Microsoftは2021年2月17日(米国時間)、Windows 10の次期バージョン「21H1」に関する情報を公開し、Windows Insider ProgramのBetaチャネルに対して次期バージョンの機能更新プログラムをリリースしました。Windows 10 バージョン21H1は、2021年上半期中にリリースされる予定です。
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Windows 10の次期バージョンである「Windows 10 バージョン21H1」については、以下のWindows Blogでアナウンスされました。新機能は、「Windows Hello」におけるマルチカメラサポートと、セキュリティおよびリモートワーク関連パフォーマンス改善の3つしか挙げられておらず、現行バージョンに対する極めて小規模な機能更新となるようです。
Windows 10はバージョン「1903」以降、上半期に大規模な更新、下半期に小規模な更新(上半期リリースのバージョンに対して)という形でリリースされてきました。Windows 10 バージョン1909(OSビルド18363)はバージョン1903(OSビルド18362)に対する小規模な更新で、これら2バージョンの品質更新プログラムは共通です。同様に、Windows 10 バージョン20H2(OSビルド19042)はバージョン2004(OSビルド19041)に対する小規模な更新で、これら2バージョンの品質更新プログラムも共通です。
小規模な更新は、1つ前のバージョンに対しては「有効化パッケージ(Enablement Package)」版の機能更新プログラムとして、「Windows Update」や「Windows Server Update Services(WSUS)」経由で配布され、毎月の品質更新プログラムと同様のエクスペリエンス(短時間のダウンロード、短時間のインストールおよび再起動)でアップグレード可能です。両バージョンのハードウェア要件に変更がないため(Windows Driver Kitが共通)、ハードウェアの互換性問題の影響を受けることもなく、スムーズに新バージョンにアップグレードできるという利点があります。
上記ブログのアナウンスでは、Windows 10 バージョン21H1の機能更新プログラムは、Windows 10 バージョン2004および20H2を実行中のデバイスに対して、上半期としては初めて「有効化パッケージ」版で提供されることが明らかにされました。OSビルドはバージョン20H2の「19042」から「1」だけ増加して「19043」になります。
Betaチャネルに配布された機能更新プログラムのダウンロードされたファイルサイズを確認したところ、有効化パッケージ(KB5000736、KB番号は正式版では変更になる可能性があります)は23KBにも満たないサイズで、開始から30分もかからずにインストール(アップグレード)が完了しました(画面1、画面2)。
上記ブログのアナウンスからは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けてリモートワークが継続される中、大規模な更新のダウンロードで生産性を阻害してしまうことがないようにとの配慮が、小規模な更新と有効化パッケージによる配布という決定になったものと想像できます。別の理由として考えられるのは、2021年下半期に予定されているWindows Serverの次期バージョン「Windows Server 2022」と「Windows 10 Enterprise LTSC 2022」のタイミングに、Windows 10の大規模な更新をそろえたかったということがあるのかもしれません。
現在、企業のクライアントとして、Windows 10 バージョン2004または20H2を利用しているという場合は、少ないネットワーク帯域と短時間のインストールで次期バージョンを展開することが可能です。毎月の品質更新プログラムよりも圧倒的に小さなパッケージなので、リモートワーク中の社員のデバイスでもネットワーク帯域が問題になることはないでしょう。
しかし、下半期リリースのバージョンに対する「30カ月」という長いサポート期間を利用できるEnterprise(またはEducation)エディションを利用しており、長く活用したいという場合はWindows 10 バージョン21H1を展開すべきか、しないべきか、よく検討してください。Windows 10 バージョン21H1のサポート期間は全エディションで「18カ月」です。
現在、Windows 10 バージョン20H2を利用している場合は、Windows 10 バージョン21H1にアップグレードするとサポート期間が今よりも半年ほど短くなってしまいます。
現在、Windows 10 バージョン1909を利用している場合は、2021年下半期リリースの「Windows 10 バージョン21H2」をターゲットにするという選択も可能です。どちらのバージョンを利用している場合も、Windows 10 バージョン21H2は大規模な更新になるため、事前評価を含めた長期的な移行プロジェクトになります。
現在、Windows 10 バージョン1809を利用している場合は、間もなくサポートが終了します。早急に後継バージョンへの移行を進める必要があります。
以下の表1は、Windows 10の「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」のサポート終了日です。
バージョン(通称) | Home/Proのサポート終了日 | Enterprise/Educationのサポート終了日 |
---|---|---|
21H1(未定) | 2022年後半(18カ月) | 2022年後半(18カ月) |
20H2(October 2020 Update) | 2022年5月10日(18カ月) | 2023年5月9日(30カ月) |
2004(May 2020 Update) | 2021年12月14日(18カ月) | 2021年12月14日(18カ月) |
1909(November 2019 Update) | 2021年5月11日(18カ月) | 2022年5月10日(30カ月) |
1903(May 2019 Update) | 既にサポート終了 | 既にサポート終了 |
1809(October 2018 Update) | 既にサポート終了 | 2021年5月11日(30カ月) |
表1 Windows 10(半期チャネル)のサポート終了日 |
Windows 10の特定バージョンのターゲット化や長期固定化については、以下の連載記事で検証した「ターゲット機能更新プログラムを選択する」ポリシーを利用できます。
Windows 10のサービスモデルには前出の表1の半期チャネルとは別にもう一つ、「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」があります。これまで以下の3バージョンがリリースされ、10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)の長期サポートが提供されてきました。
Microsoftは2021年2月18日(米国時間)、LTSCバージョンのWindows 10 Enterpriseおよび「Microsoft Office」の次期バージョンを2021年下半期にリリースすることをアナウンスしました。このアナウンスの中で、Windows 10 Enterprise LTSCおよびOffice LTSCの次期バージョンのライフサイクルを、現行バージョンの10年(Office 2019は7年)から5年に短縮することを明らかにしています。LTSCバージョンへの移行を検討している場合は、このライフサイクルの短縮にも留意してください。
なお、これまでにリリースされたLTSCバージョンのライフサイクルに変更はありません。また、Windows 10 IoT Enterprise LTSCの次期バージョンについては変更がなく、引き続き10年のサポートが提供されます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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