前回は、Windowsの詳細ブートオプションの一つ「前回正常起動時の構成(Last Known Good Configuration)」が、Windows Serverにはあっても、最近のWindowsクライアントでは既定で無効にされていて利用できないことを紹介しました。今回は、Windowsクライアントにはあって、Windows Serverにはない「システムの保護(システムの復元)」についてです。
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WindowsやWindows Serverは、システムの正常起動や正常稼働を阻む問題を解決するためのさまざまな復旧機能が標準搭載されています。「システムの保護(システムの復元)」はその一つです。
この機能は、一部のシステムファイルとレジストリのスナップショットを作成して「復元ポイント」として保存し、いざというときには復元ポイントから正常稼働時の状態へ復元を試みるためのものです。
WindowsのクライアントOSでは、C:ドライブに対する保護設定が既定で有効になっており(仮想マシンのゲストOSの場合、C:ドライブに対する保護設定は既定で無効化されるようです)、定期的なタイミング、ソフトウェアやデバイスドライバのインストール/更新のタイミング、ユーザーによる手動操作で復元ポイントが作成されます。
復元ポイントからのシステムの復元は、「システムのプロパティ」コントロールパネル(Sysdm.cpl)の「システムの保護」タブから実行できます(画面1)。Windowsが正常起動しない場合は、「Windows回復環境」(Windows Recovery Environment:WinRE)の「トラブルシューティング」オプションにある「システムの復元」(後出の画面3の左)から開始することもできます。
普段、仮想マシン環境を多用している場合、仮想環境ではこの機能が無効にされることもあって、ほとんど使用することはないと思います。「システムの保護」のような基本的な機能は、WindowsクライアントとWindows Serverで共通と思い込んでいる人(筆者を含めて)は多いと思いますが、実は物理/仮想に関係なく、Windows Serverの「システムのプロパティ」には「システムの保護」タブは存在しません(画面2)。
恥ずかしながら、筆者は最新の「Windows Server 2022」でそのことに気が付きました。そこで幾つかWindows Serverのバージョンをさかのぼってみましたが、以前から「システムの保護」タブは存在しませんでした(「Windows Server 2003」までさかのぼりました)。
そもそも、Windows Serverには「システムの保護」タブのUI(ユーザーインタフェース)だけでなく、Windowsクライアントと同等の「システムの復元」機能は搭載されていなかったのです。WinREの「トラブルシューティング」オプションにも、Windowsクライアントには存在する「システムの復元」のメニューが、Windows Serverには存在しません(画面3)。
本当は存在するのに、Windows Serverでは既定で非表示にされているのではないかと思い、ポリシー設定を探してみました。「コンピューターの構成\管理用テンプレート\システム\システムの復元」ポリシーには、「システムの復元」機能を有効/無効にできる2つのポリシーが用意されていました(画面4)。
このポリシーをどのように構成しても、Windows Serverの「システムのプロパティ」に「システムの保護」タブが出現することはありませんでした(これらのポリシーでWindowsクライアントから「システムの保護」タブを消すことはできませんが、設定ボタンをグレーアウトすることは可能です)。
Windows ServerにWindowsクライアントの「システムの保護(システムの復元)」に相当する機能がないわけではありません。オプションで有効化できるサーバ機能「Windows Serverバックアップ」を利用して、「システム状態」を含むバックアップを「単発バックアップウィザード」での手動実行、またはスケジュール設定すればよいのです。もちろん、サードパーティー製のバックアップツールでも同じようにできるはずです(画面5)。
「システムの復元」に相当する作業は、稼働中のWindows Serverで「Windows Serverバックアップ」を起動し、バックアップから「システム状態」を選択して回復操作を実行します。復元後に再起動すると、回復操作が完了します(画面6)。なお、WinREから「システム状態」のみの回復操作を実行することはできないようです。
Active Directoryのドメインコントローラーの場合、「システム状態」にはActive DirectoryのディレクトリデータベースやSYSVOL共有のコンテンツなどが含まれます。別の正常稼働しているドメインコントローラーとの同期の問題や、「ディレクトリサービス復元モード」を使用する必要があるなど、さまざまな追加手順や注意点があるので、単純に「システム状態」を復元することだけはやってはいけません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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