IT用語の基礎の基礎を、初学者や非エンジニアにも分かりやすく解説する本連載、第16回は「BI」です。ITエンジニアの学習、エンジニアと協業する業務部門の仲間や経営層への解説にご活用ください。
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BIは「Business Intelligence」の略称で、企業や組織が収集したデータを分析し、それに基づいて意思決定を行うための仕組みや手法のことです。
BIは、企業や組織が持つ膨大なデータを有効活用することで、ビジネスにおける意思決定や戦略的な計画の支援、競争力の向上に役立てます。BIを実践するためのツールを「BIツール」と呼び、データの加工や集計、レポーティングによる可視化をサポートします。
なお、一般的に「BIの導入」は「BIツールの導入」と同義に捉えられます。BIという概念は古くからありますが、近年はデジタル化が進み、さまざまな情報が電子データ化されたことで収集しやすくなった点や、消費者ニーズの多様化に対応するため、データに基づいた経営判断が求められている点などから注目されています。
一般的なBI導入の進め方を説明します。
BIを導入することで何を実現するのか、どのようにビジネスの目標達成や課題を解決するのか明確にします。
それには、意思決定者やユーザーなど、ステークホルダーをプロジェクトに関与させ、期待や要件を把握することが大切です。導入を推進する側のメンバーと利用者側のメンバーで推進チームを作ると、それぞれの役割を把握することができ、よりスムーズな導入が可能となります。
目的を達成する上で最適なツールを選定します。
機能面で目的に対してマッチしていることを前提として、操作性や既存システムとの相性、コスト、導入後のサポート体制などの確認も重要です。
必要なデータをリストアップ、収集し、ツールで利用できる状態を整えます。
具体的には、データの構造や関係性の定義、データウェアハウス(※1)の構築や、データの品質を向上させるためのデータクレンジング(※2)を実施します。これらのデータ整備が不十分だと正確な分析ができず、BIの効果を十分に発揮できなくなるため、注意が必要です。
準備したデータとツールを連携し、ダッシュボードやレポートを生成します。
BIツールはユーザーにとって扱いやすいことが組織に浸透させる重要な要素となるため、ユーザーが求める情報を簡単に表示できる状態を作ります。
ユーザーに対してツール利用のトレーニングを実施し、使い方やデータの活用方法を教育します。
ユーザーがツールを使いこなせるように継続してサポートすることで、ツールの活用を組織に浸透させます。BIの成功事例の共有など、ユーザーが具体的な活用方法をイメージできるようにフォローすることも効果的です。ツールを利用するメリットを感じられるよう、粘り強くユーザーに伴走することが大切です。
BI導入には以下のようなメリットと注意点があります。
3.1.1 データ駆動型の意思決定ができる
BIを導入することで、データに基づいた客観的な意思決定を促進できます。
主観や感情にとらわれず、信頼性の高いデータに基づいた、不確実性の少ない合理的な判断を下せます。
3.1.2 データの可視化によるユーザーの理解向上
データをグラフやチャートのような分かりやすい形式で可視化することで、複雑なデータを理解しやすくなります。
これにより、データを簡単に把握し、洞察を得やすくなります。また、データの可視化によって情報を分かりやすく伝えられるため、報告や情報共有の活性化が期待できます。
3.1.3 競争力の強化
データを分析して市場動向や将来の傾向を予測することで、市場の変化に迅速に適応し、競争力の維持や強化ができます。また、顧客データを分析することでニーズを理解し、製品やサービスを最適化することで顧客満足度の向上に寄与します。
BI導入において最も陥りやすい失敗は、そもそものビジネスの目標や組織におけるニーズが曖昧で、活用されなくなるケースです。
目標やニーズを組織全体で共有してBIへの期待値を上げることや、ツールの使い方を継続して教育することで、活用のハードルを下げることが大切です。また、分析に使用するデータの品質も成功における重要な要素です。データクレンジングなどが不十分で品質の低いデータを使用すると、信頼性の低い分析結果となり、誤った意思決定を助長してしまう可能性があるため注意が必要です。
総務省の調査によると、経営企画やマーケティングなど、いずれかの領域でデータを活用している企業は、大企業では9割、中小企業でも5割を超えています。
しかし、データ活用の実態は、単純なデータ閲覧から統計的な分析、AI(人工知能)を活用した予測などさまざまです。BIの導入は既に多くの企業で進められていますが、企業全体で効果的に活用している企業はまだまだ多いとはいえません。企業の競争力を高める上で、今後はBIの効果的な活用がより求められていくでしょう。
BFT インフラエンジニア
主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。
現在はこれまでのエンジニア経験を生かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。
「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。
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