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ノーベル賞受賞で考える、技術の成果は誰のもの?経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(7)(2/2 ページ)

圧倒的技術成果を出したエンジニアが所属企業に求めるべきは、社長表彰、ボーナス、それとも……?

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「ボーナス」よりも「株式」!

 先ほどの国内系金融機関と外資系金融機関の比較は、1990年代のものだった。現在のビジネスシーンにも当てはまるが、少し古い面もある。

 金融界はその後どうなったかというと、稼げる(と思っている)トレーダーは、所属する金融機関と近い関係のヘッジファンドなどを設立して独立するケースが増えた。

 自分の技術(と運と営業力)を頼りに、自分でリスクを取る。その代わり、うまくいった場合には大きな報酬を得るのだ。

 この場合、所属金融機関は、ヘッジファンドとの取り引きでもうけられるし、ヘッジファンドに出資していれば、ヘッジファンドがもうかると利益を出せる。運用がうまくいくかいかないかのリスクの大きな部分は、ヘッジファンドに投資する外部の顧客と、ヘッジファンド自身が主に負うので、金融機関にとっても悪くない話だ。

 企業に所属するエンジニアや研究者の場合はどうだろうか。

 企業とエンジニアの双方にとって満足な結果をもたらす可能性のある仕組みとして、独自性のある技術にある程度のめどが立った段階で、その技術の権利を利用する子会社を作る方法がありそうだ。あるいは、社内で独立採算の部門を作る方法もあるだろう。

 子会社ないし独立採算の部門を製品のレベルに近いまとまりで作るか、技術の権利を売ることだけに特化して作るかは、ケースバイケースだろうが、技術の持ち主がリスクとインセンティブの両方を持って、うまく行った場合には、大きなリターンを得られる形がいい。

 仮に10%ぐらいでも、自分の技術のために作った子会社の株式を持っているなら、技術者は相当にやる気が出るだろう。もちろん、それで技術の進歩と実用化が進むなら、親会社にとっても悪い話ではない。

 エンジニアは、「専門分野の専門技術」だけでなく、「技術の経済価値を評価する技術」「関係者と良好な人間関係を結ぶ技術」「過不足なく厳しく交渉する技術」、さらに「子会社なり独立採算部署なりを経営する技術」を持たなければならない。

 もちろん、これらを一人で持たなくてもいいが、その場合には、自分の不足部分を補ってくれる信頼できる仲間が必要だ。

 研究や開発の仕事は、お金のためだけにするものではないと思う。だが、エンジニアもプロフェッショナルなビジネスパーソンである以上、自分の技術の経済価値、およびその実現に関心を持つべきだ。そのことが将来のより有用な研究・開発につながる面もあるはずだ。

「経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」」バックナンバー

筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。



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