年2回リリースされる「Windows 10」の各バージョンには、さまざまな呼び名があります。これが混乱を招くことも……。間もなくリリースされるWindows 10の新バージョンでは、混乱を解消すべく、新たな変更が行われます。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
2015年7月に登場した「Windows 10」は、“最後のWindowsバージョン”とも呼ばれました。“Windows 10”という名称は最後かもしれません。しかし、最初のころには乱れもありましたが、年に2回(春ごろと秋ごろ)のペースで「機能更新プログラム」とも呼ばれる新バージョンがリリースされ続けています。
全てWindows 10なわけですが、バージョンを識別するために幾つかの表現が用いられます。よく使われるのは「フレンドリー名」「バージョン番号」「ビルド番号」「開発コード名」です(後出の表1にまとめています)。
フレンドリー名である「November Update」や「Creators Update」って、いつのどのバージョンだったっけ(どちらもサポートが終了した古いバージョンです)、「RS」て何番まであったっけと混乱することあります。例えば、ほとんどの一般ユーザーは「RS5」なんて呼び名は知りもしませんが、Microsoftやアプリケーションベンダーの公式ドキュメントやブログなどでは、当然のことのように「RS5」などの開発コード名が使われることがあります(画面1)。
Windows 10は2つ目のバージョン、フレンドリー名「Windows 10 November Update」から「Windows 10 バージョン1511」のように、暦年下2桁(YY)とビルド完成月の2桁(MM)を組み合わせた、「YYMM」というバージョン番号を持つようになりました。当初はよく分からないというか、今後、どうするんだというようなフレンドリー名でしたが、最近はリリース年とリリース月を表す名称(Windows 10 May 2020 Updateなど)になっています。
しかし、ビルド完成月(バージョン番号はこちらがベース)とリリース月(フレンドリー名はこちらがベース)のズレはユーザーを混乱させることがあります。また、日本では米国時間で月の最終日にリリースされた場合、日付変更線の関係で翌月1日のリリースになってしまい、さらに混乱することになります。
例えば、「Windows 10 April 2018 Update」はバージョン「1803」で、米国時間では2018年4月30日にリリースされましたが、日本では5月1日から利用可能になりました。「April(4月)」と「03(月)」と「5月(日本)」の異なる3つの月が、同じWindows 10のバージョンを示しているのです。
また、「Windows 10 May 2020 Update」は、過去のMicrosoft製品のバージョンとの混乱を避けるため、バージョン「2004」が採用されました。Windows 10と同じバージョン番号を持つ半期チャネル(SAC)のWindows Serverは「Windows Server, version YYMM」という名称で呼ばれます。もし、バージョン「2003」だったとしたら、既にサポートが終了した「Windows Server 2003」と新しい「Windows Server, version 2003」が存在することになり、いろいろと問題があったからです。
バージョン「2004」も過去に幾つか同じバージョン番号の製品がある都合の悪い数字でしたが、2020年下半期には都合の悪い番号がめじろ押しです。「Microsoft Office 2007」「Windows Server 2008」「BizTalk Server 2009」「Microsoft Office 2010」「Windows Small Business Server 2011」「Windows Server 2012」など、使えるバージョン番号が見当たりません。
バージョン番号をめぐる混乱は2020年にリリースされるバージョンだけで、2021年以降にリリースされるバージョンで問題になることはないでしょう。Officeアプリやサーバ製品の多くも今は同様のバージョン形式が採用され、多くのユーザーが慣れてきたところでもあります。
しかし、Microsoftは2020年6月、Windowsのバージョンに関するこうした混乱の解消を目的に、バージョン番号をこれまでのYYMM形式から、暦年下2桁(YY)と上半期(the first half of YYYY)、下半期(the second half of YYYY)のリリース時期を表す「H1」「H2」を組み合わせた「YYH1」「YYH2」に移行することを発表しました。間もなくリリースされる次のバージョンは、この変更が初めて適用された「Windows 10 バージョン20H2」になります。「20H2」は開発コード名ではなく、正式なWindows 10のバージョンを示します。
「設定」アプリの「システム」→「バージョン情報」(バージョン1909以前)や「詳細情報」(バージョン20H2)、「Windowsのバージョン情報」(winver.exe)は、YYMM形式が導入されたWindows 10 バージョン1511から、バージョン番号を表示するようになりました。また、PowerShellの「Get-ComputerInfo」コマンドレットは、Windows 10 バージョン1703から「WindowsVersion」にバージョン番号を出力するようになりました。
Windows 10 バージョン2004とバージョン20H2でこれらの情報を確認すると、面白いことが分かります。「設定」アプリや「Windowsのバージョン情報」は新しいバージョン「20H2」の表示に対応していますが、Get-ComputerInfoコマンドレットのWindowsVersionは依然としてYYMM形式のバージョン番号を出力し、新しいバージョン「20H2」の情報を提供しません。そして、バージョン「20H2」のWindowsVersionの値は「2009」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.