Gartnerのハイプサイクルに見るデジタルガバメントサービスの今後の動向(後編)Gartner Insights Pickup(287)

デジタルガバメント技術およびプラクティスは、市民サービスの提供方法に変革をもたらし続けている。後編では、開発のための洞察や支援技術の普及、その他の技術について紹介する。

» 2023年01月20日 05時00分 公開
[Lori Perri, Gartner]

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

>>〔前編〕はこちら

有権者中心のデジタルサービスを開発するための洞察を得る

 有権者中心のデジタルサービスを開発するためのエンゲージメントをサポートするイノベーションプロファイルもある。例えば、インクルーシブデザインやカスタマージャーニーアナリティクス、マルチ体験、ビジネスエコシステムモデリングなどだ。

  • 機械学習(ML:Machine Learning)
     統計モデルを活用してデータから知識やパターンを抽出し、ビジネス上の問題を解決するAI分野。
  • セマンティック検索
     自然言語処理技術を用いて、ユーザーにとっての検索の価値を向上させる。これは、個々の単語だけでなく、(「意味」の代わりに)単語間の関係を処理することによって行われる。
  • インクルーシブデザイン
     人間の多様性と能力を最大限に活用して、最も多くの人のニーズに応えるデジタル製品を構想し、開発するためのデザイン手法。
  • カスタマージャーニーアナリティクス(CJA)
     顧客や見込み客がさまざまなチャネルを通じて行う組織とのやりとりを、追跡、分析するプロセス。
  • マルチエクスペリエンス(MX:Multiexperience)
     シームレスで一貫したデジタルユーザージャーニーをサポートするために、さまざまなデジタルタッチポイントで複数方式を組み合わせて行われるインタラクションを指す。
  • ビジネスエコシステムモデリング
     参加者のためにサステナブルな価値を創造し、交換する目的で相互にやりとりする人、組織、モノの動的なネットワーク。ビジネスアーキテクチャの範囲をビジネスエコシステムに拡張することに主眼がある。
(出所:Gartner)

意思決定支援技術の円滑な受け入れと普及に向けて

 デジタルガバメントサービスの設計と提供は、透明性と説明責任に対する社会の期待によって導かれる。責任あるAI、デジタル倫理、プライバシーバイデザインなどのイノベーションプロファイルは、政府のCIO(最高情報責任者)が、政府における意思決定を支援するために高度な分析とAIを利用する中で、反発を受けるリスクを予測し、軽減するのに役立つ。

 重要な技術として、以下が挙げられる。

  • 責任あるAI
     AIを活用する際に、ビジネス上および倫理上適切な選択をする側面を指す包括的な用語。建設的で説明可能なAIの開発と運用を保証する組織の責任とプラクティスを包含している。
  • デジタル倫理
     人、組織、モノの間における電子的な相互作用のための価値体系と道徳規範で構成されている。
  • プライバシーバイデザイン(PbD:Privacy by Design)
     現代のプライバシー規制要件の多くを支える一連のプライバシー原則。技術に加えて手順、プロセスにプライバシー原則を頻繁に、そして早期に組み込むことで、プライバシー文化を積極的に創造することを目的としている。

他のデジタルガバメント技術

  • ゲーミフィケーション
     ゲームの仕組みとエクスペリエンスデザインを利用して、デジタル技術によって人々に目標達成への取り組みを促し、動機付ける。
  • コンピュータビジョン
     実世界の画像や映像を取り込み、処理し、分析するプロセスおよび一連の技術。機械が物理的世界から、文脈に沿った意味のある情報を抽出できるようにする。
  • ニューラル機械翻訳(NMT:Neural Machine Translation)
     ある言語から別の言語へのテキストの機械翻訳を自動化する、ディープニューラルネットワークのアプリケーション。
  • APIマーケットプレース
     APIプロバイダーがAPIを共有するためのプラットフォーム。基本的なAPIカタログから、単一のAPIプロバイダーによるAPI開発者向けポータル、多くのプロバイダーのAPIを扱う商用マーケットプレースまで、さまざまなものがある。
  • インテリジェントドキュメント処理(IDP:Intelligent Document Processing)ソリューション
     データを抽出し、大量の反復的なドキュメント処理タスクの自動化や分析、洞察を支援する。
  • パーソニフィケーション
     マーケティング担当者が個人データの収集や送信をすることなく、個々人が特定の顧客セグメントに属するとの推測に基づいて、個々人に応じてデジタル体験を提供できるようにする。
  • 同意とプリファレンス管理プラットフォーム
     個人データの取り扱い方法に関するエンドユーザーの選択を集約し管理する。
  • 没入型会議
     没入型技術を使用して、対面での会議や社交の場と同様の方法で会議や集会を開催する。
  • マシンカスタマー(顧客としてのマシン)
     支払いと引き換えに商品やサービスを入手する、人間以外の経済行為者。人間の顧客や組織に代わって行動する。

要約

  • Gartnerの「Hype Cycle for Digital Government Services, 2022」(デジタルガバメントサービスのハイプサイクル:2022年)は、公共部門の機関が個人、組織、社会の利益に貢献できる技術を評価し、優先順位を付けて導入するのに役立つ
  • 一部のイノベーションは、2年以内に市民サービスに広く導入される見通しだ。一方、広く使われるまでに10年以上かかるかもしれないイノベーションもある
  • CIOはハイプサイクルを利用して、投資計画を立てたり、市民サービスにおける「次の展開」を予測したりできる。その一環として、ディスラプション(創造的破壊)をもたらす可能性のある技術をいち早く特定することも可能だ

出典:What’s New in Digital Government From the 2022 Gartner Hype Cycle(Smarter With Gartner)

筆者 Lori Perri

Content Marketing Manager


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