クラウドネイティブ時代のデータベースに関する技術解説や話題を紹介する新連載を始めます。初回は、Oracle ACEとして長年データベースにまつわる技術検証や情報発信をしてきた篠田典良氏との対談をお届けします。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
2021年4月から4回にわたって「クラウドネイティブ時代のデータベース」と題した連載を掲載しました。現在トレンドとなり注目されているクラウドネイティブなアプリケーションや開発スタイルにおいて、現在のデータベース(DB)はいかにそれを支え得るかという話を解説しました。パブリッククラウドで利用可能な利用者の多いマネージドサービスの紹介にとどまらず、マルチクラウドやマルチリージョン、Kubernetesとの連携などにも踏み込み、それぞれの回で大きな反響をいただきました。
そして今回から新たにクラウドネイティブなDBを含め、DBに関するさまざまな考え方や最新のトレンドを紹介する連載を始めます。初回となる今回は「Oracle」や「PostgreSQL」などのDBに長年関わり、コミュニティーでも積極的に情報発信などの活動をされている日本ヒューレット・パッカードの篠田典良氏との対談をお送りします。
それぞれの経験やDB技術に関する思い、クラウドネイティブとデータベースが今後どのように進展していくかなど、ざっくばらんにお話できました。その模様をお届けします。
小林 まずは篠田さんのキャリアを聞かせてください。昔からDBを中心にお仕事をされてきたんですか。
篠田 私は1990年ごろからエンジニアとして働いていて、Oracleや「Microsoft SQL Server」を仕事で触るようになり、2000年頃からOracle Databaseの書籍執筆をはじめ、2009年にOracle ACEとして認定された以降も技術検証や情報発信などDBに関する活動をしています。
小林 私より10年ほど先輩ですね。当時、プラットフォームはUNIXがメインでしたか?
篠田 メインフレームやオフコンなどがUNIXに切り替わるころで、「Windows NT」なども利用していました。当時の会社はハードウェアとOSがメインでミドル領域をやる人がおらず、そこからDBの領域を専門として活動するようになっていきました。
小林 私もUNIXやWindowsサーバでOracleなどの各種DBを構築してきたので、時代としては同じころです。篠田さんのキャリアはリレーショナルデータベース(RDB)が長いということですね。
篠田 はい、OracleやSQL Server、PostgreSQLといったRDBです。他には「Vertica」などもやってきました。
小林 過去にさまざまなDBに触れてきたと思いますが、印象に残っているものは何でしょうか。
篠田 「TimesTen(※)」は面白そうでした。本格的に取り組みたいと思っていたのですが、残念ながら機会がありませんでした。TimesTenはOracleに買収されてからが有名ですが、もともとはHPのラボからスピンアウトしたものだったんですよ。
※TimesTenはインメモリのRDBMS(リレーショナルデータベースマネジメントシステム)で、超高速なレスポンスを求める金融や情報通信のプロジェクトなどで多く使われてきた。他のインメモリキャッシュのソフトウェアと異なり、SQLインタフェースを備え、アプリケーションに手を入れる必要がなかった。2005年にOracleに買収され、現在は「Oracle Database In-Memory」として利用できる。
小林 そうだったんですね。私もTimesTenは非常に興味を持ったDBの一つでした。個人的には「Teradata」も前から気になっています。シェアードナッシング型のアーキテクチャで高速なDWH(データウェアハウス)向けDBという設計思想は最新のDBMSにもつながっています。
篠田 はい。そういった各種DBでの経験は最新技術のキャッチアップにも生かされていると感じますね。
小林 篠田さんはOracleやPostgreSQLのコミュニティーでも情報を発信されています。そうした活動はいつごろからされていますか。
篠田 PostgreSQLに個人的な興味を持ったのはバージョン8のころでした。コミュニティーなどで発信するようになったのはバージョン9.5のころからです。
小林 篠田さんは『篠田の虎の巻』と題した技術文書を(最新は「PostgreSQL 14 (GA) 新機能検証結果」)を継続的に発信されていますね。これはどのようないきさつで始められたのですか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.