Windows 10の新バージョンが出ると「設定」アプリの各種設定や利用可能な「オプション機能」「Windowsの機能」を探るのが癖になっているのですが、以前から存在しながら、これまで気にもとめていなかったある設定に目がいきました。Windows Updateの「詳細オプション」の下の方に鎮座している「プライバシーの設定」です。
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「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」の「設定」アプリをいろいろと探っているとき、「Windows Update」の「詳細オプション」に近い場所に“プライバシー”という項目が2つあることがなぜか気になりました。以前のバージョンで確認してみると、前々からそうなっていたようです(画面1)。
1つは「プライバシーの設定」で、これをクリックすると「設定」アプリの「プライバシー」に移動します。もう1つは「[プライバシー]セクションの次の箇所で更新後の自動デバイス セットアップを構成します:サインイン オプション」で、「サインイン オプション」をクリックすると「設定」アプリの「アカウント」にある「サインイン オプション」が開きます(画面2)。更新後の自動サインインの設定は、もちろん後者に存在します。
「[プライバシー]セクションの次の箇所で……」という日本語を読むと、「プライバシーの設定」の方にもその設定がありそうに思えないでしょうか。しかし、「設定」アプリの「プライバシー」には更新プログラムに関連する項目は見当たりません。
表示言語を英語(en-US)に切り替えると、1つ目の謎はすぐに解けました。「[プライバシー]セクションの次の箇所で更新後の自動デバイス セットアップを構成します:サインイン オプション」のオリジナルは、「Configure automatic device setup after an update under the Privacy section in Sign-in options」でした(画面3)。
より適切に訳すなら、「サインイン オプション内の[プライバシー]セクションで更新後の自動デバイスセットアップを構成します」となるでしょうか。確かに、この設定は「サインイン オプション」の「プライバシー」の下にあります。
「[プライバシー]セクションの……」の設定は、実際に確認したわけではありませんが、恐らく「Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)」から存在していたはずです。以下の@ITの記事やMicrosoftサポート情報で説明されているように、「Windows 10 Creators Update(バージョン1703)」までは「詳細オプション」のページ内に「更新後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」というオプションで存在していました。これがWindows 10 バージョン1709で「アカウント」の「サインインオプション」に変更されました。
また、「[プライバシー]セクションの……」項目や「アカウント」の「サインインオプション」にある設定項目は、使用環境によっては非表示になるため、見たことがない人もいるでしょう。Active Directoryに参加しているクライアントや組織(Azure Active Directory)のアカウントでサインインするように構成されているか、組織のメールアカウントを追加していてデバイス管理の対象になっている(組織のポリシーが適用されている)場合、再起動後の自動サインインによるインストールの完了機能は使用できなくなり、設定オプションは表示されません。
なお、更新後に自動サインインを行い、更新プログラムのインストールを完了させておく機能は、「Windows 8.1」からの機能です。
もう1の“プライバシー”である「プライバシーの設定」は、Windows 10の最初のバージョン(ビルド10240、便宜上のバージョン1507)から「詳細オプション」に配置されていました。この場所に「プライバシーの設定」が配置されている理由はよく分かりません。
そこで、さらに1つ前のバージョンであるWindows 8.1のWindows Updateの設定を確認してみました。コントロールパネルの「Windows Update」にある「設定の変更」を開くと、そこには「注意:他の更新プログラムを確認するとき、最初にWindows Update自体が自動的に更新されることがあります。オンラインのプライバシーに関する声明をお読みください」とあり、クリックすると該当するWebサイトが開きます(画面4)。
もう一度、画面1を見てください。「プライバシーの設定」は「注意:他の更新プログラムを確認するとき、最初にWindows Update自体が自動的に更新されることがあります」の少し離れた上に配置されています。そして、「プライバシーの設定」をクリックして開く「設定」アプリの「プライバシー」には、「プライバシーに関する声明」のWebサイトへのリンクがあります(画面5)。
過去のバージョンをさかのぼって確認してみると、もともとはWindows 8.1に倣って「注意:他の更新プログラムを確認するとき、最初にWindows Update自体が自動的に更新されることがあります」のすぐ下の「プライバシーの設定」が配置されていました。
Windows 10には配信の最適化機能が搭載されていますが、Windows 10 バージョン1703以前は「詳細オプション」にある「更新プログラムの提供方法を選ぶ」で設定できました。Windows 10 バージョン1709のときに「更新プログラムの提供方法を選ぶ」は「配信の最適化」に変更されましたが、配置は同じままでした。そして、Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)のときに「プライバシーの設定」は「配信の最適化」のすぐ下に移動されました(画面6)。
このいきさつから想像するに、「注意:他の更新プログラムを確認するとき、最初にWindows Update自体が自動的に更新されることがあります」と「プライバシーの設定」の関連性を考えずに、見栄えだけ考えて「プライバシーの設定」の表示位置を移動してしまったのでしょう。そして、「プライバシーの設定」が「詳細オプション」の中に存在する意味合いが分からなくなってしまったということです。
「プライバシーの設定」の意味合いが不明でも、配置がおかしかったとしても、Windows 10の機能性には関係はありません。しかし、もっと重要な部分で同じようなことが行われていたとしたら……。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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