IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第19回は「GPU」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。
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GPU(Graphics Processing Unit)は、PC内で画像処理などの特定のタスクを高速に処理することを目的とした専用の装置です。
主に画像処理やAI(人工知能)、科学計算などの分野で活用されています。CPU(Central Processing Unit)が一般的な演算や制御を担当するのに対し、GPUは大量のデータを並行して処理することが得意で、これにより高速な演算処理を実現しています。もともとは画像処理を目的に誕生しましたが、近年では機械学習などAI関連分野での活用が増加しており、生成AIのブームを追い風に、世界的に需要が高まっています。
GPUとCPUには以下のような違いがあります。
CPUは一般的な演算や制御を担当するために設計されていて、プログラムの実行やOS(オペレーティングシステム)の管理などPCにおける幅広いタスクを処理します。一方、GPUは画像処理などの特定のタスクを高速に処理するために設計されています。GPUは、大量のデータを並列処理して高速なグラフィックス描画や科学計算を実行します。
CPUは少数の高性能なコア(※1)を持ち、各コアは複雑なタスクを処理します。CPUのコアは、一般的に互いに連携してシーケンシャルに処理を行います。一方、GPUはCPUと比較して多数のコアを持ち、各コアは単純な演算を並列に処理します。GPUのコアは同時に複数のデータや命令を処理し、大規模なデータに対して高速な処理を実行します。
CPUは少量の高速なキャッシュメモリと主記憶(RAM)を使用し、一度に少量のデータを高速に処理することに最適化されています。一方、GPUは大容量のグラフィックスメモリ(VRAM)にアクセスします。また、GPUは、大量のデータを並列に処理するために、より多くのデータを高速にやりとりできる高帯域幅のメモリアクセスを必要とします。
GPUは、大きく分けてCPUに内蔵されたもの(内蔵型GPU)と、GPU単体で独立したもの(独立型GPU)の2つに分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
内蔵型GPUは、CPUにGPUが統合されており、一体型のプロセッサとして機能します。一般的な動画再生や軽度の画像処理などの基本的なグラフィックス処理に適していますが、高度なグラフィックス処理や3Dゲームなど要求の高いタスクに対しては性能が不足することがあります。また、独立型GPUと比較すると電力消費量や発熱量が相対的に少なくなります。
独立型GPUは、グラフィックスボードという拡張カードとしてPCに取り付けられます。独立型GPUは、高度な3Dグラフィックス処理や科学計算などの要求の高いタスクに対応するために設計されていることから、内蔵型GPUよりも高い性能を提供します。しかし、高性能のグラフィックス処理を行うため、大きな電力が必要です。内蔵型GPUと比較して消費電力量や発熱量が大きい傾向があるため、十分に冷却できる環境を用意することが大切です。
GPUは用途に応じて重視すべきポイントがあります。
機械学習やディープラーニングを実行する場合は、NVIDIA製のTensorコア(※2)やCUDAコア(※3)を搭載したGPUを使用します。
また、特に大規模な機械学習モデルのトレーニングを実行する場合はCUDAコアの数に注目します。CUDAコアは一般的な演算に使用されるため、より多くのCUDAコアを持つGPUは、複雑な計算をより迅速に実行できます。
なお、モデルのデータを効率的に読み込み処理するためには、メモリ帯域幅の広さも重要です。メモリ帯域幅が狭いGPUは、モデルのトレーニングや推論において十分なパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
動画編集では複雑な演算が頻繁に発生するため、より多くのCUDAコアと高いクロック速度を持つGPUを選択する必要があります。また、大容量のVRAMを搭載することで、複数の高解像度の動画を高速に処理できます。
ゲームにおける高いフレームレート(※4)や高解像度の描画を実現するためには、コアの多さや高いクロック数を持つモデルを選択します。ゲームでは大量の画像データを処理するため、十分なVRAM容量も必要です。また、レイトレーシングやDLSS(Deep Learning Super Sampling)などの技術をサポートしたゲームの場合、それらの機能を有するGPUを選択するとよいでしょう。
2024年現在、世界的な生成AIブームとAIの急速な発展に伴い、GPUの需要が急増し供給不足が発生しています。
GPUはAI分野以外にも、ビッグデータの処理やVR(仮想現実)といった流行している技術に貢献しています。今後のデジタル技術の発展にGPUの演算能力は不可欠である以上、GPUの需要は今後も増加し続けることが予想されます。
BFT インフラエンジニア
主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。
現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。
「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。
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