シスコの認定資格「CCENT/CCNA」のポイントを学ぶシリーズ。今回は動的ルーティングについて学習します。
ネットワーク初心者がCCENT/CCNAを受験するために必要な知識を学ぶ本連載。第15回はルーティングの種類についての概要を、第16回は静的ルートについて詳しく説明しました。
今回は、シスコシステムズが発表しているCCENT試験内容の4.6「複数のルーティング手法とルーティング プロトコルの比較」の範囲から、動的ルーティング、特にディスタンスベクター型のルーティングプロトコルについて説明します。
前回説明しましたように、静的ルーティングはネットワークの管理者が手動で設定したルートを使用する方式です。ネットワークの切断時に別の経路に自動で切り替わることはなく、ルーターに掛かる負荷が低いのが特徴です。
動的ルーティングの特徴は、静的ルーティングの反対です。つまり、ネットワークの切断時には別の経路に自動で切り替わり、ルーターにはルーティングプロトコルを使用する負荷が掛かります。
静的ルートの設定は、第17回で説明したように「直接接続していない宛先ネットワーク」を設定対象としましたが、動的ルートを使用するにはルーティングプロトコルの設定が必要です。
動的ルートは、同じルーティングプロトコルを設定しているルーター同士で、知っているネットワークアドレスを共有します。この仕組みは「私はX.X.X.X/Yというネットワークを知っています」という情報を隣接ルーターへ送信(アドバタイズ:広告)すると実現します。
アドバタイズは自身のインターフェースから送信します。ルーティングプロトコルの設定は「アドバタイズに使用するルーターインターフェースの宣言」を行うことです。
具体的には後述のnetworkコマンドで宣言を行います。networkコマンドで指定したネットワーク内のIPアドレスを設定しているインターフェースがアドバタイズに使用されます。
アドバタイズに使用しないインターフェースが存在する場合もありますが、隣接ルーターと接続するインターフェースはアドバタイズに使用するようにルーティングプロトコルの設定を行います。
下記は、ディスタンスベクター型の代表である「RIP(Routing Information Protocol)」の設定です。グローバルコンフィグレーションモードで「router xxx」により使用するルーティングプロトコルを決定します。
IPv4で使用できるRIPには、「バージョン1」と「バージョン2」があります。初期設定はバージョン1です。
バージョンの違いは、ルーティングアップデート(経路情報の共有)で使用するアドレスにあります。バージョン1は「ブロードキャストアドレス」、バージョン2は「マルチキャストアドレス」を使用します。また、「VLSM(可変長サブネットマスク)環境」に対応しているのはバージョン2のみです
networkコマンドで指定しているアドレスが、アドバタイズで使用するインターフェースを指定します。上記の例ではネットワークアドレスですが、別のルーティングプロトコルであれば、ルーターインターフェースに設定したIPアドレスそのものもnetworkコマンドで指定できます。
アドバタイズに使用するインターフェースをnetworkコマンドで設定すると、30秒ごとに隣接ルーターへ経路情報をアドバタイズします。アドバタイズを受信したルーターはアドバタイズの内容と自身のルーティングテーブルを比較します。テーブルに存在しない経路情報はルーティングテーブルに追加します。その際、受信したホップ数(ルーターを経由した回数)に「+1」した後に、ルーティングテーブルへ追加します。
「パッシブインターフェース」は、アドバタイズに参加させず、ルーティングアップデートだけ受信させたいインターフェースに適用します。RIPでパッシブインターフェースを設定すると、ルーティングアップデートをアドバタイズしなくなりますが、逆に隣接ルーターからのアドバタイズはそのまま受信します。
Q1. RIPv2で使用しているルーティングアップデートの、アドバタイズ用のマルチキャストアドレスの値は?
A1. 「224.0.0.9」です。「224.0.0.1で全てのノード」「224.0.0.2は全てのルーター」など、第4オクテットの値によりプロトコルが区別されます。
Q2. パッシブインターフェースの設定コマンドは?
A2. 「Router(config-router)#passive-interface gigabitEthernet 0/1」です。
Q3. RIPは30秒周期でのアドバタイズだが、コンバージェンス(収束:ネットワークトポロジの把握が完了できている状態)までに時間を要すると言われている。通常のアップデートの他にルーティングループ(パケットの堂々巡り)を回避する仕組みはないか?
A3. 回避する方法として、下記の3つがあります。
・スプリットホライズン 隣接ルーターから受信したネットワークアドレスは、自身のルーティングアップデートとして同じインターフェースから送信しない(オウム返しはしない)
・ルートポイズニング 使用不可となった経路情報をメトリック16として隣接ルーターへアドバタイズする機能
・トリガードアップデート インターフェースのアップ/ダウンのタイミングでアドバタイズする
次回は、ひき続き4.6「複数のルーティング手法とルーティング プロトコルの比較」の範囲から「EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)」について説明します。
ドヴァ ICTソリューション統轄本部 デベロップメント&オペレーショングループ 2部
情報系専門学校の教員を12年勤めた後に同社へ入社、エンジニアへ転向。沖縄県と首都圏を中心にネットワーク構築業務に携わる。また、シスコ・ネットワーキングアカデミー認定インストラクタートレーナーとして、アカデミー参加校のインストラクターを指導している。炭水化物をこよなく愛する男。
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