「個人向けCopilot」と「企業向けCopilot」の見分け方企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(30)

Microsoftは、Web用AIチャット機能「Microsoft Copilot」の一般提供を開始しました。これまでは「Bing Chat」や「Bing Chat Enterprise」でプレビュー提供されていましたが、一般提供に合わせて両方が“Copilot”に統一されました。他の機能やサービスも「Copilot」ブランドに統合されているので、まだ混乱している人も多いと思います。

» 2024年01月30日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

かつて「Bing Chat」と呼ばれていたWeb用AI機能が「Copilot」として一般提供開始

 これまで「Bing Chat(Bingチャット)」や「Bing Chat Enterprise(Bingチャットエンタープライズ)」と呼ばれていたWeb用AI(人工知能)チャット機能がパブリックプレビューを終え、2023年12月1日(米国時間)に「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)として一般提供が開始されました(画面1)。

画面1 画面1 画面左側が一般提供されたWeb用Copilot。画面右側を占有するのはプレビュー中のCopilot in Windows

 同時に、それまで「Windows Copilot」と呼ばれていた「Windows 11」のプレビュー機能は「Copilot in Windows」に、2023年11月1日(米国時間)に一般提供が開始された「Microsoft 365 Copilot」は「Copilot for Microsoft 365」に名称が変更されました。

 この一連の名称変更や一般提供開始、プレビューの混在は、利用者だけでなく、提供する側にも少し混乱を生んでいます。例えば、日本マイクロソフトの以下の発表では、Copilot in Windowsを含めて正式提供開始のように案内されていますが、Copilot in WindowsはWindows 11でも、「Windows 10」でもまだプレビュー段階にあり、利用できるユーザーは一部に限られています。

 2023年12月1日から一般提供が開始されたのは、プレビュー期間中にBing Chat/Bing Chat Enterpriseと呼ばれていた“Web用Copilot(Copilot for the Web)”であり、「Microsoft Edge」(以下、Edge)から「bing.com」または「copilot.microsoft.com」へのアクセスや、「Edgeサイドバー」の「Copilot」からアクセスすることで利用できます。「copilot.microsoft.com」は、WindowsおよびmacOSの「Google Chrome」からのアクセスもサポートし、対応ブラウザは今後追加される予定です。

個人向けCopilotと企業向けCopilotの機能と見た目の違い

 Bing ChatとBing Chat Enterpriseの違いについては、本連載第19回で取り上げました。しかし、両方が“Copilot”になったことで、どちらを利用しているのか、どう判断すればよいのでしょうか。

 個人向けCopilotは「Microsoftアカウント」でWindowsまたはCopilotにサインインすることで利用でき、企業向けCopilotは「Microsoft Entra ID」(旧称、Azure Active Directory、Azure AD)の「組織アカウント」でWindowsまたはCopilotにサインインすることで利用できます。

 両者は利用できるアカウントが違う他、企業向けCopilotでは商用データの保護が保証される点(入力データがAIの学習に再利用されない、入力データが境界を超えて外に出ないなど)が異なります。また、企業向けCopilotは、「Microsoft 365」の大企業向けプランで有料提供されているCopilot for Microsoft 365と連動することができるという点も異なります(表1)。

個人向け 企業向け
Copilot Copilot in Windows Copilot Copilot in Windows
旧称 Bing Chat Windows Copilot Bing Chat Enterprise Windows Copilot
GPT-4ベースの大規模言語モデル(LLM)
AIによるWeb検索、回答、コンテンツ生成、画像生成(DALL-E)
Windows上のアプリケーションや設定との連携
商用データの保護
Copilot for Microsoft 365との連携
表1 Copilot(一般提供)とCopilot in Windows(プレビュー)の現在の機能差。Copilot in WindowsはWindows 10への段階的なロールアウトも開始されたが、OSの設定やアプリケーションとの連動機能はサポートされない

 企業向けの「Edgeサイドバー」には「Bing Chat Enterprise」という表現がまだ残っているものの、UI(ユーザーインタフェース)に大きな違いはなく、区別が難しいかもしれません。しかし、企業向けCopilotのUIには商用データの保護を強調する「保護済み」の文字と盾のアイコンが表示されるので判断できると思います(画面2画面3)。Microsoft Entra IDでサインインしていることは、Microsoft Edgeアイコンに追加されるブリーフケースアイコンでも分かります。

画面2 画面2 Microsoft Entra IDでCopilotにサインインすると、商用データの保護を示す「保護済み」の文字と盾のアイコンが表示される
画面3 画面3 企業向けCopilotでは、入力データがAIの学習に再利用されないことが保証されている

 「保護済み」の文字と盾のアイコンは、プレビュー中のCopilot in Windowsにも適用されます(画面4)。

画面4 画面4 「保護済み」アイコンはMicrosoft Entra IDでWindowsにサインインしたときのCopilot in Windows(プレビュー)でも有効

商用データが保護されない意図しない利用に注意

 Microsoft Entra IDやハイブリッドID環境(オンプレミスのActive DirectoryとMicrosoft Entra IDのディレクトリ同期)で利用する場合は、CopilotとCopilot in Windowsのどちらも商用データの保護が保証されます。

 しかし、非ハイブリッドID環境のActive Directoryドメインアカウントにおいて、エンドユーザーが自分個人のMicrosoftアカウントで商用データが保護されない個人用Copilotにサインインして利用する場合は、データ流出のリスクは生じます。

 以下の連載記事では、プレビュー期間中のBing Chat/Bing Chat Enterpriseをネットワークレベルで利用できないようにする方法について説明しました。

 EdgeサイドバーのCopilotは、上記連載で解説した同じ方法で使用禁止にできました。しかし、新しい「copilot.microsoft.com」は、同じ方法では使用禁止にできませんでした。代替策として、「copilot.microsoft.com」をダミーのIPアドレス(ループバックアドレスである「127.0.0.1」など)に置き換えることで、アクセス不能にできました(画面5)。

画面5 画面5 ネットワークレベルでCopilotへのアクセスを完全に遮断する

 Copilot in Windowsのアクセス制御については、Homeエディション以外の場合、「ユーザーの構成\(ポリシー\)管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Copilot\Windows Copilot をオフにする」ポリシーを有効にすることで、使用禁止にできます(画面6)。

画面6 画面6 企業向けのCopilot in Windowsの無効化ポリシー

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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