Windows Server 2016以降のWindows ServerやWindows 10の「Internet Explorer(IE)」のバージョン情報が、以前と異なっていることに最近気が付きました。新しい「Internet Explorerのバージョン情報」は「Windowsのバージョン情報」(winver.exe)とタイトルバーを除き、全く同じものになっています。いつの間に変わったのでしょうか?
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2021年4月の「Windows Server 2016」向け累積更新プログラム(Bリリース)のリリースノートを見ていて、1つ気になる変更点を発見しました。それは、「Internet Explorer(IE)」に関連する3つのレジストリ値の既定値変更です。
Updates the default values for the following Internet Explorer registry keys:
svcKBFWLink = " " (string with one empty space)
svcKBNumber = " " (string with one empty space)
svcUpdateVersion = 11.0.1000
これらのレジストリ値はレジストリキー「HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Internet Explorer」に存在するもので、情報はIEの「ツール(歯車アイコン)」メニューにある「バージョン情報」から開くことができる「Internet Explorerのバージョン情報」(英語版では「About Internet Explorer」)の「更新バージョン」(英語版では「Update Versions」)項目に対応するものでした。
しかし、Windows Server 2016のIEで「Internet Explorerのバージョン情報」を開いてみると、そこには見慣れたバージョン情報はなく、「winver.exe」で表示される「Windowsのバージョン情報」と、タイトルバーの文字列とIEのアイコンがある以外は全く同じものでした。そして、確かに上記の3つのレジストリ値が空白または固定値に変更されていました(画面1、画面2)。
「Windows Server 2019」や「Windows 10」の幾つかのバージョンでも確認してみましたが、同様の状況です。しかも、他のバージョンは2021年3月時点で新しい「Internet Explorerのバージョン情報」と新しいレジストリ値になっていました。
いつ変わったのか? 毎月の累積更新プログラムや累積更新プログラムのプレビュー(プレビューは、Windows Server 2019およびWindows 10 バージョン1809以降にのみ提供)のリリースノートを過去にさかのぼってみてみても、膨大な文字情報から見つけ出すのは至難の業です。
Windows 10およびWindows Server 2016からはIEのセキュリティ問題を含め、Windowsに関する全てのセキュリティ問題の修正は「毎月第2火曜日」(日本ではその翌日)にリリースされる累積更新プログラムに含まれます。そのため、Windowsの最新の累積更新プログラムがインストールされていれば、IEも最新ということになります。つまり、「Internet Explorerのバージョン情報」を開いて確認する意味はありません。最後に従来のバージョン情報を見たのがいつだったのかも覚えていません。
IT管理者の中には、レジストリから「svcUpdateVersion」の値を取り出し、IEのバージョン管理を行っている人もいたかもしれませんが、固定値になってしまった以上、もう使い物にならない値です。同じレジストリキーにある「svcVersion」値(「Internet Explorerのバージョン情報」の「バージョン」)で代替するか、Windowsの詳細なビルド番号で代替してください。
Windowsの詳細なビルド番号は、レジストリキー「HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion」にある「CurrentBuild」と「UBR」を組み合わせた、「<CurrentBuildの値>.<UBRの値>」になります。ちなみに、「svcVersion」値は「11.<UBRの値>.<CurrentBuildの値>.0」になります。
従来のIEのバージョン情報はどうなったのかと調べていると、2020年6月9日に公開された以下の公式ドキュメントにたどり着きました(日本語ページは機械翻訳の影響で分かりにくいかもしれません)。
このドキュメントには、「Windowsのバージョン情報」(winver.exe)と同じものに変更され、従来の更新バージョン(svcUpdateVersion)は使用されなくなったと書いています。しかし、Windows 10 バージョン1809よりも新しいWindows 10でも従来の「Internet Explorerのバージョン情報」を目にした記憶があります。
そこで、Windows 10 バージョン1809以降の幾つかのバージョンで、新規インストール直後の状態を確認してみました。すると、上記ドキュメントの公開日より後の2020年10月にリリースされたWindows 10 バージョン20H2を含め、全て従来の「Internet Explorerのバージョン情報」を表示しました(画面3)。
次に、いつ置き換わったのか、追跡してみることにしました。リリースされてから日が浅いWindows 10 バージョン20H2で追跡してみます。2020年10月リリースなので、2020年10月、11月、12月、2021年1月、2月と順番にその月の累積更新プログラム(Bリリース)を前提となるその時点で最新のサービススタックの更新プログラムとともにインストールしていきました。
すると、12月の累積更新プログラム(KB4592438、OSビルド19042.685)のインストールが完了したところで、新しい「Internet Explorerのバージョン情報」に置き換わりました。ただし、レジストリ値は従来のままです(画面4)。
セキュリティ修正ではないため、もしかすると11月末にリリースされたオプションの累積更新プログラム(Cリリース、KB4586853、OSビルド19042.662)で置き換わった可能性もあります。リリースノートで確認したところ、以下の修正点を見つけました。Windows Server 2019、Windows 10 バージョン1809/1903/1909も同じタイミング(2020年11月のCリリース)で変更されています。
Internet Explorerの[バージョン情報]で標準のモダン ダイアログを使用するように変更します。(Updates Internet Explorer’s About dialog to use the standard modern dialog.)
