コントロールとは本来、「出さないようにする」ことではありません。「出す」と「出さない」の両方をうまく扱うことです。
例えば、車がそうです。ブレーキの踏み方がどんなにうまくても、アクセルを踏まなければ前に進みません。アクセルとブレーキの両方をうまく使いこなしてこそ、車をコントロールしたといえるのです。
感情コントロールも同じです。怒りを感じたら「上手に怒る」「怒らなくてもいいことは怒らなくて済むようにする」、不安を感じたら「上手に不安になる」「不安にならなくてもいいことは不安にならずに済むようにする」――つまり「適切に感じ、適切に鎮める」ことが、感情コントロールなのです。
車を上手に乗りこなすためには、アクセルの踏み方、クラッチやギアの使い方、ブレーキの踏み方など、車が動くためのメカニズムを知る必用があります。同様に、感情をコントロールするためには、感情が起こるメカニズムを知っておくと良いでしょう。
ネガティブな感情を抱くメカニズムは、たった一言で表現できます。
「ネガティブな感情は、「理想」と「現実」のギャップによって生じる」です。
「理想」とは、それぞれの人が「大切なのは○○だ」「○○が正しい」「○○すべきだ」「○○ねばならない」のように考えている「価値観」のことです。物事を判断する「ルール」のようなものです。「価値観」には、「思い込み」「先入観」「固定観念」「こだわり」「偏見」なども含まれます。
目の前の「現実(状況)」が、描いている「理想」と合っていない。だから、ネガティブな感情を抱くわけです。
情報システムの不具合を修正するために「原因」を探すように、「イライラ」や「モヤモヤ」を解決するためにも、それらを作り出している原因を知る必要があります。
例えば、1990年前後以降に生まれた人は「デジタルネイティブ(物心が付くころにはPCやインターネットがある環境で育った世代)」と呼ばれます。業務上の連絡をメールなどでやりとりすることも多く、仕事を休む際にSNSで連絡してくる人もいます。
デジタルネイティブ世代に違和感を抱く世代もいます。なぜなら彼らには「大切な連絡は電話でするべきだ」という価値観があるからです。
「理想」と「現実」の間にギャップがある。だからマイナス感情が湧き、「仕事を休む連絡をSNSで送るなんて非常識だろう!」と感情的になってしまうのです。しかも感情は考える前に湧いてくるため、「自分には○○という価値観がある」と認識している人はほとんどいません。
もし仮に「大切な連絡は電話でするべき」という価値観がなければ、感情自体を抱かない(抱けない)のではないでしょうか。
つまり、それぞれの人が持っている価値観や、物事を判断するルールが、感情のオン/オフを切り替える「感情スイッチ」になっている。その結果、感情が生じているわけです。
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