転機を越えたときに、それが訪れる前よりも後退している企業もあり、大きく後退してしまっているケースもある。これは、転機を経て対応力が落ちたということだ」。Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイス‐プレジデントのアンディ・ラウゼル・ジョーンズ(Andy Rowsell-Jones)氏は、2019年10月に米国で開催されたGartner IT Symposium/Xpoでそう語った。

 「企業が高い適合性を備えていない場合、転機によってさまざまな前提条件が変わることで、環境変化に合わせて柔軟に行動する力が低下してしまう」(ジョーンズ氏)

転機がもたらす不確実性:対処の巧拙

 1070人のCIO(最高情報責任者)とシニアITリーダーを対象としたGartnerの「2020 CIO アジェンダ・サーベイ」調査は、転機を経てより強くなる企業と、弱体化する企業はどこが違うのかを明らかにした。

 ここで、スピードスケーターの滑走コースを考えてみよう。トラックのカーブは危険な場所だ。滑りの速度と方向が変化し、視界が悪くなり、レースの流れが変わりやすくなる。だが、そこで戦略的に滑れば優位に立てる。カーブに入るときに減速するタイミングを遅らせ、カーブから出るときに加速することで、リスクを避けるライバルより前に出て引き離すことができる。このように、勝利するスケーターは計算されたリスクを取り、自ら培った中核能力を信頼する。

 ビジネスの文脈では、転機は、真っすぐ進んできた進路の転換につながる。転機は力学を変え、対応を迫るからだ。問題は、企業がブレーキを踏んでリスクを避けるか(コスト削減やプロジェクトの縮小、撤退など)、スムーズにアクセルを踏み、転機における課題に取り組んで解決するか(培った中核能力を生かして)だ。

 Gartnerは、「2020 CIO アジェンダ・サーベイ」調査の結果を分析するに当たり、「企業が最近の転機にどのように対処したか」に基づいて、回答者が属する企業を「適合した(Fit)企業」と「不適合な(Fragile)企業」の2つに分けた。

 Gartnerによると、「不適合な企業」では、転機によって収益が一時的に脅かされるだけでなく、転機の影響が長引く恐れがある。「不適合な企業」は転機を乗り切った時点で、新たな取り組みの始動や投資といったビジネス運営のための基盤が弱体化し、適切な人材を獲得する力も低下していたという。2020年のIT予算の予想伸び率も、回答企業全体では平均2.8%であるのに対し、「不適合な企業」では平均0.9%にとどまっていた。

「適合した企業」はどこが違うのか

 どの企業も、目指すのは転機がもたらす不確実性に対処することで、転機を乗り越えてより強くなり、競争を勝ち抜いていくことだろう。だが、こうして転機を勝機に変えることに成功するのは、一握りの企業だ。

 「適合した企業」(転機を乗り越えてより強くなった企業)は主要な領域において、「不適合な企業」を上回るパフォーマンスを記録している。転機を越えてビジネス基盤が弱体化した「不適合な企業」とは対照的に、投資をして収益力を高めることが可能だ。「不適合な企業」の過去3年間の売上高成長率は年平均3.5%であるのに対し、「適合した企業」は同5%となっており、さらに差がつきそうだ。

 Gartnerによると、「適合した企業」は回答企業全体の約25%にとどまるが、これらの企業を他社から際立たせる10の重要な能力を備えている。

  • 明確で効果的なリーダーシップを発揮する
  • 規律あるIT投資を決定する
  • 明確な一貫したビジョンを、従業員や消費者、パートナーに提示する
  • 明確で一貫した総合的なビジネス戦略を持つ
  • CIOとCEO(最高経営責任者)の関係を強固なものにする
  • ITを活用して競争の優位を獲得する
  • 機会と脅威を見越し、変化を先取りして対応する
  • 当年度の利益が減少しても、長期的な成長に向けてリスクを取る用意がある
  • 変化をかじ取りできる
  • IT部門の文化を育成し、状況に応じて変える

出典:The Gartner 2020 CIO Agenda: Winning in the Turns(Smarter with Gartner)

※この記事の原文は2019年10月に米国で開催したGartner IT Symposium/Xpo 2019の講演内容をベースとしたものであり、その時点での世界の企業の状況を前提としています。

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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