エンジニアに高い学歴は必要か:経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(17)(3/3 ページ)
エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は社会人になってから大学院に通学したり、資格をたくさん取得したりするのはキャリアアップに有効か、また転職時に採用担当者からどのように見られるのか、などを「辛口」に解説する。
学歴ロンダリングも無効
ついでに申し上げると、一流とされる大学の大学院に入って最終学歴を一流大学院卒に変える、通称「学歴ロンダリング」も転職活動へのプラス効果はほとんどない。
企業の人事担当者や学歴に敏感な人々が見るのは、主として学部で入学した大学の名前と学部・学科だ。一般入試を受けているか、推薦やAO入試かを見られる場合もある。
つまり国内のビジネス系の大学院卒の学歴で転職を有利に進めようとするのは、無駄な努力なのだ。
社会人MBAは、社内的にも「熱意は買うが、その熱意を仕事に向けてくれたらいいのに」と評価される場合が少なくないだろう。まして、大学院通いのために仕事を早く切り上げるなどで同僚に影響が及ぶようなことがあった場合には、明確に評価が下がる。
なお海外の一流校のMBAは、30歳代の前半くらいまでであり、かつ金融業界などにいれば、評価の上がる学歴になることがある。しかし、30代後半になるとさしたる価値はない。せいぜい英検1級と等価ぐらいだ。仕事そのもので人材価値を持っていない場合は、年齢が上がることによる学歴価値の下落スピードは速い。
ビジネスパーソンの人材価値は、基本的に「仕事ができる人」「仕事で実績のある人」が高い。資格や学歴の効果には限界がある。
しかし、勉強は有効だ
MBAといった「肩書」に大きな価値はないが、企業に勤めながらも勉強をすることは良いことだ。ビジネスパーソンとしての人材価値の向上にもつながる。
そこで、勉強で「するべきこと」を二つ指摘しておこう。
一つは、仕事の役に立ち、興味を持った分野について書かれている専門の論文を読む方法を身に付けることだ。
先端の研究論文の多くは、ほとんどが英文だがインターネットで読める。日本語で書かれたテキストで基礎を作り、専門分野の雑誌などを手掛かりに研究者に当たりを付けてネットで論文を検索すると、大学院レベルの知識に十分アクセスできる。筆者もファンドマネジャーの仕事をしていたときは、学界の専門分野の雑誌で論文を読み、それが仕事の役に立った。
もう一つは、基礎学力、具体的には高校レベルの学力強化だ。特に「国語」「数学」「英語」の3科目はあらためて強化しておきたい。
実は、世間で「できる」「頭がいい」と言われている人が、具体的に「できて」いるのは、高校レベルの知識を「使いこなす」ことなのだ。実は、自在に使いこなせる力がある人は、難関大学の入試の合格ラインの遙かに上にいるのだ。
ビジネスパーソンとしての地力を強化したければ、高校時代に使った参考書などを復習することをお勧めしたい。
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筆者プロフィール
山崎 元
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。
2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。
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