自律型ビジネスに道を開くインテリジェントアプリケーションGartner Insights Pickup(382)

インテリジェントアプリケーションはデータから学習し、ユーザーの行動に適応し、パフォーマンスと成果を最適化するために自律的な意思決定ができる。本稿では、インテリジェントアプリケーションの5つの特徴を紹介する。

» 2024年12月20日 05時00分 公開
[Tad Travis, Gartner]

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 自律型ビジネスが変革の次の波を起こし、従業員向けアプリケーションの目的、形態、機能が一変しそうだ。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタル技術を利用して業務を革新し、顧客に価値を提供し、競争力を高める上で極めて重要だが、現在はAI(人工知能)が、自律型ビジネスへの進化を促進している。

 この新しいビジネススタイルは、自己学習するソフトウェアエージェントによって、部分的に統制され、大部分が運営される。これらのエージェントは、マシンカスタマー(顧客としてのマシン。「顧客bot」とも呼ばれる)が普及し、プログラマブル経済の中で機能する市場において、スマートな商品やサービスを提供する。

エンタープライズアプリケーションへの変革的影響

 この傾向は、特にCRM、デジタルワークプレース、ERPアプリケーションに関連している。これらのアプリケーションでは、25年前のSaaSアプリケーションの出現以来見られなかった、目的、形態、機能の変革が起こっている。アプリケーションは、単にプロセス、ワークフロー、タスクを容易にするツールから、エンドユーザーに代わって動作するインテリジェントなシステムへと進化しつつある。

 生成AIはこの変革の主なけん引役だが、未来を形作る唯一の技術ではない。他にも幾つかの動きがこの進展に貢献しており、より統合されたシームレスなユーザーエクスペリエンス(UX)を生み出している。

 例えば、エンドユーザーが、アプリストアで入手可能な消費者向けアプリと同等の使いやすさをアプリケーションに期待するようになり、そのためにより直感的なインタフェースへの需要が高まっている。

 同時に、アプリケーションと高度な分析ツールの間に従来あった境界線が曖昧になり、両者は区別がつかなくなっている。これは、エンドユーザーに代わってタスクを実行し、多くの作業プロセスを自動化するようになってきたアルゴリズムやエージェント、botによってさらに促進されている。

 また、アプリケーションの使用状況やアプリケーション内で実行される作業に関するメタデータが、企業にとって従来のトランザクションデータと同様に極めて重要となり、より深い洞察や、より情報に基づいた意思決定を可能にしている。

 最後に、アプリケーションはモノリシックな構造から、よりモジュール化され、適応性の高いシステムへと進化しており、より高い柔軟性とスケーラビリティを実現している。

 これらの動きが相まって、エンタープライズアプリケーションの状況を大きく変えつつある。

従業員の仕事とアプリケーションの展開への影響

 エンタープライズアプリケーションを巡る状況の進展に伴い、従業員が行う仕事の性質は恒久的に変化し、ひいては企業が従業員向けにデプロイ(展開)するアプリケーションのタイプも大きく変わると予想される。

 そのため、エンタープライズアプリケーションのリーダーは、アプリケーションの能力と、アプリケーションが実行する作業の種類についても、マクロレベルの長期的な視点を持たなければならない。これまでビジネスプロセスの実行を支援してきたアプリケーションは、従業員の代わりに仕事をするインテリジェントアプリケーションに変わっていくだろう。

インテリジェントアプリケーションとその特徴

 インテリジェントアプリケーションは、学習した適応力を通じて適切かつ自律的に動作し、自らの機能を強化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、意思決定能力を高める。データから学習し、ユーザーの行動に適応し、パフォーマンスと成果を最適化するために自律的な意思決定ができる。以下の5つの特徴によって、他のアプリケーションと区別される。

・アダプティブエクスペリエンス

 アダプティブエクスペリエンスとは、「動的なカスタムメイドのユーザーインタラクションを実現する」という理念とデザイン機能に基づくユーザーエクスペリエンスを指す。アダプティブエクスペリエンスの目標は、デジタル摩擦を減らし、プロセスのステップの実行やデータの取得、入力を、ユーザーがより簡単にできるようにすることにある。アダプティブエクスペリエンスは、静的な最小公倍数的インタフェースを提供するのではなく、個々のエンドユーザーが特定のビジネスモーメントでどのように作業する必要があるかに合わせて、インタフェースを調整する。これにより、コンテキストに合ったプロアクティブな合成ユーザーインタフェースが実現される。

・組み込み型インテリジェンス

 組み込み型インテリジェンスは意思決定を補強し、自動化することで、通常専用アプリケーションで個別に行われる分析や発見の作業を代替する。幅広い意思決定ニーズをカバーし、ニーズの内容は個々のユースケースにおいて、意思決定の支援に必要な洞察の度合いと、意思決定を代行する範囲によって決まる。このプロセスの統合により、より効率的なワークフローが構築され、意思決定の質が向上し、ユーザーによるアプリケーションの受け入れが促進される。

・自律的オーケストレーション

 自律的オーケストレーションには、より高度なAIのプロセス標準化および自動化を、ビジネスプロセス――特に、非構造化データを含むプロセスに導入するための機能と設計思想が含まれる。これにより業務効率とメタデータ収集が強化される。ローコードプラットフォームからRPA(ロボティックプロセスオートメーション)、従来の統合プラットフォーム、AIエージェントまで、多様な技術を包含するビジネスオーケストレーションを可能にする。

・コネクテッドデータ

 コネクテッドデータは、組織全体のデータを利用、管理するための高度な統合アプローチだ。このアプローチにより、メタデータや継続的アナリティクス、堅牢(けんろう)な統合技術を活用し、強固で効率的なデータエコシステムを構築する。このアプローチは自律的オーケストレーション、組み込み型インテリジェンス、アダプティブエクスペリエンスの活用を後押しする。

・コンポーザブルアーキテクチャ

 コンポーザブルアーキテクチャは、モジュール化された交換可能なサービスからシステムを構築することに重点を置くソフトウェア設計アプローチだ。このアーキテクチャにより、柔軟性やスケーラビリティ、適応性が向上し、企業は変化するビジネスニーズや技術進歩に迅速に対応できる。このアーキテクチャの主な原則には、モジュール性、再利用性、相互運用性などがある。これらは、より応答性とレジリエンス(回復力)の高いアプリケーション環境を促進する。

出典:Intelligent Applications Pave the Way for Autonomous Business(Gartner)

※この記事は、2024年10月に執筆されたものです。

筆者 Tad Travis

VP Analyst


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