前回は、Windows ServerのWindows Updateの設定に関して、「Sconfigサーバー構成ユーティリティー」について触れました。今回は、その調査中に見つけたMicrosoft公式ドキュメントの内容の謎を追います。
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「Sconfigサーバー構成ユーティリティー」(Sconfig.cmd)は、Windows Serverの、主にGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を廃した最小インストールオプションである「Server Coreインストール」環境の初期設定と管理のために提供されている、CUI(キャラクタユーザーインタフェース)ツールです。
以下のMicrosoftの公式ドキュメントで説明されているように、Server Coreインストールだけでなく、デスクトップエクスペリエンス環境においても、サーバの一般的な設定の構成と管理にSconfig.cmdを使用できます。
Sconfig.cmdはWindows Serverの「%Windir%\System32」ディレクトリに存在し、本体は「言語(ja-jpなど)\Sconfig.vbs」です。「言語\Sconfig.vbs」はさらにWindows Update用のスクリプト「言語\WUA_SearchDownloadInstall.vbs」やレジストリ設定用のスクリプト「Scregedt.wsf」を呼び出します。
そんなSconfig.cmdについて調べていたとき、以下の公式ドキュメントの記述に驚きました。「Scregedit.exe」と「Sconfig.exe」は、「Windows Server 2016」で非推奨(Deprecated、廃止予定)となり、代替方法を使用するように勧めているのです(画面1)。
Scregedit.exeは非推奨となりました。Scregedit.exeに依存するスクリプトを使っている場合は、Reg.exeまたはWindows PowerShellのメソッドを使用するように調整してください。
Sconfig.exeは非推奨となりました。代わりにSconfig.cmdを使用してください。
筆者は少なくとも、製品版のWindows ServerでScrededit.exeやSconfig.exeをこれまで目にしたことがありません。Scrededit.exeに依存するスクリプトなど作成できるはずもありません。何の代わりにSconfig.cmdを使用すればいいのでしょう。
MicrosoftのWebサイトでScregedit.exeとSconfig.exeを検索してみると、以下の公式ドキュメントとWikiの記事が見つかりました。1つ目の公式ドキュメントはオリジナルの英語版は「scregedit.wsf」となっているので、翻訳ミスだと思います(画面2)。2つ目のWikiの記事はコミュニティーベースのもので、公式のものではありませんが、こちらもSconfig.cmdのスクリーンショットがあるので、単なる勘違いのようです。
筆者のPCに保存されていた、これまで書いた記事の元原稿も確認してみました。すると、2012年に当時開発中だった「Windows 8 Consumer Preview」と「Windows Server 8 Beta」の記事の中に、“「サーバー構成ツール」(Sconfig.cmd)”と書くべきところを、誤って“「サーバー構成ツール」(Sconfi.exe)”と書いていたことがありました。
記事が掲載されていたメディアのWebサイトは既に存在しないので、公開時にはどうなっていたか(訂正したかどうか)、今となっては分かりません。もし筆者の記事を見て「Sconfig.exe」だと勘違いした人がいたとしたら、ごめんなさい。今ここで訂正します。
一応、確認のため、Scregedit.wsfやSconfig.cmdが初登場したときのWindows Serverの環境を見ておきましょう。
Server Coreインストールが登場したのは「Windows Server 2008」ですが、Sconfig.cmdが初めて提供されたのは「Windows Server 2008 R2」でした。以下の画面3を見ていただくと分かるように、Sconfig.cmdやScregedit.wsfは、現在のWindows Serverと同じ場所に、ほとんど同じコードのものが配置されています。
当時のメニューは「13」までですが、後継バージョンでは「10)製品利用統計情報の設定」(Windows Server 2012/2012 R2では「CEIPによる製品の機能向上に協力」)と「11)Windows ライセンス認証」が加わり、「15」まであります。
他に現在との違いがあるとすれば、Windows Server 2008 R2の「フルインストール」オプションのGUI環境にはSconfig.cmdは含まれないことです。「Windows Server 2012」以降は「Server Coreインストール」と「GUI使用サーバー」(Windows Server 2016以降の「デスクトップエクスペリエンス」)に含まれ、両方で使用することができます。
以下の画面4は、Windows Server 2008で初登場したときのServer Coreインストールの環境です。Sconfig.cmdは存在しませんが、Scregedit.wsfは既に存在します。
もう1つ前のバージョンまでさかのぼり、「Windows Server 2003 R2」のインストール環境を見てみましょう。このバージョンには、Server Coreインストールオプションはありません。Scregedit.wsfもScregedit.exe(念のため)も存在しません(画面5)。つまり、Scregedit.wsfはWindows Server 2008で初めて提供されたということになります。
実は、Windows Server 2008 R2で初めて登場したSconfig.cmdよりも、少し前に、非常によく似たCUIツールが提供されました。それは、Hyper-Vベースで初めての無料のハイパーバイザー製品である「Hyper-V Server 2008」です。Hyper-V Server 2008にログオンすると、自動的に「Hyper-Vの構成」(Hvconfig.cmd)というCUIツールが表示されます(画面6)。
これは、Hvconfig.cmdをログオン時に自動開始したもので、メニュー構成は初めてのSconfig.cmdと全く同じ、作りもほとんど同じです。こちらがSconfig.cmdの元祖といっていいかもしれません。Sconfig.exeなんて、本当になかったのです。
なお、Hyper-V Server 2008 R2以降は、Sconfig.cmdに置き換えられており、ログオンするとSconfig.cmdが自動開始されます。そして、現在のプレビュー版(ビルド20270)で確認した限りの話ですが、次のWindows Server(LTSC:長期サービスチャネル)のメジャーバージョンでは、PowerShell化(Sconfig.cmdが「Invoke-Sconfig」コマンドレットを呼び出す形)されるようです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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