正男 「デコメが添付ファイルだと分かったところで、次は添付ファイルの説明です」
芽衣子 「だんだんややこしくなってくるのね」
芽衣子さんはもう飽き気味ですが、いったん乗り掛かった船なのでゴールに着くまでは降りられません。
正男 「添付ファイルも実はテキストです」
芽衣子 「なんですと!?」
正男 「メールはテキストしか送信できないから無理やりテキストに変換してるんだな。これが」
芽衣子 「どういうこと?」
正男さんは、図を描きながら説明します。
正男 「こういうふうにデータをいったんテキストに変換して、メール本文として送るんですよ」
芽衣子 「そのまま送っちゃえばいいのに、ややこしいのね」
正男 「もともと本文以外のデータを貼り付けるなんてことは考えてなかったんだろ。FTPもあるしな」
芽衣子 「確かに仕事で大きいファイルを送るにはメールじゃなくてFTPを使うことが多いわ」
もともと文章以外を送ろうなんて考えてなかったんなら仕方ないわね、と納得の芽衣子さんです。
正男 「もちろんここから添付ファイルですよ。というように相手にも教える必要がありますし、受け取る相手のメーラーの方も添付ファイルに対応している必要があります」
成沢 「さすがにいまどき対応してない人はいないと思うけどな」
芽衣子 「ホントだ。本文があって、区切りがあって、暗号が並んでるわ」
正男 「一応アルファベットや記号なので読めるようにはなってると思いますが」
芽衣子 「読めるってレベルじゃないけどね……」
一通り説明が終わって休憩しようとした芽衣子さんに正男さんが勇気を持って呼び掛けます。
正男 「前回お話しさせてもらった後、私のところにいろんな人から大量のメールが届いてて……。それはもう止めてほしい……」
芽衣子さんは一瞬硬直します。会社から送ったわけじゃないのにどうして自分だとバレたのか不思議でなりません。
芽衣子 「ちょっといろいろ実験してみたかっただけ……。そんな落ち込まなくてもいいじゃない。……いや、私はメールなんて送ってない。潔白よ。いろいろ嫌われる要素があるんじゃないの? そこを直せばいいんじゃない?」
悲しそうな正男さんに優しく声を掛ける芽衣子さんです。これではどちらが悪いのか分かりませんが、気を取り直して正男さんは説明を始めます。
正男 「やはり…、芽衣子さんは自分のプロバイダからメールを出していたようですが……。実はSMTPサーバはもともと誰でもメールを送信することができるようになっていますので、世界中のSMTPサーバを利用して誰でも怪しげなメールをたくさん送信できてしまうわけです」
芽衣子 「つまり、ほかのSMTPサーバを使っていれば、誰が出したかバレずにメールが送れちゃうってわけね……。いや、私は出さないけど」
ほかの会社のSMTPサーバを使ってメールを出せばバレなかったのか……。芽衣子さんはちょっと悔しそうな顔を見せます。
成沢 「ちゃんと調べれば世界中のどっからでも誰が送ってきたかは分かるんだけどな」 正男 「特定したからといって別にこちらが得することはあまりないですから……、そんな手間の掛かる犯人捜しよりも最近ではSMTPサーバから自由にメールを送信させないようにするための仕組みがいろいろと考えられています」
成沢 「会社のサーバから迷惑メールが送られてきたってことになると会社の評判もガタ落ちだしな。防衛するのは当たり前だ」
成沢さんは管理者なので会社の資源が他人に使われることには敏感です。
正男 「よく使われているのがSMTP AuthとPOP before SMTP(IMAP before SMTP)と呼ばれる仕組みです」
芽衣子 「また横文字ね」
横文字嫌いの芽衣子さんは頭が痛くなってきました。
正男 「SMTP Authはその名のとおりSMTPサーバで認証を行います」
成沢 「ユーザー名とパスワードが合ってないとメール送れないってことだな」
芽衣子 「送信パスワードね。名前に比べるとやってることは簡単だわ」
芽衣子さんも納得です。
正男 「そしてPOP before SMTPですが、これはメールを受信した後は数分間だけメールを送信できるという仕組みです」
成沢 「受信でパスワードを使うから、その認証をクリアした人だけメールが出せるわけだな」
芽衣子 「メール受信するにはパスワードがいるんだっけ?」
芽衣子さんはメールにパスワードがあるのは覚えていますがどこで使うのかはよく分かりません。
正男 「ほかにももちろん社内だけで使うのであれば、ローカルIPアドレスからしか使わせないとか、IPアドレスによって使わせない、とかすることもできますね」
成沢 「うちの会社は似たようなことさせてるな」
正男 「プロバイダによってはOP25Bを採用しているところもありますね」
成沢 「自分のプロバイダ以外のSMTPサーバを使わせないという仕組みだな」
正男 「意図的なスパムメールを止めるのが主目的ですが、ウイルスなどによって知らずに外部のSMTPサーバに接続してメールを送ってしまっている人がいるので、それを防止することもできます」
成沢 「普通の人はあんまりプロバイダ以外のメールサーバを使ってメールを送る人はいないからな」
正男さんと成沢さんの会話が難しくなって、芽衣子さんにはまったく理解できないので脱出しようとしましたが、成沢さんにつかまってしまいます。
成沢 「お前ちゃんと聞いとけよ」
芽衣子 「もう、難し過ぎて訳が分かんないのよ」
いいかげんな芽衣子さんに成沢さんもキレてしまいます。
成沢 「お前、俺のところにも変なメール送ってきて、お前会社によっちゃクビだからな」
芽衣子 「あ、あれはちょっとした冗談……。いや、私じゃないし」
ちっとも反省の色が見られない芽衣子さんでした。
今回のおさらい
メールが送られ続けているのですが
アドレスだけ違って送信SMTPサーバは芽衣子さんの家で使っているプロバイダです。
「基本的にメールはテキストしか送れないようになっています」
※SMTPでは7ビット文字列以外をやりとりすることはできないことになっています。
「メールはテキストしか送信できないから無理やりテキストに変換してるんだなこれが」
※Base64やUuencodeという規則に従って符号化(つまりテキストに変換)されます。最近はBase64で変換されることが多いようです。
「たまにクライアントが送ってくるわ。返信するときになんかこっちの文字がいつもと違うようになってイヤなのよ」
※どうやら返信は送信メールと同じ形式で送るようになっているようです。
「もちろんここから添付ファイルですよ。というように相手にも教える必要がありますし、受け取るメーラーの方も対応している必要があります」
※昔のMacのメールソフトはBinHexという形で変換されていることが多く、Windowsのメーラーが対応していないことが多くてやりとりが大変面倒でした。
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