佐賀出身の古瀬氏は「佐賀県はここ5年ほどで、面白くなってきた。住人も徐々に変わりつつある」と、変化を感じ取っている。10年前はまだ風通しの悪さやあか抜けなさが残り、異端児は敬遠されていた。しかしここ5年ぐらいは、変わり者がいても「変わり者でいい」と変化に寛容になってきたというのだ。
近年の変化として顕著なのが、情報発信による地方創生プロジェクト「サガプライズ!」だ。
スクウェア・エニックスとの「Romancing佐賀」では佐賀の伝統工芸品や食材を活用したコラボ商品を販売し、熱気球のイベント「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」では「ポケットモンスター」のニャース熱気球を登場させてポケモンファンにアピール。ピカチュウの巨大人文字にも挑戦した。
佐賀は、海外からも注目されている。特にタイでの人気は急上昇中だ。
積極的にロケを誘致したかいがあり、2014年タイ映画興業収入ランキング5位の「タイムライン」、テレビドラマ「STAY Saga〜わたしが恋した佐賀〜」など、タイで人気の映画やドラマに佐賀が登場している。観光客が聖地巡りに続々と訪れ、佐賀の神社にはタイ語で書かれた絵馬がたくさん飾られている。
なお、九州佐賀国際空港は早くからLCC(格安航空会社)が就航しており、海外と行き来しやすい。東京から見ると佐賀は遠いが、海外を視野に入れている人には、案外便利な場所かもしれない。なお、県内の移動に車は欠かせない。
佐賀は、何がきっかけで変化したのだろうか。佐賀県の首都圏企業誘致担当者は、「知事の影響が大きい」と指摘する。2015年から知事の職に就き現在二期目を務める山口祥義氏は、総務省出身で新しいことに積極的だそうだ。
なお、先述したサガプライズでは格闘ゲーム「ストリートファイターII」ともコラボしており、タイ出身のファイター「サガット」にちなんだ「佐賀ット商店」を開店した。オープニングイベントでは山口知事がリュウに扮(ふん)して登場した。
ITエンジニアのUIターン先として、就職事情はどうだろうか。
佐賀市には前述のinahoやアールテクニカの他にも、日本マイクロソフトが佐賀大学などと共同運営する「マイクロソフトAI&イノベーションセンター佐賀」や、AIソリューションを手掛ける「LIGHTz」(ライツ)がある。
LIGHTzは、AIを技術継承に役立てる企業だ。「匠(たくみ)」と呼ばれる職人、「レジェンド」と呼ばれる伝説的なスポーツ選手が、どう視線を動かし、どう手足を動かしているのかをAIで分析し、次世代につなげようとしている。
しかし全体では、ソフトウェア開発などのエンジニア求人はまだ多くはない。ただし佐賀県が先進的な企業誘致に積極的なので、エンジニアが活躍できる場は今後増えていきそうだ。菱木氏によると、佐賀県に進出する企業への助成金は、近隣県に比べると手厚い。自治体によっては家賃補助を半分が県、残り半分を市が負担することもあるそうだ。
古瀬氏と菱木氏に、今後の展望を伺った。
古瀬氏は「シーンがないと人が集まらないし、育たない。今の佐賀にはシーンができつつあり、仕事の存在が見えるようになってきた。このまま進むことを期待している」と話す。
菱木氏は「地域として強くなるには教育が大事。地元の小学生にロボット見学をさせたところ、大変好評だったので今後も続けたい。テクノロジーが分かる人材を育てることは必要だし、地域へのお返しにもなると思う」と述べた。
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