本項目では、感情をコントロールするポイントを「1 気付く」→「2 受け入れる」→「3 鎮める」→「4 切り替える」→「5 活かす」の順に説明します。
感情をコントロールする最初のステップは、自分の中で生じている感情に「気付く」です。感情の変化に気付けば、コントロールする「きっかけ」ができます。
これまでの感情コントロールのように「グッとこらえる」「感じないようにする」方法を繰り返すと、感情に鈍感になってしまう場合があります。鈍感になっていると、感情的になっていることに気付けないため、感情をコントロールできません。
まずは、日常のささいな感情変化を観察し、感情に敏感になることから始めましょう。
次のステップは、感情を「受け入れる」です。
感情は、意思の力で「起こそう」として起きるものではありません。危険から生命を守るために、嫌な体験を繰り返さないように、過去の経験に基づいてどこからともなく湧いてくる「反応」です。「反応」とは、ある条件がそろえば起こる自然な現象です。青色のリトマス試験紙を酸性の液体につけると赤に反応するように、拒否しようがありません。
そこで、「拒否」から「受け入れる」に姿勢を変えましょう。
もちろん、「感情が生じるのは仕方がないのだから、ところかまわず当たり散らしていいんだ」と言いたいわけではありません。受け入れる姿勢とは、「感情が湧くのは自然なことだから、まぁ、仕方がないな」と、感情が生じることにOKを出すことです。
これまでの感情を「出さない」姿勢から、受け入れる姿勢に変えることで、感情に対するストレスを軽減できます。
感情は自然な反応だとはいえ、ネガティブな感情を引きずったままでは、大切な時間を嫌な気分で過ごすことになります。できれば、嫌な気分は早めに鎮めたいものです。
そこで、感情に気付き、受け入れたら、次は「どうしたら鎮まるか」を考え、有効な方法を幾つか試してみます(連載の次回以降で取り上げます)。
感情が静まると、気持ちを切り替えやすくなります。
前出のように、感情は「理想」と「現実」のギャップによって生じます。「自分にとって大切なのは○○なんだな」などの感情が生じた理由(感情スイッチ)が分かれば、「今まで○○すべきだと思っていたけれど、そんなに固執することはないかもしれないな」と物事を柔軟に捉え、気持ちを切り替えられるようになります。
同じ出来事でも、ポジティブに解釈する人もいればネガティブに解釈する人がいるように、「事実」「解釈」「出来事に対する意味付け」は人によってさまざまです。
起こってしまった出来事をなかったことにできませんが、解釈なら変えられます。
ネガティブな感情のまま出来事をポジティブに捉えるのは難しいけれど、「自分にとって大切なのは○○なんだ」という「感情スイッチ」に気付いた後ならば、出来事の解釈を変えることで、意味付けを変えられます。出来事の「意味」をポジティブに変えられれば、感情も前向きに変化させられます。
仕事にはさまざまなトラブルや人間関係のいざこざがあるものです。特にシステム開発の現場は、忙しく、いろいろな立場の人たちとの関わりもあるため、ポジティブな感情よりも、ネガティブな感情を抱くことも多いのではないでしょうか。
もし感情を自在に操れれば、「嫌な気分」で過ごす時間が減り、「良い気分」で過ごす時間が増えます。良い気分でいれば、仕事に前向きに取り組み、イキイキと働けるようになります。あなたがイキイキと働いていれば、職場の雰囲気がよくなり、仕事もうまく回るようになるでしょう。そう、「感情を制するものが仕事も制する」といえるのです。
本連載は毎週金曜日に掲載します。次回から「感情を自在に操るための5つのポイント」を1つずつ解説します。
竹内義晴著 すばる舎 1566円(税込み)
自分の「感情スイッチ」を探し、より実践しやすい感情スイッチの切り替え方を、[気づく→受け入れる→鎮める→切り替える→活かす]の五つのステップで紹介していく
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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