この情報をヒントに(「standard modern dialog」をキーワードに)、Windows Server 2016ではいつ変更されたのか、リリースノートをさかのぼって確認していくと、2021年2月の累積更新プログラム(Bリリース)で変更されたことが分かりました。こちらは機械翻訳がめちゃくちゃなので、日本語リリースノートだけで調査したのではとても見つかりそうにありません。
更新Internet Explorerの[ユーザー情報]ダイアログボックスで、標準の最新のダイアログを使用します。(Updates Internet Explorer’s About dialog to use the standard modern dialog.)
その後、月例の累積更新プログラムをインストールして確認していったところ、3つのレジストリ値が変更されたのは、2021年2月の累積更新プログラム(KB4601319、OSビルド19042.804)によるものだと分かりました(画面5)。
セキュリティ修正ではないため、こちらも1月のオプションの累積更新プログラム(Cリリース、米国時間2月2日リリースのKB4598291、OSビルド19042.789)からかもしれないと思い、リリースノートを確認してみたところ、レジストリ値の変更について記載がありました。Windows Server 2019とWindows 10 バージョン1809/1903/1909はこのタイミングではなく、1カ月後の2021年2月のCリリースで変更されています。
次のレジストリ キーの既定値Internet Explorer更新します。(Updates the default values for the following Internet Explorer registry keys)
このように、情報提供が文字情報だけであり、かつ機械翻訳の品質もあって、更新プログラムのリリースノートからこの変更を読み取るのは至難の業です。
今回は、IEのバージョン情報のダイアログボックス変更なので重要ではないかもしれません。しかし、電話サポートなどでIEのバージョンを確認してもらおうとした場合、この変更を知らなければ話がかみ合わないことになると想像できます。
あるいは、ひっそりと行われたある変更が、意図しない悪影響を発生させた場合を考えてみてください。リリースノートで追跡できなければ、最悪、毎月の累積更新プログラムを順番にインストールしていく、あるいは順番にアンインストールして発生条件を絞り込むしかありません。
「Information about Internet Explorer versions」のページで説明しているじゃないかという人もいるでしょう。インターネットアーカイブサイト(https://archive.org/)で確認してみたところ、2020年9月20日にキャプチャーされた英語ページには「Changes to the About Internet Explorer dialog in Internet Explorer 11 on Windows 10 version 1809 and later」は存在せず、次に2020年12月12日にキャプチャーされたページ(ページのHTMLソースから分かる最終更新日時は2020-12-02 09:21 AM)には追加されていることを確認しました。おそらく、他のバージョンを含めて、この時期にIEのバージョン情報が置き換わったのでしょう。
ドキュメントを公開しても、その更新履歴が分からないこと、そして説明不足であることは問題です。このドキュメントの場合、Windows 10 バージョン1809以降が最初から新しいIEのバージョン情報になっていると読み取ってしまう人が大多数ではないでしょうか。
最後に、「Windows 8.1」および半期チャネル(SAC)のWindows 10におけるデスクトップアプリケーションとしてのIEサポートは、2022年6月15日に終了することが発表されました。
MSHTML(Trident)エンジンは引き続きサポートされ、IEのサポート終了後もIE(iexplore.exe)は削除されずに残りますが、デスクトップアプリケーションは完全に使用(起動)できなくなるそうです。新しい「Microsoft Edge」における「IEモード」のサポートは少なくとも2029年まで提供される予定です。現在、サポート期間中にある長期サービスチャネル(LTSC)のWindows 10とWindows Serverについては、引き続きOSのサポート期間中、IEがサポートされます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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