こうした環境を整備する同社では、優秀な人材を獲得できないこともなければ、ネガティブな理由で社員が辞めたこともないという。採用難や人材不足に悩む多くの従来型SIerとは対照的と言える。
「僕らのやり方をSIerの経営者の方々にお話しすると、共感して応援して下さる方がたくさんいらっしゃいます。そうした方々も従来型のSIに課題があり、『人を投入して手を動かすだけでは対応できなくなってきている』ことを理解されていらっしゃいます。ただ、実際に何千人も社員がいて、顧客がいて、組織として成り立ちビジネスが動いていると、頭で『変わろう』と考えてもなかなか動きにくいものです。またトップが言葉で言うだけでは変われないのも現実ではないでしょうか」
この点について、倉貫氏は同社の成功要因を「会社そのものをゼロから作ったからではないでしょうか。ビジネスモデルに合わせて人を集め、そこに最適化しているからこそできることでしょう。逆に言うと、僕らが急に業態を変えることもできないということです」と分析する。
だが、IoT、FinTechトレンドの本格化に伴い、業種を問わず「ITサービス」の重要性が高まっている中で、同社のような「ニーズの変化にスピーディに対応できる」アジャイル開発のアプローチは、ビジネスの差別化の一大要件となっている。中小含めて何万社とあるSIerの中で、新しいSIの姿を率先して切り開いてきたソニックガーデンのこれまでの実績も、時代のニーズに即したビジネスモデルの魅力や骨太さを裏付けていると言えるだろう。
倉貫氏は今後について、「今のメンバーたちと共に良いサービスを提供するという状態を、できるだけ長く続けていきたいと思っています」と語る。
「ゴールテープを切ったら成功というのではなく、今の幸せな状態を長く続けていく。それが会社としてやりたいことです。個人としては、納品のない受託開発を広めていきたいと思っています。プログラミングは、クリエイティブで価値の高い仕事です。地方にいても好きな仲間と一緒に仕事をすることができますし、家族と一緒にいる時間を増やすこともできます。また、一人のエンジニアとして“仕事において本当に大切なこと”を見据え、価値の高い仕事をしていこうという個人の目標は、自ずと会社の目標にもつながるはずです。ソニックガーデンのやり方がうまくいくことを実績をもって証明し続けることが、これからのSIerの1つの在り方や可能性を示すための手段でもあると考えています」
顧客と共に、どのような発展の軌跡を描くのか――今後もソニックガーデンの活躍から目が離せない。
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