なお米国全体では(各所で報じられている通り)シェール・ガスがブームで、天然ガスに対する期待が高まっている(それも、主力のエネルギー源として)。石炭を燃やすのに比べれば、天然ガスを燃やす方がよほど「地球にはやさしい」のだろうが、それでもCO2が出ることに変わりはない。また一方で、広大な土地をつぶして作るソーラーファームは「ちっとも地球にやさしくないではないか」といった批判の声もあるようだ。
上記の例文の中に「デューク・エナジーが州の規制当局に対し、クリーンな電力を大口顧客に販売していいかどうかを正式に尋ねた(=販売について正式な承認を求めた)」とある。この大口顧客の代表がアップルであり、具体的には同社のデータセンターから自動車で15分ほどの所にある2番目のソーラーファームで作った電力を利用するのに、デューク・エナジーの送電線網("power grid")を通して送らなければならないが、これを実現するには現在規制されている(公定価格より)高い料金の電力を売買できるようにルールを変更しないといけない、とある。
ちょっとややこしいが、デューク・エナジーの動きの背景にそうした事情があり、そのきっかけを作ったのがアップルだった。記者のKatie Fehrenbacherは、アップルのこの「小さな一手」が大きな変化につながる可能性がある、などと書いている。
その他この記事の中には、例えばデータセンターに隣接する1つ目のソーラーファームは「敷地面積が100エーカーで、そこに5万枚を超えるサンパワー(SunPower)製のソーラーパネルが設置されている」「パネルには、日差しの向きの変化に合わせて角度を自動調整するための太陽光追跡装置が付けられている(ただし二軸式よりコストの安い一軸式のもの)」「パネルの下には芝が植えられているが、このメンテナンスには普通の芝刈り機に加え、羊(ひつじ)に草を食べさせるという方法も採られている」などとある。
羊に芝を食べさせる方が、芝刈り機を使うよりも小回りが効くらしい。また、「羊の代わりに山羊(ヤギ)を使っている例も他にあるが、ヤギだと配線やパネルのパーツを食いちぎってしまう可能性もある」とも書かれている。
なお、米国では2010年時点ですでに、データセンターの電力消費量が全体の約2%に達していたという。さまざまなクリーンエネルギー関連の取り組みに推定10億ドルも投資をしてきているグーグルも、「自社のデータセンターのエネルギー源として大規模なソーラーファームを建設・運用した例はまだない」「フェイスブックがアイオワ州に建設を予定しているデータセンターでは全ての電力を風力発電で賄うことになっている」といった記述も見られる。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/renewable_energy.html
ソフトバンクと三井物産、福岡・熊本にメガソーラー
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO62840460Z11C13A1LX0000/
ソフトバンクとBloom Energyが、日本でクリーン・安定的・分散型の電力供給を行う合弁会社を設立
http://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2013/20130718_01/
Duke Energy(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Duke_Energy
James Buchanan Duke(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/James_B._Duke
上記の背景を踏まえて、冒頭の英文を少しずつ区切りながら読み解いてみよう。
[1] Last week a utility in North Carolina announced something /
[2] (that is) seemingly mundane on the surface, /
[3] but it was a transcendent moment for those /
[4] that have been following the clean energy sector. /
[5] Duke Energy, /
[6] which generates the bulk of its energy in the state from dirty and aging coal and nuclear plants, /
[7] officially asked the state’s regulators /
[8] if it could sell clean power (from new sources like solar and wind farms) to large energy customers that were willing to buy it /
[9] ― and yes, shockingly enough, /
[10] thanks to restrictive regulations and an electricity industry that moves at a glacial pace, /
[11] this previously wasn’t allowed.
[12] For years Duke Energy largely ignored clean energy in North Carolina (with a few exceptions),/
[13] mostly with the explanation /
[14] that customers wouldn’t pay a premium for it. /
[15] But turns out when those large energy customers are internet companies/
[16] ― with global influential consumer brands, huge data centers that suck up lots of energy and large margins that given them leeway to experiment ― /
[17] they can be pretty persuasive.
