2020年に入ってすぐ、「Windows 7」と「Windows Server 2008/2008 R2」の延長サポートが終了しましたが、2020年10月13日には同世代のアプリケーションソフトウェアWindows用「Microsoft Office 2010」のサポートが終了します。米国時間で2020年10月13日なら、日本では翌日の14日までサポートが続くと思っていませんか? 近くの壁にかかっているカレンダー、あるいはPCのカレンダーの「10月13日」で終わりです。
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2020年10月13日に「Microsoft Office 2010」の延長サポートが終了し、米国時間のその日(日本時間14日の未明)にリリースされるセキュリティ更新プログラムが、最後の更新プログラムになる予定です。
「予定」と言ったのは、最後の更新プログラムに重大な問題があれば、1カ月以内に修正版が提供されることになると思われるからです。以前はサポート終了日にリリースされるセキュリティ更新プログラムの30日間のサポートについては、サポート情報「KB17140」で説明されていましたが、現在は同情報は削除され、別のサイト(ライフサイクルに関する FAQ - 一般)にリダイレクトされるようになっています。
実際のところ、2020年1月14日にサポートが終了した「Windows 7」「Windows Server 2008/2008 R2」の場合、最後のセキュリティ更新プログラムに壁紙の表示に関する不具合が見つかり、2月初めに修正プログラムが提供されました。
セキュリティ更新プログラムを提供するタイミングとは別に、Office 2010のサポート窓口を通じたサポートは各国現地時間の「2020年10月13日」で終了ということのようです。なぜなら、情報処理推進機構(IPA)のWindows 7、Windows Server 2008/2008 R2のサポート終了(2020年1月)に関する注意喚起の公開情報は、当初、米国時間1月14日、日本時間1月15日にサポート終了と記載していましたが、Microsoftからの情報提供を受け、日本時間で1月14日の各サポート窓口の営業時間までと訂正されたことがあったからです(画面1)。
最後のセキュリティ更新プログラムの配布は、時差の関係で日本では翌日の14日になってからになるので(通常、午前3時ごろに配布開始)、これに関して問い合わせるサポート窓口は日本国内に“公式には”既に存在しないことになります。日付変更線の関係で、日本のサポート窓口が世界で最初に閉じてしまうことです。ソフトウェアのリリースは米国時間なので、日本のサポート期間は「10年−1日」ということもできます。
10年もの長いサポートが終了する最後の1日が、どっちなのかこだわっても仕方がないことです。サポート終了ギリギリまでOffice 2010を使い続け、最後の1日にこの問題をどうにかしてくれなんて無理難題を言うユーザーはいないでしょう(有料のサポートサービスを契約しているのなら別ですが)。
しかし、Windowsとは異なり、Officeのバージョンが新しくなっても使い方に影響しないユーザーが大多数だと思うので、新しいバージョンのOfficeに移行しようとは考えずに、ずるずると今日まで来てしまったというのなら分かります。サポートが終了すると、翌月以降、新たなセキュリティ更新プログラムは提供されなくなるので、さらに使い続けるのはセキュリティ上のリスクがあります。
世の中はもうサブスクリプション製品の「Microsoft 365 Apps」が主流だと思いますが、まだOffice 2010を使っているという場合は、次も永続ライセンス版の「Microsoft Office 2016」や「Microsoft Office 2019」を検討しているかもしれません。
2018年9月にリリースされたOffice 2019なら、後8年はサポートが続くと思っていたらそれは誤解です。Office 2019の延長サポートは、Office 2016と同じ「2025年10月14日」に終了します。Office 2019もメインストリームサポートは5年ですが、延長サポートは2年に短縮されています。
2020年1月のWindows 7、Windows Server 2008、Windows Server 2008 R2より前は、Microsoftは主要製品について注意喚起のキャンペーンを行う際、日本では米国時間のサポート終了日の翌日をサポート終了日として案内してきました。「Windows XP」と「Microsoft Office 2003」は「2014年4月8日(火)」にサポートが終了しましたが、日本では「4月9日(水)」に終了とされました。「Windows Server 2003」と「Windows Server 2003 R2」のサポート終了日は「2015年7月14日(火)」ですが、日本では「7月15日(水)」に終了とされました(画面2)。
同じように、「Windows Vista」のサポート終了日は「2017年4月11日(火)」ですが、日本では「4月12日(水)」と案内されることがありました。Windows Vistaについては少し曖昧だったと記憶しています。
WindowsやOfficeは早くから多言語対応であり、世界中のユーザーに利用されています。しかし、これらのソフトウェアを開発する側にとっては、ユーザーの利用環境のタイムゾーンまで気にしていない(気が回らない)ようで、サポート終了日前後には注意喚起のために追加した機能がおかしな挙動を見せたりしました。
例えば、Windows XPはサポート終了1カ月前から「Windows XPのサポートは、2014年4月8日に終了します。」というポップアップメッセージを表示するようになりました(画面3)。また、Windows Vistaの日本におけるサポート終了日と誰もが思っていた4月12日(水)には、「Microsoft Security Essentials」は全く猶予なくエンジンを停止し、マルウェア対策ソフトウェアとして二度と機能しなくなりました(画面4)。
サポート終了日の翌日にMicrosoft Security Essentialsのサービス停止というのが想定された動作だったのでしょうが、日本では日付変更線の影響をもろに受けてしまったというわけです。
こういった珍しい(Microsoftの製品やサービスではよくある?)事象に遭遇できるのは、サポート終了のギリギリまで、あるいはサポート終了後も継続して利用しているユーザーに限られるわけですが、サポート期間中に後継バージョンに移行している良い子のみなさんには、全く影響のない、本当にどうでもよいことでした。
最後に、米国時間2020年9月2日から、Microsoftの「製品のライフサイクルの検索」ページが以下の新しいサイトに完全移行しました。サポートが終了した旧製品の情報も引き続き検索できます(画面5)。なお、以前の「製品のライフサイクルの検索」ページも今のところ利用可能ですが、将来的に削除される可能性があります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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