Windowsに標準搭載されていた、あのトラブルシューティングツールは今どこに?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(242)

実際に問題を解決できるかどうかは別として、Windowsにはさまざまなトラブルの原因を診断して問題解決を試みる「トラブルシューティングツール」(診断トラブルシューティングウィザード)が付属しています。以前は利用できていたのに、最近使おうとしたら以前のように利用できないことに気が付いた人はいるでしょうか。でも、消えてなくなったわけではありませんよ。

» 2023年11月15日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

1つ、また1つと消えていくトラブルシューティングツール

 Windowsの「トラブルシューティングツール」(msdt.exe)は、「診断トラブルシューティングウィザード」や「Microsoftサポート診断ツール」(Microsoft Support Diagnostic Tool、MSDT)とも呼ばれ、Windowsやネットワーク、デバイス、機能の問題を診断し、その自動回復を試みる、かなり古いバージョンのWindows(「Windows Vista」からだったと記憶しています)から標準搭載されているおなじみのツールです。

 Windowsに詳しい人なら、このツールが対処できる問題の多くは、このツールに頼ることなく自己解決できるでしょう。そんな人は、これまでほとんど、あるいは全く実行したことがないかもしれません。

 しかし、「Windows 11 バージョン22H2」を使用しているユーザーが眼前の問題解決のため、何らかのツールを実行したとき、戸惑うことになるかもしれません。以前のようにツールを実行しても、期待していた従来のツール(MSDT)ではなく、「問い合わせ」アプリが開くのです(画面1)。「問い合わせ」アプリによる対話型の問題解決までのステップはよくできており、それに従って問題解決を試みればよいのです。では、従来のツール(MSDT)はどこにいったのでしょうか。

画面1 画面1 Windowsに標準で組み込まれていたトラブルシューティングツールのほとんどが「問い合わせ」アプリへ

 筆者が確認した限り、2023年3月時点のOSビルドでは、全てのツールが従来のツール(MSDT)で実行できました(画面2)。2023年8月時点のOSビルドでは、「Windows Update」と「プログラム互換性のトラブルシューティングツール」の2つ以外は「問い合わせ」アプリが開くようになり、実行できるツールには「トラブルシューティングツールが移行され、このツールは廃止されます。詳細をご覧ください」というメッセージが追加されているのが確認できます(画面3)。

画面2 画面2 2023年初めは、Windows 11 バージョン22H2で全てのトラブルシューティングツールを実行できた(2023年3月時点のOSビルド)
画面3 画面3 まだ実行できるツールでは、ツールの廃止が案内されるように(2023年8月時点のOSビルド)

 そして、2023年9月時点のOSビルドでは、「プログラム互換性のトラブルシューティングツール」も「問い合わせ」アプリに移行されました。本執筆時点で残されたトラブルシューティングツールは「Windows Update」だけです(筆者のPCの場合)。

トラブルシューティングツールは非推奨になり、2025年までに完全に削除

 まだ実行できるツールで案内される「詳細をご覧ください」のリンクをクリックすると、以下のページが開きます(画面4)。

画面4 画面4 トラブルシューティングツールの削除までの予定を案内するページ。「受信トレイ」は「インボックス(組み込みの)」の誤訳

 このページの説明によると、トラブルシューティングツールは次のWindows 11リリース、つまり先日リリースされた「Windows 11 バージョン23H2」(Windows 11 2023 Update)」で非推奨となり、2024年中にWindows 11 バージョン23H2からレガシーなトラブルシューティングツールが削除され、2025年中にMSDTのプラットフォームの削除が予定されています。

 削除までのこのプロセスは、Windows 11 バージョン23H2(以降)を対象としたもので、Windows 11 バージョン22H2以前からはツールが削除されることはありません。

 ただし、Windows 11 バージョン22H2については、既にほとんどのツールが「問い合わせ」(Get Help)アプリにリダイレクトされるようになりました。Windows 11 バージョン21H2および「Windows 10」については、引き続きツールを使用できます。

 Windows 11 バージョン22H2での変更がどのタイミングで行われたのか、今となっては正確に追跡することは難しいですが、毎月の品質更新プログラムによって段階的に行われてきたと思われます。

Windows 11 バージョン22H2ではレガシーツールもまだ健在で実行可能

 Windows 11 バージョン22H2のユーザーには、既にほとんどのトラブルシューティングツールが利用できなくなっているように見えるかもしれませんが、「問い合わせ」アプリにリダイレクトされるようになっただけで、実は全てのツールが健在です。

 例えば、「Bluetooth」のトラブルシューティングツールを従来方式で実行するには、以下のコマンドを実行します(画面5)。

msdt -id BluetoothDiagnostic -skip yes -ep SystemSettings_Troubleshoot_L2 -elevated yes
画面5 画面5 「問い合わせ」アプリにリダイレクトされるようになった「Bluetooth」ツールを、従来方式でコマンドラインから直接実行

 このコマンドラインをどうやって見つけたかというと、目的のトラブルシューティングツールが利用できるデバイス(Windows 11 バージョン21H2以前を実行するデバイス)でツールを実行し、「タスクマネージャー」の「詳細」タブに「コマンドライン」列を表示させ、「msdt.exe」プロセスのコマンドラインを調べたのです(画面6)。

画面6 画面6 Windows 10のPCで「Bluetooth」ツールを実行し、「タスクマネージャー」でそのコマンドラインを調べる

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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