それぞれ、以下のように読み解ける。
[1] 先週ノースカロライナ(州)のある電力会社が(あること)を発表した
[2] (それは)表面的にはつまらないものに思えるもの
[3] しかし[4の]者にとっては、大きな変化の瞬間だった
[4] クリーンエネルギー分野の動向を追いかけてきた者
[5] デューク・エナジーが、
[6] 同州内で作っている電力のほとんどは、ダーティな(=クリーンではない)石炭式火力発電所や、建設から時間の経った原子力発電所で作られたもの
[7] 州の規制当局に正式に尋ねた(正式に承認を求めた)
[8] (太陽光や風力など新しい電力源から作られた)クリーンな電力を、それを購入してもいいという大口顧客に販売することが可能かどうかを
[9] そしてこれは、とてもびっくりすることだが
[10] 制限の厳しいルールや、氷山のようにゆっくりとしか動かない電力業界のせいで
[11] これまで認められていなかった(ことだった)
[12] デューク・エナジーは長い間、ノースカロライナ州内でクリーンエネルギーをほとんど無視してきた(ただしいくつかの例外もあったが)
[13] 多くの場合は、[14]と理由を説明しながら
[14] 顧客はそれ(=クリーンエネルギー)に対して割増料金を支払わないだろう、と
[15] しかし、そんな(=割増料金は支払わないとされた)大口顧客がインターネット企業各社である場合、[17]であることが明らかになった
[16] 世界的な影響力を持つコンシューマブランドを持ち、大量のエネルギーを消費する巨大なデータセンターを保有し、そして実験的な試みを行える余裕をもたらす大きな利益マージンを手にしている(インターネット企業)
[17] クリーンな電力の販売はとても大きな説得力を持つものとなり得る
では最後に、もう一度英文を読み直してみよう。
Last week a utility in North Carolina announced something seemingly mundane on the surface, but it was a transcendent moment for those that have been following the clean energy sector. Duke Energy, which generates the bulk of its energy in the state from dirty and aging coal and nuclear plants, officially asked the state’s regulators if it could sell clean power (from new sources like solar and wind farms) to large energy customers that were willing to buy it ― and yes, shockingly enough, thanks to restrictive regulations and an electricity industry that moves at a glacial pace, this previously wasn’t allowed.
For years Duke Energy largely ignored clean energy in North Carolina (with a few exceptions), mostly with the explanation that customers wouldn’t pay a premium for it. But turns out when those large energy customers are internet companies ― with global influential consumer brands, huge data centers that suck up lots of energy and large margins that given them leeway to experiment ― they can be pretty persuasive.
確か、「形容詞句」とか何とか学校で習った覚えがあるが、英語の文章を読みづらいものにする要素の1つに、主語や述語などにその意味を補う語句をやたらと挿入する、というのがある。今回引用した例文はその典型で、分解作業をしていても、どこで区切るのが適当か判断に迷うところも多かった。
例えば、
Duke Energy, 【which generates the bulk of its energy in the state from dirty and aging coal and nuclear plants,】 officially asked the state’s regulators
にしても、【】で囲った中の部分は全て、Duke Energyがどういう会社かを説明したものだ。これだけ長い挿入句があると、常日頃かなり大量の英文を目にしている(それが仕事の)者でも、文章の流れをつい見失いそうになる。
また文章の分解で[16]とした個所は全てその前の"internet companies"を説明したものである。こういうややこしいものに遭遇したときには、文章の「枝葉を省く」といい。
つまり、
Duke Energy asked the state’s regulators /if it could sell clean power to large energy customers /that were willing to buy it ... this previously wasn’t allowed.
とやっていく。この「どこが枝葉か」を判別する作業は、少し慣れれば割と簡単にできるようになると思う。慣れるまでは、あまり細かいことは気にせずに読み飛ばしていいと思う。
1. デューク・エナジーの発電所の多くは、どんな方式の発電所ですか。
2. 割高なクリーンエネルギーを購入してもいいという大口顧客=インターネット関連企業の条件として挙げられている3つの点は何でしょうか。
オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。
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