失敗に一通り落ち込んでから、仮説を置いて考えました。「自分がアーキテクトとして十分に機能していれば、このプロジェクトは成功に導けただろうか」。ここをノーとしてしまうと話が進まないので、イエス。「ではアーキテクトとは何だろうか」。
分かりません。分からないのですが、何をするべきだったのかはだいたい分かります。何で自分ができなかったのかも分かる。何をするのか事前に決めることはできない種類のものです。その場にあって混乱の中で問題の形を捉え、まだ見えていないアーキテクチャを見つけ出さなければいけません。
あるシステムのアーキテクチャがあり、それを利用した業務のアーキテクチャがあり。システムを開発するプロセスもまた1つのアーキテクチャです。“ある機能を果たす構造”と定義付ければ、ありとあらゆるレイヤーでアーキテクチャは存在していて、それぞれの立っている位置からアーキテクチャに取り組む人のことをアーキテクトと呼ぶのでしょう。
考えが煮詰まってくるうちに、私はこの仕事そのものを面白く感じるようになりました。つまり、熱くなっていました。
次はロールプレイではなく、未熟であっても自分がアーキテクトとして問題に取り組める。同じ失敗はしないようにできる。そんなふうに闘志を燃やしていたのです。
今回は新しい部署ができて配属され、職種が「アーキテクト」となったけど、何をするのか誰も知らないのでありました…… しかし! というお話でした。よくあるとはいえ、本気で取り組めたので、なかなか得難い体験だったと思います。
先日小耳に挟んだところによると、その会社のアーキテクトチームは現在きちんと機能しているそうです。悔しいような、うれしいような(うれしいですよ!)
この経験から学んだことを3つ挙げましょう。
早いうちに職種変更とそれに伴う無力化を経験できたことは大きくて、このころ得た教訓は今でも強く生きています。こうしてみると、伝統的な大企業や官庁の「転勤を繰り返してさまざまなポストを経験させる」という人材育成法も重要なのかもなぁ…… と思ったり(それはまた別の話なのかもしれませんが)。
さて、そんなこんなで「仕事に燃えてきたぞ」となったのですが、リーマンショックなどいろいろありまして、大人の事情で転職をします。
勤め先の服務規定に書かれていた「同業他社への転職を禁じる」という条項を真面目に受け取り、システムインテグレーターは避けようと考え、大手のECサービス業者へ「エイヤ!」と転職を決めるのですが、本当に何から何まで文化が違ってびっくり仰天します。
その辺りは次の機会に。
松坂高嗣
一介の職業エンジニア。生まれた国ではDelphi(Object Pascal)を読み書きしていたが、もう6年間接していない。システムインテクグレータからEC業界を経験し、現在はWebサービスを運営するリブセンスのシステム開発部に在籍。
「料理の写真ばかりSNSに投稿する人は人格に問題を抱えている」という記事がバズっているのを見て戦々恐々としながらも食事写真を投稿し続ける、インフラ・基盤部門のマネージャ。趣味はSFとかミステリとか。
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