もし、Windows 11を実行するデバイスが、Homeエディションではなく、Pro以上のエディション(Pro、Enterprise、Educationなど)であるなら、企業向けに古くから用意されている「グループポリシー」設定を使用して、新バージョンがリリースされたその日に機能更新プログラムを受け取ることができます。今回は、企業ユーザー向けではなく、企業向けエディションを利用している個人ユーザー向けの内容になります。
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個人で「Windows 11 バージョン22H2」デバイスを使用している場合、最新の「Windows 11 バージョン23H2(Windows 11 2023 Update)」にアップデートする最も簡単で短時間で済む方法は、Windows Update経由で「Windows 11, version 23H2」が利用可能になるのを待つことです(画面1)。
Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムは、Windows 11 バージョン22H2に対しては小さな「有効化パッケージ形式」(Feature Update for Windows 11 23H2 via Enablement Package〈KB5027397〉)で提供されます。「C:\Windows\SoftwareDistribution\Download」フォルダ下に展開され、ダウンロード直後のサイズは100MB程度でした。実際にダウンロードされるパッケージのサイズはそれ以下の数十KBです。
Windows 11のバージョン22H2とバージョン23H2は、OSのコアが共通(NI_RELEASE)であり、少なくとも2023年10月のセキュリティ更新プログラムまでが適用されていれば、有効化パッケージを使用したWindows 11 バージョン23H2への切り替えの準備はできています。有効化パッケージは、無効化されている新機能を有効化し、バージョンとビルドをそれぞれ22H3と22631に切り替えます。ちなみに、Windows 11 バージョン22H2の2023年10月のセキュリティ更新プログラムではOSビルドが「22621.2428」に更新されます。そして、Windows 11 バージョン23H2のGA(一般提供)ビルドは「22631.2428」です。
一方、Windows 11 バージョン21H2以前のデバイスに対しては、大容量のダウンロードとアップグレードインストールが伴う、通常の機能更新プログラムとして提供されます(画面2)。
Windows 11 バージョン23H2は2023年10月31日(米国時間)にリリースされ、Microsoftにより段階的にロールアウトが始まったばかりです。サポートされているWindowsのバージョンを実行しており、Windows 11に対応したハードウェアのデバイスに対しては、Microsoftがブロード展開を開始して以降(通常、リリースから数カ月後)、有効化パッケージ(Windows 11 バージョン22H2に対して)または通常の機能更新プログラム(Windows 11 バージョン22H2以外に対して)が、Windows Update経由で自動配布されることになります。
ユーザーや組織の選択で先行的に導入することも可能ですが、個人ユーザーの場合は、ブロード展開を待つことをお勧めします。なぜなら、ブロード展開が始まるまでには、既に判明している、あるいはこれから判明する既知の問題の多くが解消されているはずだからです。
Windows 11 バージョン22H2のデバイスで、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムをいち早く導入したいという場合は、Windows Updateの「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチを「オン」にして、「更新プログラムのチェック」をクリックするようにと、以下の公式ブログでは説明されています。しかし、筆者の環境では「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチのオン/オフに関係なく、検出されました。
有効化パッケージを使用しない場合は、以下のWindows 11のダウンロードサイト(画面3)から「Windows 11インストールアシスタント」を実行するか、インストールメディア作成ツールでUSBドライブまたはDVDにインストールメディアを作成するか、ISOメディアをダウンロードして、アップグレードインストール(「ファイル、設定、アプリを保持する」を選択してインストール)を実行して、Windows 11 バージョン23H2に更新できます。
ただし、その場合、有効化パッケージの恩恵は得られません。大容量のダウンロード(日本語版ISOメディアの場合は6.15GB)を伴う上、アップグレードインストールはアプリケーションやハードウェアの互換性問題が発生するリスクもあります。また、「Windows 11インストールアシスタント」を使用した場合、通常数時間で終わるのに、半日以上経過しても進捗(しんちょく)度99%のまま進まないというトラブルに遭遇する場合もあるようです。
Microsoftの公式ブログの指示に従って、Windows UpdateでWindows 11 バージョン23H2をいち早く導入しようと操作した場合でも、Windows 11 バージョン23H2が利用可能な機能更新プログラムとして検出されない場合があります(画面4)。
前掲の公式ブログによると、アプリケーションの互換性問題など、デバイスが影響を受ける可能性があることを検出した場合、一時的にセーフガードホールドの対象となり、問題が解決されるまで機能更新プログラムは提供されないと記載されています。
筆者の環境では、同一構成の仮想マシン(OSのみで、OSは最新状態)でも、機能更新プログラムがすぐに利用可能になったものと、ならないものがあったので、セーフガードホールド以外の要因の可能性もあります。例えば、Microsoftが配布範囲を調整している「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチの誤動作などです。
前述したように、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムがWindows Updateで利用可能にならなかったとしても、手動でのアップグレードはお勧めしません。
もし、「Windows 10」またはWindows 11のPro以上のエディションを実行しているなら、企業向けの「グループポリシー」設定を利用することで、すぐにWindows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムを取得できます。この方法を利用すれば、Windows 11 バージョン22H2のデバイスには有効化パッケージが、それ以外のデバイスには通常の機能更新プログラムが自動インストールされます。
具体的には、「ローカルグループポリシーエディター」(Gpedit.msc)を開き、Windows 11の場合は「コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\Windows Updateから提供される更新プログラムの管理」、Windows 10の場合は「コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\Windows Update for Business」にある「プレビュー ビルドや機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」を有効にして、「機能更新プログラムがリリースされてからデバイスに提供されるまでに、更新を保留する日数を指定してください」に「0」日を指定します。
グループポリシーを強制適用する「Gpupdate」コマンドを実行するか、デバイスを再起動した後に、Windows Updateで「更新プログラムのチェック」をクリックすれば、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラム(Windows 11 バージョン22H2の場合は有効化パッケージ、それ以外は通常の機能更新プログラム)のダウンロードとインストールが行われます(画面5)。
なお、セーフガードホールドが原因でWindows 11 バージョン23H2が提供されていなかった場合でも、この方法では自動インストールが始まってしまうことに注意してください。また、インストールが完了したら、ポリシー設定を未構成に戻しておくのを忘れないようにしてください。
この方法は、以前は「Windows Update for Business」と呼ばれており(現在のWindows Update for Businessは「Microsoft Intune」の一部です)、今回のWindows 11 バージョン23H2に限らず、Windows 10のころから使えていた裏技です。残念ながら、グループポリシーをサポートしていないHomeエディションではこの方法は利用できません。Microsoftによるブロード展開が始まるまで、しばらくお待ちください。
なお、Windows 11 バージョン23H2が有効化パッケージ形式の機能更新プログラムでインストールされた場合、アンインストール可能な更新プログラムの一覧に「Feature Update for Windows 11 23H2 via Enablement Package(KB5027397)」が加わります。
Windows 11バージョン23H2にアップデートして何か問題が生じた場合は、この更新プログラムをアンインストールして再起動することで、簡単にバージョン22H2に戻すことができます(画面6)。ただし、有効化された新機能が再び無効化されるとは限らないため、完全には元の状態に戻らない可能性もあります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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